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旅行・宿泊施設 2023.7.26 配信

コロナ禍の難局を乗り越えて宿泊業界も活況!インバウンドの盛り上がりに期待

コロナ禍の難局を乗り越えて宿泊業界も活況!インバウンドの盛り上がりに期待

外国人観光客は2019年比で7割程度まで回復


日本政府観光局によると、2023年4月の訪日外客数は195万人で、2019年同月比66.6%となりました。東アジアで航空便の増便、欧米エリアでの祝祭日による旅行需要の盛り上がりにより、訪日外客数は堅調な回復を見せています。

 

外国人旅行(日本の旅行会社によるインバウンド向け旅行)の2023年4月の取扱高は2,100万円。2019年同月は2,500万円でした。8割以上まで戻しています。

 

日本は空前の円安となり、もともとのデフレも手伝って外国人から見ると魅力的な国の一つとなりました。

新宿にはインバウンド観光ビル「東急歌舞伎町タワー」が誕生し、受け入れ態勢も着実に整っています。

ホテル業界にとって顧客開拓をしやすい外国人旅行者


※観光庁「訪日外国人旅行者数・出国日本人数」より

 

日本政府は2003年に観光立国を掲げ、訪日外国人客数の拡大を強化しました。このとき、2020年までに2,000万人、2030年までに3,000万人にするという目標を掲げます。

当時、訪日外国人客数は500万人規模で、到底実現不可能な数字のように見えました。

 

しかし、2013年に第2次安倍政権において、アベノミクスによる大規模な金融緩和を実施すると、急速に円安が進行。2013年には1,000万人を突破して訪日外国人客数は急増します。それを受けて、日本政府は目標値を2020年に4,000万人、2030年に6,000万人まで引き上げました。

当初の2030年までに3,000万人という目標は、2018年には達成してしまったのです。

 

インバウンド需要の獲得に沸いていたのが、ホテル業界。星野リゾートは外国人旅行者向けのホテル「OMO」、藤田観光は「HOTEL TAVINOS」を開発しました。

 

従来、ビジネスホテルやシティホテルは「立地がすべて」とも言われており、いかにアクセスしやすい立地に開業するかがポイントでした。郊外や駅から離れた場所に出店して集客するのは、強力なブランドの構築や、特別なサービスなどで顧客の目を惹く必要がありました。

 

しかし、インバウンド需要の獲得を目的とした場合、観光バスでその場所にアクセスできることや、競合ホテルと比べて若干宿泊費を抑えるだけで集客ができるなど、ホテル企業にとっては価値の高い顧客でした。

 

しかし、コロナ禍でインバウンド需要は消失してしまったのです。

OMOの稼働も好調に推移


※観光庁「宿泊旅行統計調査」より

 

コロナ禍においては、外国人観光客の宿泊数は2019年比で数パーセントまで落ち込みました。ほぼ、ゼロの状態が続いていたといっても過言ではありません。

しかし、2022年10月ごろからは回復し、2023年1月には7割程度まで戻っています。宿泊数は訪日外国人客数の増加ペースよりも早く回復しています。

 

星野リゾートが運営する物件の中でも、OMOは稼働率において大幅な遅れをとっていました。リゾナーレ2物件は2021年の段階で、2019年比RevPAR(販売可能な客室1室あたりの収益値)を上回っています。

OMO旭川は50%を下回る月が続いていましたが、2022年末ごろからは2019年に水準を上回るようになっています。

※星野リゾートリート投資法人「決算説明資料」より

 

星野リゾートは2023年4月に「ホテル日航高知旭ロイヤル」を「OMO7高知」にリブランドし、2024年春にリニューアルオープンする予定です。

 

また、浅草エリアのホテル「the b 浅草」を、星野リゾートリート投資法人が56億3,000万円で取得しました。このホテルは国際通り沿いの好立地にあり、浅草寺や雷門に近く、同社はアフターコロナにおける観光需要回復による高稼働に期待できるとしています。

「the b 浅草」はイシン・ホテルズ・グループが運営していましたが、コロナ禍の影響で閉館に追い込まれていました。

 

インバウンド需要の消失でホテルの経営が立ち行かなくなり、閉館や廃業に追い込まれた物件を、資本力のある運営会社やアセットマネジメントが取得。観光需要の回復とともに再生させる、という一連の流れは今後加速する可能性があります。

西武ホールディングスが主力ホテルを売却


コロナ禍でホテル業界は急速に再編が進みました。

 

西武ホールディングスは主力の「ザ・プリンスパークタワー東京」などを含むホテルやゴルフ場26物件をシンガポール系投資ファンドGICに売却しました。売却益は540億円にものぼります。

西武ホールディングスが所有していた「苗場プリンスホテル」などは、自動外貨両替機を設置するなど、インバウンド需要の獲得を強化していました。

 

2022年にはベインキャピタルが所有していた大江戸温泉物語の全株を、ローン・スターに売却しました。大江戸温泉物語はスパの他、地方の観光ホテルを多数所有・運営していることで知られています。

大江戸温泉物語のホテルは、カニ食べ放題などの目玉料理をフックとして、外国人観光客の取り込みに成功していました。コロナ禍でベインキャピタルは大幅な軌道修正を迫られました。ローン・スターはホテル再生のノウハウを持っており、大江戸温泉物語の更なる拡大にも期待できます。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。