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半導体・製造 2024.12.25 配信

名門ユニチカが事業再生で祖業の繊維事業から撤退を決定、深刻化する国内繊維始業の縮小

名門ユニチカが事業再生で祖業の繊維事業から撤退を決定、深刻化する国内繊維始業の縮小

1900年から繊維の製造を開始


6大紡績会社の一角である名門ユニチカが2024年11月28日、地域経済活性化支援機構(REVIC)に対して事業再生計画を提出し、再生支援が決定しました。

1889年に大阪財界の出資によって設立、1900年から綿糸の製造を開始した歴史ある会社。1970年から水着のマスコットガールを毎年選出するなど、日本の繊維産業を象徴する存在でした。そのユニチカが繊維事業から撤退します。

 

衣料品の国内市場は縮小しており、生産量は減少していました。

ユニチカの繊維事業の切り離しは、栄枯盛衰と呼ぶに相応しいものです。

2万社近い取引先に影響か?


ユニチカのメインバンクである三菱UFJ銀行などが最大で430億円分の債権を放棄。再生スポンサーのREVICが、希望する金融機関から債権の買取を行い、種類株227億円の無償譲渡に応じます。

銀行側は90億円の融資枠を設定。ユニチカの資金需要に応える体制を整えました。

 

REVICはユニチカに200億円を出資。筆頭株主となります。上場は維持するため、既存株主は株式の希薄化が生じる予定。

 

帝国データバンクによると、ユニチカの仕入れ・外注先は256社、販売先は454社に及びます。2次取引先までを含めると、その数は1万8,506社。広大なネットワークを構築しており、その影響は計り知れません。

繊維事業からの撤退によって商取引債権への影響はありません。ただし、ユニチカが繊維事業から撤退し、事業を他社に売却した場合、取引の縮小が生じる可能性があります。

 

2024年3月期における繊維事業の売上高は330億円。会社全体の売上高は1,183億円で、撤退によって3割近い売上が失われることになります。

事業からの撤退で将来的には営業利益10%の高収益企業へ


ユニチカは2024年3月期に24億円を超える営業赤字を出しました。過去10年を振り返っても営業赤字を出したことはありませんでした。

要因の一つとなったのが繊維事業で、この期に事業単体で5億円の損失を出しています。2025年3月期に入っても赤字は継続中。上半期は6億円の営業損失を計上しました。

ユニチカは包装フィルムなどを扱う高分子事業、ガラス繊維や電子材料などの機能資材事業、繊維事業の3つで構成されています。

2025年3月期で赤字を出しているのは繊維事業のみ。ユニチカは衣料繊維、不織布、産業繊維のいずれも採算改善が困難と判断。撤退を決断しました。

 

撤退後は2つの事業に経営資源を集中させ、半導体製造工程フィルムやインフラ補修材料、電磁波遮蔽材料などの高い技術力が要求される素材の開発に邁進します。

 

2029年度の売上高は700億円まで縮小する見込み。一方、営業利益は65億円を目指しており、今期の営業利益率の予想である2.5%から10%近くまで上昇させるという、高収益体質企業になる見込みです。

衣料品の市場規模は2020年に10兆円を下回る


ユニチカの2008年3月期の売上高は2347億円でした。2024年3月期は1183億円であり、売上は半減したことになります。

 

国内の衣料品の市場規模は縮小中。ピーク時の1991年は15.3兆円でしたが、コロナ禍の2020年は8.6兆円まで落ち込みました。2019年の市場規模も11兆円であり、緩やかに縮小を続けていたところ、コロナ禍で大打撃を受けた格好です。

 

しかも日本の衣類は安価な海外製に頼ってきました。2015年における日本の衣類の輸入浸透率は実に97%。これは国内で販売される衣類のほぼすべてが海外製であることを示しています。ファーストリテイリングのように製造拠点を海外に移す動きも広がり、国内の繊維産業は斜陽化していました。

 

ユニチカは医療や産業向けの不織布にも強みを持っていましたが、事業を拡大することができませんでした。

業績ジリ貧型の倒産が9割


2024年4月の全国繊維業者の倒産件数は24件。前年同月で同件数でした。

婦人・紳士服などの卸売を行っていたサイキはピーク時の年商が69億円。売上は1/20まで縮小していました。子供向けスポーツウェアの取り扱いがなくなり、コロナ禍が追い討ちとなりました。

 

倒産に至る要因は業績のジリ貧が全体の9割を占めてトップ。残りは業況急変でした。

繊維業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。

 

一方、経営合理化を進めるためにM&Aが活発な業界でもあります。廃業を検討しているのであれば、M&Aを視野に入れるべきでしょう。魅力的な売却先を見つけることができるかもしれません。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。