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その他 2023.5.24 配信

G7サミット(主要国首脳会議)が開催される広島県の産業と文化の特徴

G7サミット(主要国首脳会議)が開催される広島県の産業と文化の特徴

G7最大の焦点は中ロに対して結束する姿を見せられるかどうか


2023年5月19日から5月21日まで広島県でG7サミットが開催されました。ウクライナへの侵攻を続けるロシアに対して、各国首脳が結束を強め、制裁を逃れる動きに対抗する方針を打ち出せるかどうかが注目のポイントとなるでしょう。

制裁の抜け穴を作っている国の一つが中国。中国経由で物資を輸入していると言われています。対抗措置は中国に対するメッセージにもなります。

中国はグローバル・サウスと呼ばれるアジアやアフリカの新興国を引き寄せ、先進国との対立構造を浮き彫りにしました。覇権を狙う中国に対して各国首脳が共同で対処できるかどうかが最大の焦点です。

 

日本が議長国となり、開催地として被爆地の広島県が選ばれた意味も大きいでしょう。戦争や核の脅威が深刻化する中で、平和の象徴の広島は強いメッセージを持っているからです。

この記事では、G7開催地広島県の産業や伝統文化について解説します。

鉄が豊富に産出した中国山地


広島県は古くから、中国山地沿いに産出する砂鉄を原料とした鉄鋼業が発達しました。明治時代の半ばには国内で使われる鉄の大部分が中国地方で生産されていました。国内では島根県に次ぐ鉄の生産量を誇りました。

山間部で製造された鉄は河川を通して沿岸部まで運ばれ、港湾地帯を中心に産業が興ります。戦時中は県内最大の呉海軍工廠などが設置され、軍需産業を中心として民間の工場が次々と作られます。

戦争が終結すると、県内は軍需施設で働いていた人々の多くが失業者となりました。復興を促すため、GHQは平和産業への転換を許可しました。

 

現在も広島県に本社を置く自動車メーカーのマツダは、もともとコルクの生産を行う東洋コルク工業という会社でした。1931年に3輪トラックの製造を開始。戦時中は呉海軍工廠などの軍需工場として歩兵銃や航空機用の部品を生産するようになります。

戦後は自動車、削岩機、工具類などの生産を行うようになりました。終戦を迎えて3輪トラックの生産を開始してからおよそ20年後、マツダ初のロータリーエンジンを搭載したスポーツカー「コスモスポーツ」を世に送り出しました。先進的なデザインと機動性を兼ね備えたこの自動車が大躍進のきっかけを作ります。

 

マツダの他にも、軍需の協力企業から転換した会社や工場に、日本製鋼所広島、三菱重工業広島、三菱電機福山、広島メタル&マシナリー、神田造船所、久保田鐵工所などがあります。

広島県で機械関連の産業が発展した背景には、軍需工場の存在がありました。

サプライヤーに忍び寄る電気自動車化の脅威


2020年の広島県の製造品出荷額は8兆8,699億円。全国のシェアは2.9%で全国11位となっています。自動車や造船業を中心とする輸送用機械のウエイトが高く、3割程度を占めています。次いで、機械、鉄鋼、電子部品と続きます。

鉄鋼貨客船の生産額は全国1位。呉市は戦艦大和を建造したことで有名です。広島県の産業は現在も戦前の流れを汲んでいます。

 

しかし、令和に入って転換期を迎えようとしています。電気自動車を中心としたエコカーの普及です。マツダは2030年までにバッテリーEVの本格導入を行う計画を立てています。これは広島の産業を支えている、マツダのサプライヤーに大打撃を与えるでしょう。

 

マツダの駆動系のサプライヤー企業群の広島アルミニウム工業の売上高は841億円、オンドは502億円、松本重工業は172億円、カワダは154億円です。ボディやシャシーメーカーのヒロテックの売上高は875億円、マツダスチールは754億円、ワイテックは638億円、キーレックスは477億円です。

 

電気自動車の登場により、自動車の部品点数は3万から1万程度まで減ると言われています。サプライヤーへの影響は甚大。また、電気自動車向けの部品製造へと転換しなければなりません。生産設備や取引先の見直しが必要になります。

収益力の高いニッチトップが集まる広島県


機械産業に強い広島県は、ニッチトップを数多く擁していることでも知られています。技術開発力の強さは広島県の特徴の一つだと言えるでしょう。

広島県は『広島県の「ものづくり」~オンリーワン・ナンバーワン企業~』で該当する会社を公開しています。

 

ゴミ焼却施設用廃熱ボイラのアイメックス、卓上クリーンロボットのアテル、光造形式3Dプリンターを用いた精密鋳造品の製作を行う今西製作所など、数多くの会社が選出されています。

 

ニッチトップ企業は収益性が高く、研究開発投資に積極的で海外売上比率が高いと言われています。収益力のある会社が集まっていることは、広島経済にプラス効果を与えています。

なでしこジャパンに贈呈された熊野筆


広島県の伝統的な工芸品で、経済産業大臣指定のものは以下5品目です。

●熊野筆(くまのふで)
●広島仏壇(ひろしまぶつだん)
●宮島細工(みやじまざいく)
●福山琴(ふくやまこと)
●川尻筆(かわじりふで)

 

この中でもよく知られているのが、熊野筆でしょう。広島県安芸郡熊野町で生産されるもので、ヤギやシカ、タヌキ、イタチなどの獣毛を原料としています。

毛先が繊細でコシがあることから、化粧筆や書筆、画筆などとして利用されています。2000年に入って、有名女優やメイクアップアーティストが熊野筆をメイクブラシとして使用していることから、口コミで評判が広がりました。2011年になでしこジャパンへの国民栄誉賞の記念品として熊野筆が贈呈され、知名度をいっきに高めました。

熊野筆は戦後、学校習字の廃止で生産量が大幅に低下しましたが、ブームの後押しもあって9,500万本(生産額85億円)まで拡大する産業となりました。

 

しかし、他の伝統産業と同じく後継者不足に悩んでいます。熊野筆は基本的に手作業で作っており、進んでやろうとする若い働き手がいません。

 

ただし、熊野筆をボディブラシに転用する商品の登場など、伝統工芸品という枠組みにとらわれない新たな産業が興っています。今後は伝統工芸とビジネスをいかに結びつけるかがポイントとなるでしょう。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。