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M&A一般 2022.8.3 配信

夏にM&Aが活発化するというのは本当? 2022年6月、7月注目のM&Aも紹介

夏にM&Aが活発化するというのは本当? 2022年6月、7月注目のM&Aも紹介

2~3月にM&Aが集中しやすい理由


M&Aは2月~3月に活発に行われることが知られています。これは3月決算の企業が多いため。M&Aは「売りたい」「買いたい」と思ったタイミングが最適なのは間違いありません。しかし、経営者の多くは、新年度から心機一転して新たなスタートを切りたいと考えています。

新年度からだと、社員や取引先に情報を発信しやすく、M&Aが力強いメッセージになります。

M&Aの成立は決算月と近い関係にあり、8月~9月にかけても活発化しやすい傾向があります。

9月に決算月を迎える会社は8.4%で3番目に多い月


過去最多となった2021年の国内M&Aの月別件数を見てみましょう。

※M&AOnline「M&Aデータベース」より作成

 

2021年上場企業のM&Aで最も件数が多かったのは2月の97件。全体の11.1%でした。次が3月で94件(10.7%)です。やはり4月の新年度を迎える前に成立させようとする会社が多く、2月と3月で全体の21.8%を占めています。

次に多いのが4月と9月の83件。それぞれ9.5%を占めています。4月が多いのは、3月で進めていたものが何らかの理由によって4月にずれ込んでいると考えられます。

 

下のグラフは国税庁が公表している決算期別法人数です。圧倒的に3月に集中しており、全体の80.4%を占めています。次に多いのが12月の10.9%、そして9月の8.4%です。

※国税庁「決算期月別法人数」より

 

全法人で見ると12月決算の会社は多いですが、資本金10億円以上の大企業で見ると0.5%まで下がります。9月決算は3.6%。2月の5.6%に次いで高くなります。

 

■全法人と資本金10億円以上の法人の決算月の割合

※国税庁「決算期月別法人数」より

 

買収を希望する会社は大企業が中心。2月3月はM&Aが集中しやすいですが、9月も活発化しやすい傾向にあります。

会社の売却を検討している人は、春と夏に契約がまとまりやすいと考えておくと、話がスムーズに進められるかもしれません。

シダックスをグループ傘下に入れるオイシックスの狙い


次に今年の夏に行われた主なM&Aを見てみましょう。

 

6月のM&Aで世間を驚かせたのが、ミールキットサービスなどを展開するオイシックス・ラ・大地が、シダックスの株式26.5%を80億円で取得するというもの。2022年8月から9月にかけて譲受する計画だと6月29日に発表しました。

 

実はこのM&Aにシダックスの意向はあまり反映されていません。株式を売却したのは投資ファンドのユニゾン・キャピタルだからです。

シダックスは2018年5月カラオケ事業をB&Vに譲渡していますが、このころは業績が低迷しており、5期連続の赤字に陥っていました。それを救ったのがユニゾン・キャピタルです。2019年6月に65億円を出資し、シダックスに取締役を派遣しました。

ユニゾン・キャピタル主導のシダックスはホテル事業を売却するなど、経営資源を主力の給食事業に集中しました。その成果は目覚ましく、コロナ禍の2021年3月期に黒字化を実現しました。

 

65億円を出資した際、ユニゾン・キャピタルは40億円でシダックスのB種優先株を取得しています。オイシックスが買い取るのはこの保有分。80億円での取得なので、ユニゾン・キャピタルは3年ほどで2倍の価値に引き上げたことになります。

B種優先株には議決権がありませんが、2022年7月22日に普通株に転換することが確定。オイシックスは議決権ありの普通株を保有することになりました。

オイシックスはミールキットの会員増加が一巡し、次なる成長戦略の一つに給食事業を挙げていました。シダックスと手を組むことにより、事業拡大を狙います。

 

【2022年6月の主なM&A】

●サッポロホールディングスが米国ストーン・ブリューイングを子会社化

サッポロホールディングスは2022年6月にアメリカのクラフトビールメーカー、ストーン・ブリューイングの持分すべてを取得し、子会社化すると発表しました。ストーン・ブリューイングはアメリカの有力クラフトビールメーカー。

サッポロはビールが頭打ちの国内市場を抜け、海外展開を加速するとしていました。この買収はその戦略の一環です。買収額は227億1,600万円と規模の大きい案件です。

 

●小僧寿しがラーメン店「どさん子」などのアスラポートの全株を取得

6月15日小僧寿しは、JFLAホールディングスからラーメン店「どさん子」や居酒屋「ぢどり亭」などを運営するアスラポートを子会社化すると発表しました。

小僧寿しはテイクアウト、デリバリーを主体としてきましたが、今後は飲食店のフランチャイズ化による事業拡大を狙います。その足掛かりを作るためのM&Aです。

M&Aで沖縄に進出したウエルシアホールディングス


ドラッグストアを展開するウエルシアホールディングスは、7月22日に沖縄県内で調剤薬局やコンビニエンスストアを営むふく薬品の株式52.58%を取得し、子会社化しました。ウエルシアは沖縄県に初進出することになります。

ウエルシアはM&Aを繰り返して成長した企業として知られ、2022年2月期は創業以来初の売上高1兆円を突破しました。戦略的なM&Aを行っていることが特徴で、利益率の高い調剤薬局を積極的に取り込んできました。2022年2月期の営業利益率は4.3%。ウエルシアは日本の会計基準を採用しており、のれんの償却費が重くなる傾向がありますが、競合他社と引けを取らない利益率を確保しています。

沖縄県は出生率が高く、他のエリアと比べて優位性が高いという特徴があります。

 

【2022年7月の主なM&A】

●ロピア・ホールディングスがスーパー・バリューの株式過半数を取得

スーパーマーケットを展開するロピア・ホールディングスが、スーパーバリューの第三者割当増資を引き受け、保有比率を33%から52%まで引き上げました。ロピアは神奈川県を中心に低価格路線のスーパーを展開しています。スーパーバリューは埼玉県、東京都が中心。ロピアは拠点を広げることができます。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。