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その他 2022.8.17 配信

コロナ禍で激変した広告業界、大手代理店はM&AでAI化を促進

コロナ禍で激変した広告業界、大手代理店はM&AでAI化を促進

博報堂がビッグデータ活用のLaboro.AIの株式を取得


大手広告代理店がM&AによるAI化を進めています。

2022年8月3日、博報堂が、「カスタムAI」の提供で高いAI技術を持つLaboro.AIの株式を取得し、資本業務提携契約を締結しました。

博報堂はこの提携により、クライアント企業が抱えるマーケティングの課題に対して、ビッグデータやAIを活用したソリューションを提供します。

具体的には、「嗜好性に基づくレコメンドアルゴリズムの開発・実装」、「顧客行動予測モデルによるCRM高度化」など、クライアント企業の課題や生活者のニーズに寄り添った施策をオーダーメイドで提供する計画です。

 

競合の電通もAIなどのデジタル領域でのM&Aを加速することを、2024年度までの中期経営計画に盛り込みました。

なぜ、広告代理店は急速にAI化、デジタル化へと舵を切ったのでしょうか。

力を失ったマスコミ四媒体


その答えは、広告出稿を希望するクライアント企業の需要の変化にあります。

下のグラフは国内の総広告費の推移です。

新型コロナウイルス感染拡大により、2020年は前年比11.3%減の6兆1,594億円となりました。2021年は前年比10.4%増の6兆7,998億円となったものの、2019年の水準にはとどいていません。

※電通「2021年日本の広告費」より

 

コロナ禍で旅行会社、ホテル、飲食店、テーマパーク、航空会社などの間で広告を手控える動きが加速しました。元の水準に回復するにはやや時間がかかると見られています。

 

コロナは広告の市場規模を大きく変化させました。しかし、広告代理店の態度を激変させたのは、広告出稿の領域がデジタルにシフトしたことです。

※電通報「インターネット広告費がマスコミ四媒体の総計を初めて上回る」より

 

日本の広告費は「マスコミ四媒体広告費」「インターネット広告費」「プロモーションメディア広告費(屋外、交通広告など)」の3つに分かれています。

2021年のインターネット広告費は2兆7,052億円。マスコミ四媒体広告費を10.2%も上回りました。

巣ごもり、リモート勤務・授業の定着によって消費者のデジタルメディアへの接触回数が増えたことが背景にあります。

インターネット広告の伸びは好調を維持しており、マスコミ四媒体を引き離して成長すると見られています。

 

平成までの広告代理店は、テレビや新聞、雑誌を主体としたマス広告を得意としてきました。マス広告は企業目線の情報を一方的に流すという特徴があります。広告代理店やクライアント企業にとっては、予算さえ割ければ比較的簡単にブランド認知や選好度を高めることができました。

しかし、令和のデジタル時代はその様式が変化しました。消費者の好みは千差万別であり、日本中にあらゆる情報が分散しています。広告代理店は消費者の行動を読み取り、適切な広告を出して購買へとつなげなければなりません。

広告代理店業は、極めて難易度の高いビジネスへと変化したのです。ヒトの手ではとても処理できない膨大なデータを、AIで効率的に処理しようというのがデジタルシフトの基になっています。

マーケティングツールの精度向上に努める電通


電通は2020年1月にアメリカの4Cite Marketing, LLCの全株式を取得しました。

フォーサイトは個人データ保護の認識の高まりで3rdパーティクッキーからの脱却が進むなか、1stクッキーを活用したマーケティングテクノロジーを開発。eコマース領域において提供し、高度なデータ分析を駆使したオンライン・オフラインのリアルタイムデータ統合サービスなどを提供しています。350社と提携し、消費者一人ひとりの嗜好に合わせた顧客体験を提供している企業です。

電通は2016年8月にデータマーケティング企業Merkleの株式を取得しており、同社が提供するマーケティングツール「M1(エムワン)」の精度向上が成長性を握るカギになっていました。

AIの開発やビッグデータの活用には、個人情報保護法という壁が存在します。電通そのハードルを越える技術取得へと手を伸ばしました。

博報堂がアドウェイズを持分法適用関連会社に


2021年11月に博報堂がアドウェイズの株式360万株あまりを取得し、保有比率が15.42%まで高まりました。これにより、アドウェイズは博報堂の持分法適用関連会社となりました。

アドウェイズは日本のデジタル広告領域において、売上高第4位の中堅企業。デジタル広告効果の最大化を図る提案力と、ユーザーが望む最適な広告配信アドテクノロジー分野の開発力が強みです。

クライアント企業と、消費者双方の満足度を上げることに注力しています。

博報堂のデジタル広告会社のグループ化は、広告代理店がデジタル化、AI化に本腰を入れていることを示すものです。

個人情報の保護とデータの活用が注目のテーマに


アメリカのデジタル広告企業TripleLift Inc.が、スイスの1plusX AGを2022年4月5日に買収しました。TripleLift Inc.は10万以上の広告主に対して、月1兆件を超える広告取引を行う大手広告会社。1plusX AGはAI技術をもとにポストクッキー時代の次世代広告プラットフォームを提供しています。

アメリカではカリフォルニア州において消費者プライバシー法が2020年1月に成立。Googleは2023年までに3rdパーティクッキーを段階的に排除すると宣言。アップルは2020年3月に完全排除しました。

3rdパーティクッキーとは、訪問したサイト以外の履歴を補足し、広告配信に役立てる技術で、個人情報保護の観点から規制の対象とされてきました。

一方、1stパーティクッキーは、訪問したサイトが発行元となり、入力した情報の保存などを行うもので、今後も継続して利用可能な技術です。

日本においては、3rdパーティクッキーのユーザーの同意を2022年6月から取得することが義務付けられていますが、規制そのものはされていません。

1stパーティクッキーによる広告配信技術は、日本の規制強化とともに需要が膨らむ可能性があります。今後、個人情報保護の障壁をクリアして精度の高い広告を配信するサービスが、スタートアップを中心に注目領域となることは間違いありません。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。