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不動産 2023.11.29 配信

【住宅・ハウスメーカー】補助金効果でZEHが普及、脱炭素化が進む住宅業界

【住宅・ハウスメーカー】補助金効果でZEHが普及、脱炭素化が進む住宅業界

生き残りと脱炭素化のカギを握るZEH


矢野経済研究所は、2030年の新設住宅着工戸数が、2022年度比13.5%減の74万戸になるとの予想を出しました(「2030年の住宅市場に関する調査を実施」)。人口減少によって中長期的には需要が減少する見込みです。

そうなると、ハウスメーカーや建材・設備事業者の淘汰が進むものと考えられますが、その際にポイントとなるのがZEH(ゼッチ)住宅に対応したサービスを提供できるかどうか。ZEHはネット・ゼロ・エネルギーハウスのことで、住宅で使うエネルギーの年間消費量をゼロにする住宅のことです。

 

ZEHやハウスメーカーの脱炭素に向けた取り組みについて紹介します。

ZEHとは?


日本は2050年脱炭素化を目標に掲げています。その中で、ZEH住宅の普及は何としてでも進めたいものの一つでした。政府は2014年の第4次エネルギー基本計画で、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指すとしていました。

 

ZEHは住宅で使う一次エネルギー(発電などに必要とされる化石燃料)の年間消費量をゼロにするというものですが、大きく分けて2つの要素で成り立っています。省エネルギーであることと、エネルギーを作り出す機能を持っていることです。

 

ZEH住宅は優れた高断熱性を持っています。高断熱の住宅は夏に涼しく、冬は暖かいという特徴があります。これによって、そこに住む人はエアコンや暖房器具などの利用を控えます。省エネにつながるのです。

また、エコキュートなどの省エネ機器の導入も求められます。エコキュートはヒートポンプ技術を利用して空気の熱でお湯を沸かすものです。

 

エネルギーを作り出す太陽光パネルの設置も必要です。

 

ZEHには複数の種類が設けられており、最上位モデルであるZEH+は25%以上の一次エネルギー消費量を削減し、太陽光発電などの再生可能エネルギーによる発電設備を導入。100%以上の一次エネルギー消費量を削減していること、電気自動車への充電設備を設けているなど、高い水準が求められます。

ハウスメーカーは要件をクリアする技術力を有していなければなりません。

ZEH補助金


令和5年度のZEH関連の補助事業についてより

 

ZEHの普及は補助金制度と切っても切れない関係にあります。

2023年の補助事業は、国土交通省・環境省・経済産業省の3省が連携して実施しています。環境省はZEHやZEH+の普及を推進する予算として100億円、経済産業省も68億円、国土交通省はZEH施工経験が乏しい事業者に対する優遇措置として279億円の予算を計上しました。

 

消費者がZEH住宅で得られる補助金は、性能要件によって異なるものの、ZEH区分の「こどもエコすまい支援事業」であれば1戸当たり100万円、「地域型住宅グリーン化事業」は140万円が補助されます。

 

新築住宅で太陽光パネルを設置すると、面積にもよりますが平均して100~150万円程度かかります。補助金を活用することによってその費用負担を抑えることが可能です。

消費者にとっては補助金の活用でZEH住宅にしようという機運は高まります。

ZEHはどれくらい進んだのか


住宅メーカーはZEHの普及率を公開しています。

普及率100%に達しているのが一条工務店。2025年に90%を目標に設定していましたが、早々と達成しました。一条工務店は「家は、性能。」というテーマを掲げ、機能性にこだわった家づくりを行っていました。

高断熱であることや床暖房に優れているなど、消費者の満足度を追求していた企業の姿勢と、脱炭素という世界的な流れがちょうど合致しました。

 

一条工務店以外で、北海道を除く都道府県で普及率の目標をクリアしたのが、サンヨーホームズ、積水ハウス、セキスイハイムでした。

住友林業やミサワホームは2桁台で普及率を伸ばしており、急速にZEH化を進めている様子がわかります。

業界トップの大和ハウスは再エネ化100%を達成


5兆円近い売上高を誇り、住宅メーカーでトップを走る大和ハウスは、ZEHの普及以外にも脱炭素化に取り組む先進的な企業の一つです。

特に優れているのは、その開示姿勢。カーボンニュートラル関連指標を決算時に公表し、その取り組みと進捗について詳細に説明しています。

 

■大和ハウスカーボンニュートラルに関する主なKPI

決算説明資料より

 

大和ハウスは2022年度に単体での再エネ利用率100%を達成しています。2021年度は54%でした。

同社は水力発電所の開発など、再生可能エネルギー設備の増強に努めていました。また、2023年4月には北九州市にある火力発電所を買収。バイオマス発電所に転換する計画を発表しました。自社での開発やM&Aによる再エネ化を進めてきたのです。

 

2020年4月から全国の事業所や施工現場などに再生エネルギー由来の電力を供給。大和ハウス単体で再生可能エネルギー100%達成という偉業を成し遂げました。

2023年度は海外を含むグループ全体での再エネ100%達成を見込んでいます。

 

ZEHの普及率は86%。2030年には100%を見込んでいます。賃貸住宅や分譲マンションのZEH化も進めています。賃貸住宅の普及率は37.5%と低く、浸透しづらい領域でいかにZEH化を進めるかが業界リーダーの役割だとも言えるでしょう。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。