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IT・通信・システム開発 2024.12.18 配信

ソフトバンクが「ChatGPT」のOpenAIへ追加出資と株式の買い集めを進める理由は?

ソフトバンクが「ChatGPT」のOpenAIへ追加出資と株式の買い集めを進める理由は?

総額3,000億円を超える巨額の出資


ソフトバンクグループが「ChatGPT」のOpenAIに対して最大15億ドル(2,300億円)の追加出資を検討していると報じられました。同社はすでに5億ドル(760億円)を出資しており、出資割合を高めようとしています。

 

OpenAIはソフトバンクグループのTOBを通して、従業員が15億ドル相当分の株式を売却することをすでに認めたとされています。

ソフトバンクの狙いはどこにあるのでしょうか?

迅速に答えを導き出すフェーズから深い思考力へ進化


OpenAIの足元の状況を見てみましょう。

 

話題をさらったのが2024年12月6日の「ChatGPT」の上位プラン「ChatGPT Pro」の発表。月額200ドル(3万円)でより高度な思考や難問に対する優れた回答を受けることができるようになりました。

これは「OpenAI o1(オーワン)」という2024年9月に公開した新たなモデルをベースとしたもの。料金は「ChatGPT Plus」の10倍という高額な設定を行っていますが、その性能は段違いだと言われています。

ソフトバンクグループの孫正義代表取締役会長兼社長は、ビジネスカンファレンス「SoftBank World 2024」にて、「OpenAI o1」は”考える”能力を持ったと熱弁しました。これは、数学の博士課程の問題で従来の「GPT-4」の正答率が14%だったことに比べ、「OpenAI o1」は81%に達したという事実を評価したもの。

 

OpenAIの最新版は、答えの速さを追求するのではなく、深さを追求しているとコメントしました。

 

「ChatGPT Pro」は推論能力や質問を深く考察する点に特徴があり、思考を組み立てて答えを導くことができます。

図面や設計図、実験過程などの画像をアップロードし、その分析結果の文章と資料を組み合わせ、考察できる内容を質問で引き出すといった高度な思考も可能。歴史の資料など、あいまいさを含んだものの解釈もできるといいます。

 

医療や金融、法律、研究開発、マーケティングなど、「ChatGPT Pro」は情報収集や調査研究、資料の作成、アドバイザーなどとして活躍することに期待されています。

ソフトバンクグループのAI構想とは?


ソフトバンクグループはAIを3つの領域に切り分けています。1つ目はChatGPTに代表されるアプリケーション。2つ目はデータセンターなどのインフラ。3つ目がハードウェアです。

 

孫正義氏は「今から10年後20年後、AGIに取り組んだ企業・人物が、人類のリード役になっていく」と語りました。AGIとは汎用人工知能のこと。つまり、AIによって科学や医療、経済などが大転換すると予想しているのです。これはGoogleなどの登場で世界が一変したIT革命を彷彿とさせるもの。ソフトバンクグループは、AIを巧みにビジネスに取り込むことにより、次なる時代をリードする存在になろうとしているのです。

 

そしてAIという領域を切り分けた、3つのカテゴリーを抑えることが重要だと考えています。

 

ソフトバンクグループが強みを発揮できなかったカテゴリーが1つ目。出資を加速しているのはそのためでしょう。傘下のソフトバンク・ビジョン・ファンドの運用総額は2023年12月末時点で1,500億ドル。23兆円近い資産を運用しています。

出資者にはAppleやMicrosoftなどが名を連ねており、主にテクノロジー分野に投資をしています。AI関連への出資と思想や理念が重なるという特徴があるのです。

 

OpenAIは将来性を有していることからも、出資を継続的に行いたいと考えているでしょう。

ソフトバンクは携帯電話の会社からAIインフラ整備会社に?


ソフトバンクグループは、インフラの構築とハードウェアへの投資はすでに行っています。前者が子会社で携帯電話やデータ通信事業などを展開するソフトバンク。後者が2023年9月にナスダックに新規上場したイギリスの子会社で、半導体の設計を手掛けるアームホールディングス(Arm)です。

 

ソフトバンクは2023年3月に子会社SB Intuitionsを設立。独自の生成AIの開発に乗り出しました。2023年7月にはGen-AXを設立し、企業向けのAI導入支援、コンサル事業をスタートしています。

また、2025年には生駒、2026年には苫小牧にデータセンターを新設する予定。全国展開に向けて動き出しました。

 

ソフトバンクが目指しているのはビルや工場、自動運転、ドローン、信号機などに向けてAIを整備すること。データ収集や分析・予測などが必要な分野にAIを導入し、インフラを効率的に運用しようというものです。

データセンターからAIの開発、導入コンサル、実装までの川上から川下までをカバーできる体制を整えました。

ソフトバンクの携帯電話事業は頭打ち。中長期的にはAIで業績を伸ばそうとしています。

AIの分野で勝算はあるのか?


Armはチップを設計し、顧客や提携先にライセンス供与している会社。Alphabet(Google)やMicrosoft、Amazonなどが顧客です。提携先にサムスンやApple、Qualcomm、TSMCなどがあり、ライセンスを供与しています。

 

Armが強みとしているのが携帯電話。もともとこの領域はインテルが独占していましたが、省電力のCPUを開発してArmがシェアを奪いました。

 

AIの分野でトップを走るのがNVIDIA。時価総額でAppleを抜き、世界首位を獲得したことでも知られています。

Armは2025年にAIチップの量産を開始すると報じられています。初期開発費用はArmが負担し、ソフトバンクグループも出資する模様。AIチップ事業はArmから切り離され、ソフトバンクグループの傘下に置かれるのではないかとも指摘されています。

NVIDIAの牙城を崩すことができるのか、大いに注目が集まる動きでしょう。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。