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介護・福祉 2023.6.7 配信

高齢者向け宅食サービスが2025年に大幅な市場伸張に期待できる理由

高齢者向け宅食サービスが2025年に大幅な市場伸張に期待できる理由

2桁増となった食品宅配の市場規模


矢野経済研究所は、2020年度の食品宅配の市場規模が前年度比114.3%の2兆4,969億円と推計しました。新型コロナウイルス感染拡大の影響によって宅配需要が急拡大し、近年まれに見る2桁成長を遂げました。

UberEatsなどのデリバリーサービスが消費者の間でいっきに広まりました。

 

デリバリーの分野で注目が集まっている領域の一つが高齢者向けの食品宅配サービス。少子高齢化で需要の拡大が見込まれているためです。

また、限界集落の買い物難民や、運転免許を返納したことで長距離移動が困難になった高齢者も多く、食品宅配サービスは深刻な社会問題を解決する主要なサービスとなりました。

団塊の世代が一斉に後期高齢者に突入


市場調査を行うシードプランニングによると、2025年の高齢者向け宅食サービスの市場規模は2,160億円。2019年は1,800億円でした。6年で1.2倍に拡大する見込みです。

 

実はこの2025年が高齢化社会の一つのターニングポイントとなります。その理由は団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となるため。内閣府の「高齢社会白書」よると、2025年に75歳以上となる人口は2,180万人で、16.8%もの増加が見込まれています。

※内閣府「高齢社会白書」より

 

65歳以上の高齢者数は2040年ごろにピークを迎えて減少に転じますが、75歳以上の後期高齢者数はその後も横這いを続けています。

 

高齢者向けのサービスというと、高齢者住宅や介護などの福祉事業が第一に浮かびます。この業界も中長期的に盛り上がるように見えますが、安泰とは言い切れません。その理由は、高齢者を支える現役世代が減少し、現在の介護保険制度を維持できなくなる可能性があるためです。

介護事業者は収益の大半を保険制度に依存しています。将来的に制度の大幅な変更が起こったとすれば、大再編や大量倒産時代が到来する可能性もあります。

 

しかし、顧客単価が低い宅食サービスは年金での支払いが可能で、日々の生活を支える源である食に直結します。十分な介護を受けられない高齢者にとって、必要不可欠なサービスとなるかもしれません。高齢者向けの宅食サービスは極めて有望であり、重要度の高いものだと言えます。

ニッチ業界で頭角を現すシルバーライフとは?


ワタミやオイシックス・ラ・大地など、宅食中心とした事業展開をしている会社は多くあります。しかし、高齢者という特定のターゲットに絞ってニッチビジネスを行う会社はほとんどありません。

この分野で高いシェアを握っている会社が、シルバーライフです。2007年10月に創業し、11月に「まごころ弁当」の直営店をオープンしました。その後、FC展開による拡大を進め、2017年10月にマザーズに上場。現在はプライム市場に上場しています。

 

決算短信より

 

シルバーライフは上場した年の2017年7月期から5期連続の増収を達成しています。2023年7月期の売上高は127億円を予想しており、予想通りの着地で6期連続の増収となる見込みです。

拡大ペースも早く、2019年7月期からの売上高の伸び率は平均して14.2%。二桁成長をキープしています。

 

シルバーライフの業績を支えているのがFC加盟店。2022年7月末の段階で加盟店は990店舗(前年度末から56店舗の増加)となり、FCによる売上高は前年同期比11.1%増の80億8,000万円となりました。売上高全体の7割以上を占めています。

高齢者向け宅食ビジネスが成功するポイントは?


シルバーライフのように一般的な高齢者をターゲットとし、シェアの獲得を目指すビジネスの場合、提供するサービスの基本スタンスは「よいものを安く提供する」しかありません。限りある年金からサービスの対価が支払われるためです。

そうなると、企業がとるべき施策は、いかに効率化を進めるかというポイントに限られてきます。シルバーライフもその轍を踏んでいます。2017年に群馬県に物流センターを稼働していましたが、2022年には埼玉県にも物流拠点を設けました。

同時に工場への投資で増産体制も進めています。しばらくは、2013年に取得した群馬の工場が生産拠点となっていました。しかし、2021年に栃木工場の稼働を開始しています。

 

シルバーライフは大型投資に踏み切った影響により、減価償却費に差異が生じて中期経営計画の営業利益の下方修正を図りました。しかし、この設備投資によって売上高300億円程度まではカバーできるとしています。

次のステップとしてM&Aも視野に入れています。今後は生産体制や配送網の効率化、会員獲得を目的とした買収を行う可能性が大いにあります。

投資ファンドも注目する領域


高齢者向けの宅食サービスのM&A事例も目立ち始めました。

 

2022年1月に医療・介護サービスを提供するカスケード東京が、デイサービスや配食事業を手掛けるフォームフィールドスクウェアを買収しました。フォームフィールドスクウェアは、千葉県習志野市「デイサービスしののめ」「宅配クック123八千代店」、千葉県千葉市「デイサービス更科」などを運営しています。

カスケードグループは介護施設や整骨院、リラクゼーションサロンなどを運営しており、デイサービスのフランチャイズ展開も行っています。

宅食サービスを手にすることで事業の幅を広げられる他、フランチャイズオーナー向けに宅食という新たな事業展開の提案をすることも視野に入ります。

 

2012年3月にはファミリーマートがシニアライフクリエイトを子会社化しました。シニアライフクリエイトは高齢者専門宅配弁当「宅配クック ワン・ツゥ・スリー」のフランチャイズ本部を運営する会社。2011年11月時点で315拠点を展開していました。

シニアライフクリエイトにとっては、ファミリーマートの生産拠点や配送網を活用することにより、生産性を上げることができます。

この案件はみずほ証券系の投資ファンド、ベーシック・キャピタル・マネジメントが手掛けたもの。高齢者向けの宅食サービスはファンドも注目している領域の一つです。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。