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人材 2023.6.21 配信

製造業の人材派遣が抱える業界の課題とM&Aを取り巻く現状

製造業の人材派遣が抱える業界の課題とM&Aを取り巻く現状

バブル崩壊後に製造業の人材派遣が解禁


日本の主要産業である製造業は、請負だけが認められており、派遣は禁止されていました。規制緩和への踏み切ったのが小泉内閣で、2004年3月1日に改正労働者派遣法が施行されました。

解禁後、派遣社員の数は急増します。

 

日本人材派遣協会より

 

非正規社員を大量に出す引き金になったと、現在でも批判的に語る人の多い施策ですが、収益性の低下に苦しむ企業を救い、人材の流動化をもたらしたと見ることもできます。

人材派遣の市場規模は全体で6兆4,000億円あるとされ、重要な産業の一つとなっています。派遣社員数のおよそ3割は製造業の従事者。今や製造業は人材派遣なくして語れなくなりました。

 

ただし、派遣業界には変化も生じています。

需要の見通しを立てづらい業界の一つ


製造業の派遣には大きく4つの課題があります。

 

1.需給調整の難しさ
2.企業が求めるスキルの変化
3.労働環境の適正化
4.派遣人材の評価と報酬

 

この中でも需給調整の難しさは突出しています。製造業は景気に敏感で、好景気で需要が高まると工場がフル回転するため、大量の人材を必要とします。その一方で、不景気になると稼働が低下して、人材のダブつきが起こります。

 

最近の例では、新型コロナウイルス感染拡大によって緊急事態宣言が発令され、ビジネス環境は大きく変化しました。半導体不足、物資輸送の停滞、対面販売の制限によってサプライチェーンの分断がされ、サービスの提供が困難になりました。

自動車メーカーなどを中心に、減産を余儀なくされ、場合によっては工場停止に追い込まれました。しかし、コロナが収束に向かって半導体などの調達が進むと、工場は再びフル稼働を始めます。

 

製造業は一連の見通しを立てるのが難しく、人材派遣会社は需要に上手く対応して人を送り込まなければなりません。派遣社員として登録する人を担保し、臨機応変に対応する力が求められます。

複雑な製造工程に携わることも


日本の製造現場はここ20年で大きく変化したと言われています。

それは海外から安価で高品質な製品が大量に入るようになり、企業は競争力を高めるべく設備投資を行っているためです。

梱包や製品チェックなどはロボットが行うようになり、精密機器の組み立てや検査、製造補助、クレーン操作などの複雑な仕事を作業員が担うようになりました。

 

人材派遣会社はスキルに見合う人を見つけ、教育した上で現場に送り込みます。海外の人材を現場に派遣するケースも多く、トレーニングや教育プログラムの徹底は欠かせません。

スキルに見合う報酬制度の徹底や、労働環境が適正かどうかをチェックする労務管理も必要です。

 

今後、AIの導入やDXによる生産性の向上により、製造現場はこれまで以上の変化が起こるとも言われています。企業は短くなり続ける消費サイクルにスピードを合わせなければならないため、設備への投資は避けられないでしょう。製造業の派遣会社は、更なるスキルアップに努めなければなりません。

コロナ禍を抜けてアウトソーシングの売上が上昇


製造業の人材派遣を行う大手企業がアウトソーシングです。エンジニアなどの専門人材の派遣も行っています。

2022年12月期の売上高は前期比21.2%増の6,897億7,700万円でした。この会社の2014年12月期の売上高は594億2,100万円。わずか8年で売上高は10倍以上に膨らんでいます。

アウトソーシングは凄まじい勢いで買収を繰り返してきました。戦略的なM&Aが成長の原動力です。派遣業界は寡占化が進んでいない産業の一つだったため、アウトソーシングがシェアを高めるために積極的に中小企業をグループ化したことが背景にあります。

 

同社の製造業の派遣事業は、新型コロナウイルス感染拡大で一時停滞しました。しかし、2022年に入ってからは回復しています。

決算説明資料より

 

2022年12月期の売上高は1,224億円で、前年同期と比較して1.2倍に伸びています。今後アウトソーシングは、M&Aを抑制してオーガニックな成長に切り替えるとしました。

 

アウトソーシングは単なる人材派遣を行うだけではありません。課題解決型のサービスを提供しています。クライアントにアウトソーシングの労務管理、人材採用・教育のプラットフォームを共有し、生産計画、製造技術に合わせた人材送り込むようにしているのです。

更にクライアントの課題に合わせた改善目標を設定し、その成果を共有。顧客満足度の高いサービスを提供しています。

 

製造現場が複雑化する製造業の人材派遣会社は、このような高度なサービスの提供が求められるようになるでしょう。

シェアの拡大や派遣業種拡大を目的としたM&Aが多数


製造業の派遣を行う会社のM&Aは、主にシェアの拡大や人材の獲得、サービスの充実、事業推進の効率化を目的としたものが多く見られます。

 

人材ビジネスを行うワールドホールディングスは、2023年4月に日本技術センターの全株を取得することを決定しました。日本技術センターは大手メーカー向けの製造・技術者派遣を行っています。機械・電子・電気などの技術分野が中心の会社です。

ワールドホールディングスはもともと製造業の派遣事業を行っていましたが、このM&Aでシェアを高めました。

 

ウィルグループは2023年5月、外国人採用支援事業を子会社のウィルオブ・ワークに承継させました。ウィルグループを分割会社とし、ウィルオブ・ワークを承継会社とする吸収分割です。

外国人労働者は製造業の現場にも多く派遣されています。今後、需要が高まることを受け、ウィルオブ・ワークに事業を承継させて、機動的にサービスを提供する狙いがあります。

 

アウトソーシングは完全子会社のPEOの吸収合併を決定しました。PEOは工場製造ラインへの人材派遣を行っている会社。合併によって経営の合理化・効率化を行います。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。