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不動産 2023.12.6 配信

国内の不動産売買事情はどう変化した?戸建てとマンションの着工件数の推移

国内の不動産売買事情はどう変化した?戸建てとマンションの着工件数の推移

3メガバンクの固定住宅ローン金利が上昇


世界的なインフレでアメリカやヨーロッパなどの先進国が利上げを進めました。政策金利の引き上げは、ローンの金利の上昇と直結しています。

日銀は金融引き締めには動いていません。しかし、2023年10月31日に金融緩和の柱の一つである、長期金利をゼロ%程度に抑制する大規模金融緩和の枠組みを、柔軟に運用する見直し策を発表しました。

これが異次元緩和の出口を探る動きであることは間違いなく、今後は短期金利のマイナス金利をいつやめるのかという点に注目が集まります。これは金融引き締めと同等のものだからです。

 

日本は10年あまり、金利がほとんどない状態で経済活動を行ってきました。しかし、11月から3メガバンクうの11月から適用される10年固定住宅ローン金利が上昇するなど、これまでの常識を覆す動きが見えてきました。

日本の内需を支える産業の一つ、住宅にも変化が訪れる可能性があります。

 

現在の住宅市場について解説します。

ウッドショックで持家に買い控えが起こる


※国土交通省「住宅経済関連データ」より

 

2022年の新設住宅着工戸数は前年比0.4%増の85万9,000戸。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、工事が滞った2020年以降、2年連続で増加しました。三大都市圏別出みると、首都圏が前年比2.8%増の30万1,000戸、中部は同1.9%減の9万9,000戸、近畿が同1.4%増の13万7,000戸となりました。

 

2022年に変化が激しかったのが住宅の形態。持家の着工件数の減少です。

※国土交通省「住宅経済関連データ」より

 

2022年の持家の着工件数は、前年比11.3%減の25万3,000件でした。2021年はコロナ禍からの反動増で1割程度増加していましたが、わずか1年で減少へと転じました。

減少した背景には、資材価格が高騰して建築費が上昇したことがあると考えられます。下のグラフ③の住宅建設費用に注目してください。2021年1月をゼロとした場合、木造住宅の建設費用は2022年11月に15%程度上がっています。

2021年4月以降、アメリカの旺盛な住宅需要を要因としたウッドショックが起こり、木材価格が高騰しました。それに加えてエネルギー高が起こり、価格上昇に拍車をかけたのです。

手頃な価格で立地条件も良好な建売住宅が人気に


※国土交通省「住宅経済関連データ」より

 

コロナ禍以降、好調に着工件数を伸ばしているのが、分譲戸建。いわゆる建売住宅です。

2022年は前年比3.5%増の14万5,000戸でした。2年連続で増加しています。

注文住宅は、家主の意向に沿って設計士が図面を書き、場合によっては丸型の壁を取り入れるなど、自由度の高い家を作り上げることができます。

そのため、人件費がかかり、工期も長くなる傾向にあります。その結果、価格は割高になります。

 

建売住宅は仕様がほぼ決まっており、複数の住宅を集中的に仕上げるため、短期間で工事を終えることができます。設計士の負担も減らすことができます。

ただし、建売住宅に使われている建材は、基本的に注文住宅と変わりません。建売住宅は駅近物件が多いなど、立地条件に優れたものが多数あります。利便性やコストパフォーマンスを重視する買い手の場合、建売住宅の選好度が上がります。

 

資材高で建築費が上昇しているという情報を目にする機会が増えれば、建売を積極的に選ぶ理由が増えます。今後、住宅ローン金利が上昇することになれば、建売住宅の需要は更に増す可能性もあります。

都市部の高額マンションは活況


※国土交通省「住宅経済関連データ」より

 

マンションも増加しています。2022年は10万8,000戸で、前年比6.8%増加しています。都市部中心のマンションの需要は旺盛に推移しています。

これは複数の要因がありますが、金融緩和継続で住宅ローン金利が低く抑えられて都内の好立地にある高額なマンションでも手を出しやすいことや、共働きの夫婦がペアローンを組むことが一般的になったために双方の勤務地に通いやすい好立地物件が選択しやすいこと、価格が下がりにくいために資産価値を勘案して都市部のマンションを選ぶことなどが要因として挙げられます。

 

マンションの価格は戸建住宅とは比較にならないほど上昇しています。

※全国住宅建物取引業協会連合会「不動産市場動向データ集」より

 

2010年の平均を100とした場合、190まで上昇しています。13年ほどでおよそ1.9倍になったことを示しています。

東京23区のマンションの平均価格は、2013年が5,853万円でした。2022年は8,236万円です。23区で4割以上上昇しています。

 

価格が上昇しているのは、マンション需要が底堅く推移していることや、資材価格が高騰していること、海外投資家が転売目的で高値で仕入れていることなどが背景にあると考えられています。

値崩れしないことが資産価値を担保するという安心感を生み、需要を加速させている側面があります。

 

住宅全般に言えることですが、住宅ローン金利の上昇が今後の不動産価格を左右する一番の要因になるでしょう。日銀が金利上昇に動けば、住宅ローン金利も上昇して基本的には価格が下がります。

今や戸建住宅に欠かせないものとなった太陽光パネルの市場は?


10kW未満の住宅用太陽光の導入件数は、2017年から2020年までは年平均14.3万件で推移しています。2012年7月から2013年の年平均27.2万件と比較すると、半分程度まで縮小しています。

少子高齢化で新設住宅は緩やかに減少すると見られており、このままだと太陽光の導入件数も下降する可能性があります。

 

※太陽光発電協会「太陽光発電の現状と自立化・主力化に向けた課題」より

 

太陽光発電による電力の買取価格が高い時期に、既存の住宅への太陽光発電システムの導入が進みました。その需要が一服し、現在は新築への導入が進んでいます。

現在、政府は環境配慮型の住宅形態であるZEH化を進めており、太陽光発電併設型の新築住宅の割合は増加すると見られています。

既存住宅への設置は、足場を組む必要があるなど、導入コストが最大のハードルになっています。今後は補助金の枠を拡大して既存住宅が太陽光発電を設置しやすい環境づくりを行うなど、官と民による共同の取り組みが欠かせなくなるでしょう。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。