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保育・教育 2024.9.18 配信

2025年に利用児童のピーク到来で保育所過剰問題が深刻化? 大再編時代到来か

2025年に利用児童のピーク到来で保育所過剰問題が深刻化? 大再編時代到来か

待機児童問題は解消されつつあるが…


政府は待機児童が社会問題化したことを背景に、保育所設置に係る主体制限の撤廃、定員規模要件の引下げなど、大胆な規制緩和を実施しました。これにより、社会福祉法人に限られていた設置要件が、株式会社やNPOなどにも拡大。保育の受け皿となる施設が増加しました。

 

待機児童の数は減少し、深刻化していた状況は打開されました。しかし、次なる問題点が表出しようとしています。それが保育所の過剰問題。中小の事業者を中心に、経営が悪化する懸念があるのです。

保育所は大再編時代を迎える可能性があります。

受け皿の増加で女性の就業率は8割まで上昇


※こども家庭庁「令和5年4月の待機児童数調査のポイント」より

 

2023年度の待機児童数は2,680人。5年連続で最小となり、86.7%の市区町村で待機児童なしとなりました。待機児童の数が50人以上の自治体は、6自治体まで減少しています。

各自治体に待機児童が増えた要因についてアンケート調査を行った結果、「受け皿の拡大」が63.7%でトップ。政府主導で保育所の数を増やす取り組みを行った成果が出ました。

 

2023年度の保育の受け皿量は322.8万人で、前年度から0.1万人のプラス。2024年度は5.0万人増加する見込みです。

現在のところ受け皿の数は増加を続けており、相対的に待機児童の数が減っていると見て間違いないでしょう。

 

待機児童の数が減ったことにより、女性の就業率は8割近くまで達しています。安心して子育てができる環境が作られ、女性の社会進出が進んでいることが見て取れます。家族と企業にとって喜ばしいことだと言えるでしょう。

コロナ禍で加速した少子化問題が過剰感に拍車をかける


その一方で、充足感が進み過ぎている印象もあります。。

2022年度は548の自治体で、合計2万6,417人分の受け皿が消失。2021年度も2万人近く減少していました。2023年度は大阪市、松戸市、川口市、世田谷区などで、受け皿(実績)が見込みを下回っています。

つまり、受け皿の総量は増加しているものの、個別の自治体に目を向けると、すでに受け皿数を縮小せざるをえないエリアもあるのです。

 

保育所の過剰問題は、以前より指摘されていました。厚生労働省は2021年5月に保育所の利用児童が、2025年にピークを迎えるだろうとの試算を公表していたのです。その際、保育の提供のあり方を検討することが必要との認識を示していました。

 

新型コロナウイルス感染拡大で少子化が加速。2023年度の出生数は72万7,277人で、前年より4万3,482人減少しました。8年連続で過去最少を更新しています。当初の予測よりも早いスピードで少子化が進み、保育所の過剰感は高まっているのです。

保育園は経営力が問われる時代に


2023年からは「保育所の空き定員等を活用した未就園児の定期的な預かりモデル事業」を実施。待機児童対策で増設したプレハブの保育所などを活用し、育児に負担感や閉塞感を感じている保護者を対象に選任保育士が担当するなど、新たな方向性を模索しています。

この取り組みはいわば、量の拡大を目指していた保育所が、質へと転換することを示すもの。保育のあり方そのものがターニングポイントを迎えたということでもあります。

 

モデル事業はやや特殊なものですが、一般的な保育所でも多様化する保育ニーズにきめ細やかに対応する必要に迫られています。保育所の過剰感が進むと、子供を預ける親の選択肢が広がるため、施設の運営方針と親の子育ての方向性とが合致しなければ、預ける決断をしないことも十分考えられるからです。

すなわち、保育所は競争力が試される時代となりました。

公立の保育所の運営合理化が進む


地域によっては、公立の保育所の統合が進んでいます。

 

北海道上士幌町は、2015年4月に公立保育所を統合。上士幌保育所に幼稚園と子育て支援機能 (子育て支援センター)を加えた幼保連携型認定こども園を開設。開園以降、認定こども園の利用者数は年々増加しています。

2016年まで農村部に4か所の公立保育所がありましたが、通所児童の少ない小規模施設の統合と人材配置の効率性、同じ教育を受けさせる観点で統合しました。

運営の効率化を進めています。

 

兵庫県丹波市では、市の発足当時25小学校区ごとに全部で44 か所(公立幼稚園20か所と公立保育所5か所、民間保育所19か所)ありましたが、校区によっては幼稚園または保育所いずれかしかない地域もありました。

そこで認定こども園の設置を推進し、その運営は民間で実施することとしました。2019年4月には、すべての幼稚園と保育所は認定こども園(13園)へ統合され、市全域で幼保連携型認定こども園での一体的な幼児教育・保育を提供できる環境が整っています。

人的資源の相互流入で人材不足解消も


民間の保育園も経営合理化が進んでいます。

 

福祉施設を運営するQLSホールディングスは、2024年8月にVISIONARYが運営する保育施設5施設のうち、3施設に関連する事業を取得しました。

QLSホールディングスは、東京都、神奈川県、長野県、愛知県、大阪府、兵庫県、奈良県、沖縄県で事業を展開しており、2025年4月には埼玉県にも保育園を開設しています。

展開するエリアを拡大して人的資源の相互流入や運営ノウハウの提供を行い、優位性を獲得する狙いがあります。

 

2024年7月には社会福祉法人すくすくどろんこの会が、グローバルキッズCOMPANYの認可保育所3施設を譲受しています。グローバルキッズCOMPANYは、中長期的に堅調な収益が見込まれるエリアで、保育所に経営資源を集中。経営の効率化を図る目的で譲渡を決定しました。

 

保育関連施設は、エリアの拡大や人材獲得、運営ノウハウの獲得、保育事業への新規参入など、様々な目的で譲受を希望する事業者が多い領域です。

 

保育園の経営に行き詰まりを感じている、入園者や保育士・スタッフの獲得に苦戦している、コロナ禍で資金繰りが悪化している、融資の返済目処が立たないなど、悩みを抱えていたらM&Aを検討してください。

 

M&Aはメインバンクや税理士に相談するケースも多いですが、仲介会社であれば納得できる最適な提案ができることがあります。

 

こちらのページで保育所を実際に譲渡した元経営者の体験談を掲載しています。ぜひご一読ください。

M&Aを成功へと導くのは親身に相談できるコンサルタント

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。