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飲食・食品 2023.2.22 配信

市場規模が縮小する製糖業界は大規模なM&Aで再編が進むか

市場規模が縮小する製糖業界は大規模なM&Aで再編が進むか

日新製糖と伊藤忠製糖が経営統合


日新製糖と伊藤忠製糖が2023年1月に経営統合しました。ホールディングスへと移行し、持株会社のウェルネオシュガーが誕生しました。

2022年10月には三井製糖と大日本明治製糖が経営統合し、DM三井製糖ホールディングスがスタートしていました。この経営統合は100年に1度とも言われ、DM三井製糖は国内のシェア40%を握るまでに至りました。

寡占化を進める競合の動きを機敏にとらえたのが、日新製糖と伊藤忠製糖の経営統合でした。

 

製糖は需要縮小の影響を色濃く受けている業界です。今後もダイナミックな業界再編が進む可能性が高い領域だと言えます。

砂糖離れが進む現代の日本


農林水産省によると、2019年の甘味全体の需要量は293万トン。10年前と比較して30万トン減少しています。少子高齢化によって甘味料の需要が縮小しているほか、消費者が甘味を控える嗜好も広がっており、需要は緩やかに縮小し続けています。

※農林水産省「砂糖及び加糖調製品をめぐる現状と課題について 」より

 

甘味料の中でも砂糖の縮小は顕著。2019年は172万トン、2009年は204万トンでした。32万トン減少しており、甘味料全体の減少ペースを上回っています。

その一方で、異性化糖の需要量はほとんど変化していません。異性化糖はブドウ糖からできるコーンシロップを、酵素などで異性化した果糖ブドウ糖液糖のことで、ソフトドリンクやパン、缶詰などに利用されています。

砂糖よりも甘味が口に残りにくいという特性があるため、食品加工会社や飲料メーカーなどに重宝されています。

 

砂糖は異性化糖に市場を奪われているとも言えるでしょう。

 

砂糖の9割は事業者向けに生産されていますが、消費者の急速な砂糖離れも深刻です。2019年の1世帯当たりの購入数量は4.4kgでした。10年前と比較して2.4kgも減少しています。

※農林水産省「砂糖及び加糖調製品をめぐる現状と課題について 」より

 

減少している背景として、世帯人数の減少や家庭内調理の簡便化、個食化が影響していると考えられています。

国内の製糖市場はジリ貧とも呼べる状態です。

 

日本の製糖会社はDM三井製糖ホールディングスとウェルネオシュガーが高いシェアを獲得しています。中堅会社を中心に、再編が進む可能性があります。

高付加価値商品で海外に活路を


市場は縮小していますが、砂糖は35%という高い関税がかけられており、安価な輸入品の脅威にさらされることはありません。原材料についても、海外から輸入される原料糖と国内のさとうきび・てん菜を原料とする国内産の原料糖に大幅な価格差が生じるため、価格調整を行っています。

製糖会社、生産農家ともに国に守られている産業の一つです。

 

経営統合した国内トップのDM三井製糖ホールディングスの業績を見てみましょう。

2022年3月期の売上高は前期比0.6%減の1,478億円、営業利益は同28.0%減の36億円でした。経営統合して順風満帆のスタートかと思われましたが、減収減益での着地でした。コロナ禍で観光に伴う土産物の需要縮小、飲食店の客離れが減収へと繋がりました。

 

2023年3月期は売上高が前期比10.2%増の1,630億円、営業利益は47.7%減の19億円を予想しています。行動制限が撤廃されて旅行や外食需要が回復し、2桁増を見込んでいます。しかし、エネルギー価格高騰で輸送費や光熱費が嵩み、円安も進行したために利益は縮小しています。

 

DM三井製糖ホールディングスは、2022年3月期に北海道糖業本別製糖所での生産を終了。所有していたビルを売却するなど、所有する資産の整理を進めています。

 

成長に向けた注力領域の一つが海外事業。DM三井製糖ホールディングスは、海外事業とライフ・エナジー事業を強化する目的で、従業員100名と約400億円の投資を行う計画を立てています。

DM三井製糖ホールディングスは中国、タイ、シンガポールに子会社を展開しています。

決算説明資料より

 

今後はベトナム、中東エリアでの商圏拡大を狙っています。

海外において砂糖で価格勝負を仕掛けるのは得策とは言えず、いかに高付加価値商品を生み出すかがポイントです。DM三井製糖ホールディングスは、タイの製糖会社において、さとうきびの圧搾で出るバガスを原料としてポリフェノールを精製しています。

同時にバイオエタノールも抽出しており、砂糖に限定しない製品化、商品化が必要になるでしょう。

周辺産業のM&Aが活発化


製糖会社の周辺事業を買収する動きが強まっています。

 

三井製糖は子会社ニュートリーとともに、テルモの栄養食品と関連製品資産を譲受しました。テルモは医療機器メーカーで、栄養事業で病院をメインにした栄養食品を開発していました。

ニュートリーは栄養療法食品メーカーで、流動食などの製品開発を行っています。ニュートリーはM&Aで製品ラインナップの拡大を図りました。

 

三井製糖は2017年4月に医薬品や診断薬研究の三和化学研究所から、医療・介護食の一部を取得していました。砂糖の市場は少子高齢化の影響で縮小していますが、介護食や医療食はその反対に市場が拡大しています。

注力領域の一つをライフ・エナジー事業としている通り、M&Aを活用しながら栄養食を成長させています。今後も三井製糖による医療食や介護食のM&Aは活発に行われるでしょう。

 

日新製糖は2019年2月に中村屋の子会社エヌエーシーシステムの全株式を取得しました。エヌエーシーシステムはフィットネスクラブ「ドゥ・スポーツプラザ」を運営する会社。日新製糖はスポーツクラブ事業の強化を図りました。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。