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その他 2023.5.31 配信

インボイス制度とは?2023年10月から何が変わるのか

インボイス制度とは?2023年10月から何が変わるのか

仕事の発注者・受注者双方が他人事ではないインボイス制度


2023年10月からインボイス制度が始まります。

インボイス制度の導入により、免税事業者だった個人事業主やフリーランスが消費税の負担をする・しないの選択ができるようになります。そのため、フリーランスや個人事業主が制度の主体者だと見られています。実際、事務所に所属しないフリーの声優やアニメーターなどから猛烈な反発が起こりました。

 

しかし、この制度で大変な思いをするのは、仕事を発注する側も同じ。なぜなら、適格請求書(インボイス)を発行する事業者なのかどうかを判別しなければならないためです。

 

この記事では、インボイス制度の内容を仕事の受注者・発注者の2つの視点から解説します。

免税事業者と課税事業者の違いとは?


従来、個人事業主やフリーランスは、売上が1,000万円に満たない人の場合、消費税が免除されていました。例えば、正味の業務委託報酬額が年間900万円だった場合、消費税10%でプラス90万円が請求額となります。トータル売上は990万円です。

90万円は消費税という名目ではあるものの、事業所得と同等の扱いになっていたのです。

 

しかし、売上が1,000万円に満たない個人事業主が課税事業者を選択した場合、2023年10月の売上分から消費税を納めなければなりません。

 

先ほどの事業者のように通年で90万円の消費税を預かった場合、そこから仕入れにかかった消費税を控除するか、業種ごとに定められた簡易課税でみなし仕入率を乗じて算出した消費税を納める必要があります。

 

免税事業者になることを選択した場合、仕事を発注する側は消費税の控除ができないために損をすることとなります。免税事業者は消費税の支払いを拒否されたり、仕事の継続を打ち切られる(課税事業者に仕事をとられる)などのリスクが生じます。

ただし、免税事業者同士の受発注であれば、この問題は起こりません。

課税事業者になるためには?


制度スタートと同時に課税事業者の登録を受けるためには、2023年9月30日までに管轄の税務署長に登録申請書を送る必要があります。

登録を終えると、番号が発行されます。それが適格簡易請求書が発行できる証明になります。

 

課税事業者は2023年10月分の請求から適格簡易請求書を発行します。

必要な記載事項は以下の通りです。

 

① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 取引年月日
③ 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率

 

ポイントは登録番号を記載することと、消費税10%、軽減税率を適用した8%を適用した商品やサービスがどれで、いくらかかっているのかを明記するところです。

これにより、インボイスが導入されるきっかけとなった税率10%、8%のどちらなのかがわからないという不透明さを払拭できるようになりました。

 

なお、新しく課税事業者となった個人事業主に対しては、2026年10月までは経過措置が設けられており、仕入れにつき80%控除可能、2029年10月までは50%控除可能という特例があります。

業務委託が多い会社は発注者の見直しが必要に?


ここまでは個人事業主側の視点で説明しました。次に仕事を発注する側からやるべきことや注意点を説明します。

 

インボイス制度が導入されると、請求書は適格請求書とそれ以外で発行されることになります。まずは金額にどれくらいのインパクトがあるのかを見てみましょう。

会社Aがホームページの制作を税込み550万円で受注したとします。Aは課税事業者である個人事業主Bに税込み330万円で発注しました。この場合、Aが支払うべき消費税は20万円です。

しかし、Bが免税事業者だった場合、Aが支払うべき消費税は50万円になります。控除ができないためです。

Aが課税事業者に発注したくなる理由はここにあります。

 

個人事業主やフリーランスを多く抱えたり、業務委託として外部に仕事を発注している会社は、制度が始まる前に課税事業者なのか免税事業者なのかを調査する必要があります。その上で、発注先を見直すか、発注額を税抜き価格にするなどの対策が必要です。

経理処理の負担が増す


発注者側は、経理処理の負担が増します。処理すべき項目として、登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額などの入力が必要になるためです。

 

また、税額計算方法も一部見直されます。

 

【売上税額】
・現行の税額の計算方法(割戻し計算)は継続
・消費税額の合計額に100分の78を掛けて計算した金額を売上税額とすることが可能に(積上げ計算の特例)
・ただし売上税額を積上げ計算にした場合、仕入税額も積上げ計算とする必要

【仕入税額】
・現行の税額の計算方法(積上げ方式)は継続
・8%と10%の適用税率ごとの仕入れ総額に108分の8または110分の10を掛けて課税標準額を計算し、それぞれの税率(6.24%または7.8%)を掛けて仕入れ税額を算出することが可能に(割戻し計算の特例)
・ただし仕入税額を割戻し計算にした場合、売上税額も割戻し計算とする必要

 

免税事業者と課税事業者を分けて経理処理を計算しなければならず、分類する手間もかかります。場合によっては受発注システム、請求管理システムのインボイス対応アップデートが必要になります。

クラウドサービスであれば、ほとんどのサービスがインボイスに対応しています。

 

インボイスで特に大きな影響を受けると言われているのが建設業界。一人親方と呼ばれる個人事業主に仕事を発注することが多いためです。

制度導入を機に、受発注をクラウド化したとの声も聞こえており、インボイスは進まなかった建設業界のIT化を促したという側面もありました。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。