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飲食・食品 2021.7.28 配信

「ロピア」で話題の食品スーパー、M&Aにも活発な動き

「ロピア」で話題の食品スーパー、M&Aにも活発な動き

「ロピア」で話題の食品スーパー、M&Aにも活発な動き


神奈川県を中心に食品スーパーマーケットを運営するロピアが、メディアに取り沙汰されています。

ロピアは1971年4月に創業。食肉専門店を含めて全国60店舗を運営し、2021年2月期の売上高は2,068億円でした。単純計算で1店舗あたり年間34億円以上の売上があることになり、極めて業績の良い会社といえます。なお、ロピアのような売場面積の広い(1,600㎡以上)店舗の売上は、20億円未満が最も多い水準です(一般社団法人全国スーパーマーケット協会「統計・データでみるスーパーマーケット」)。

食品スーパーは、業界そのものの魅力も見直されています。
2020年12月のスーパー全体の月間売上は前年比103.6%となり、11カ月連続でプラスとなりました。コロナ禍でも強さを見せつけたのです。その一方で、店舗数の増加に伴ってこれまでの経営スタイルが通用しなくなっていることも事実。この記事は、スーパーの業界とM&Aの動向を紹介するものです。

投資ファンドと共同で西友を買収した楽天


小売世界大手の米ウォルマートが2020年11月、保有していた西友の株式85%のうち、65%を米投資ファンドのKKR、20%を楽天に売却したと発表しました。注目するポイントは、IT国内大手の楽天が西友の株式を保有して支配権を強めたことです。

楽天の狙いは西友のデジタル化を促すことにあります。具体的には、キャッシュレス決済やアプリを活用した決済、配達の実現などです。キャッシュレス決済の開発と顧客の囲い込みを急ぐIT企業は、株式を保有することで手っ取り早く導入を進められます。スーパーはDXの推進という側面でも魅力的な産業となっています。

スーパー各社はセルフレジの導入や、売れ筋を分析するAIを導入するなど、省人化や生産性の向上を進めています。アマゾンが無人のコンビニである「アマゾンゴー」を2018年1月にオープンしましたが、ITとスーパーの融合が新たな顧客体験を生もうとしています。

業界再編が激しいスーパー業界


業界のトップを走るのがイオンです。2021年2月期の売上高は8兆6,039億円。その後を追うのがセブン&アイ・ホールディングスで、同売上高は5兆7,667億円でした。

イオンは業界の再編を象徴する会社で、2013年8月にダイエーを130億円で子会社化したことで有名です。翌年に278億円相当の株式交換で完全子会社化しました。同じ時期にドラッグストアチェーンのウエルシアホールディングスの株式50%を取得して子会社化し、スーパーマーケットのレッドキャベツも買収しました。

セブン&アイ・ホールディングスは、2006年9月に株式交換でヨークベニマルを完全子会社化しました。セブン&アイ・ホールディングスは2016年10月に阪急阪神百貨店のエイチ・ツー・オー・リテイリングに出資し、3%の株式を保有する資本業務提携をしました。2018年3月には小田急電鉄・小田急商事のスーパーマーケット事業や駅構内の売店、コンビニエンスストア事業での資本提携もしています。セブン&アイ・ホールディングスは消費低迷で業績が悪化している百貨店にも興味を示しています。小田急電鉄への出資も、百貨店事業進出への布石と見ることができます。

全国でスーパーの数は増加傾向に


一般社団法人全国スーパーマーケット協会の調査によると、スーパーマーケットの店舗数は年々増加しています。

増加している背景には、都市型の「まいばすけっと」などの小型店が出店を強化していることがあります。かつてスーパーは大型化・郊外型がトレンドでしたが、高齢化社会に伴って地域密着型で徒歩圏内に小さな店舗を構えるケースが増えました。老舗のスーパーは競合店の登場によって顧客を奪われるケースがあります。また、ドラッグストアやコンビニが生鮮食品や総菜に力を入れ、業態の垣根がなくなりました。今後、商品開発力に欠けるスーパーの苦戦が予想されます。
スーパーマーケットの大手企業は、プライベートブランドの開発を急ピッチで進めています。この背景には、低価格で高品質の商品を提供できることがあります。商品企画への投資を加速し、場合によってはM&Aも活用しています。それほど商品力が求められる時代へと突入しているのです。

スーパーを買収・売却するメリットはどこにあるのか?


事業承継問題を理由に経営するスーパーを売却するケースも目立ちます。売り手側のメリットとして、ブランド力のあるスーパーの傘下に入ることや、プライベートブランド商品で差別化が図れる点は大きいです。セルフレジやキャッシュレス決済をいち早く導入によって省人化が実現できます。仕入を一元化することにより、原価を引き下げられることもあります。

買い手側はコストを抑えて出店エリアを拡大することができます。プライベートブランド商品の流通チャンネルを拡大でき、同じ開発コストで商品売上を上げることができます。管理職などの人材の確保も大きなメリットの一つです。

主なスーパーのM&A事例


【ドン・キホーテが米高級スーパーを買収】
ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは2021年4月に、米国カリフォルニア州で高級スーパーを展開する「Gelson’s」の全株式を取得しました。パン・パシフィックはディスカウントストア、「ユニー」の総合スーパーを事業の柱としてきました。海外展開の足掛かりとして、創業70年の歴史ある海外のスーパーの買収を決めました。

【穴吹興産がママのセンターのスーパーマーケット事業を取得】
不動産事業の穴吹興産の子会社ジョイフルサンアルファが2019年10月、ママのセンターから長崎県で手掛ける4店舗のスーパーマーケット事業を取得しました。穴吹興産は、2016年2月に長崎県でスーパーを展開するジョイフルサンアルファの再生支援スポンサーになっていました。同じ長崎エリアのスーパーを取得することにより、仕入コストの低減や人材の活用などを行うと考えられます。

【大黒天物産がマミーズ22店舗を取得】
100円ショップやディスカウントストアなどを運営する大黒天物産は、2018年12月に福岡や熊本などで30店舗のスーパーを展開するマミーズから、22店舗を取得しました。大黒天物産は食品ディスカウントストアを主力としており、エリア内のスーパーを傘下に収めることで物流や仕入コストの低減を図ることができます。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。