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産業廃棄物・環境 2022.9.14 配信

FIP開始で大転換を迎える太陽光発電ビジネス、ノンコア事業のM&Aが加速

FIP開始で大転換を迎える太陽光発電ビジネス、ノンコア事業のM&Aが加速

太陽光発電の買取価格も市場価格に左右される時代が到来


いよいよ、2022年度からフィード・イン・プレミアム「FIP」制度が導入されます。国内の太陽光発電事業は、固定価格買取制度「FIT」で成長してきました。

FIPは卸売市場などで売電した価格に、一定のプレミアム(補助金)を上乗せするというもの。市場価格に左右されないFITからFIPへの移行は、業界構造を大きく変化させる可能性があります。

FIP制度は技術力の高い事業者が有利に


太陽光発電事業への参入を検討している人のために、FIP制度を詳しく説明します。

 

FITにおいては、電力会社が事業者から電気を買い取る際、1kWh当たりの単価が定められています。FIPは「基準価格」と「参照価格」の差額を発電事業者が儲けとして得る仕組みです。

FIP制度の基準価格は、(制度開始当初は)FIT制度の調達価格と同じ水準にすることが決まっています。参照価格は、市場価格の変動などによって機械的に決められます。この差額がプレミアム単価であり、発電事業者が電気を売った価格にプレミアムが上乗せされるという意味です。

 

※計算産業省「「FIP制度」が2022年4月スタート」より

 

FIP制度では、発電事業者は発電量などの「計画値」を作成し、「実績値」と一致させることが求められます。これを「バランシング」と言います。事業者は計画値と実績値の差であるインバランスが出た場合は、その差を埋めるための費用を支払わなければなりません。

FITにおいては免除されていましたが、FIP導入で義務付けられました。

すなわち、FIP制度は発電事業者としてのより専門的な知識が求められることになります。

FIP導入のメリットと事業者が取り組むべき課題


FIPはFITと比較してビジネスとしての難易度が上がり、儲けも少ないように見えます。あまりメリットがあるようには感じません。しかし、市場価格は需給バランスによって変動しており、買取価格が高いときに売電することで、収益を大きくすることができます。

 

そうは言っても、太陽光発電の発電効率はどの事業者も気象条件がそろっていればほぼ同じ。そこで、他社との差別化を図るのが蓄電池です。発電効率が落ちて市場価格が上がったタイミングで、蓄電池から電力を供給する仕組みが今後は欠かせません。また、それに伴って発電予測精度の向上といった、これまでにないシステムの開発、取り組みが必要になります。

 

いわば、FITは誰でも事業化できる仕組みでした。FIPは市場の競争原理が働きやすくなるのです。それに伴い、FITに寄りかかっていた事業者の廃業は進むものと予想できます。

 

なお、電力を使う消費者にとっては、FIPの導入は電気代が下がるというメリットしかありません。2021年度は、固定買取制度などに伴う国民のコスト負担は2.7兆円に及んでいます。

経営難易度が上がって廃業を選択する事業者は増加の見込み


太陽光発電事業者の倒産件数は2015年ごろから急増しています。2021年上半期はJCサービス(負債総額153億4,200万円)、グリーンインフラレンディング(負債総額128億円)の大型倒産が相次ぎました。規模の大きい会社が倒産した場合、金融機関はその業態に対する貸付に対して慎重になると言われています。

 

※帝国データバンク「太陽光関連業者の倒産動向調査(2021 年上半期) 」より

 

FITからFIPへ。そして大型倒産が相次いで与信が絞り込まれる。太陽光発電事業者にとっては厳しいビジネス環境になってきました。

 

しかし、発電所を手放したいと考える事業者が増えたことは、チャンスでもあります。太陽光発電は典型的な装置産業であり、発電所の規模を増やすと単位面積当たりの管理コストを下げられるというメリットがあります。

今後は、技術力のある太陽光発電事業者による大規模な業界再編が進むと見られています。

固定価格買取制度の売買プラットフォームサービスを開始した丸紅


丸紅は2022年8月に太陽光発電所の売買プラットフォーム「ソラクル」をリリースしました。投資家や事業者が、丸紅が保有する太陽光発電所を直接購入したり、売却できるというもの。融資やメンテナンス、保険なども丸紅が提案しています。

太陽光発電所の中古売買市場は、発電所の設備に不備があるなど、信用力に欠けていました。丸紅が高品質の発電所の仲介役となることで、信用不安を払拭し、市場を活性化させる狙いがあります。

 

M&Aにおいては、ノンコアとして太陽光発電事業を行っていた会社の、スピンアウト案件が増加する可能性があります。

 

2021年10月に半導体検査装置事業のオランジュが、太陽光発電システムの運転管理・保守点検事業をエネプライムに譲渡しました。オランジュの太陽光発電事業は、FITの買取価格が下がったことや新型コロナウイルス感染拡大によって営業活動が制限されたことで、業績が低迷しました。事業を切り離すことで本業に専念できます。

エネプライムは同業を行う会社で、規模の拡大を図ることができます。

 

規模の大きい会社が保有する太陽光発電所は設備管理が行き届いているケースが多く、優良案件が多いのが特徴です。ノンコア事業の切り離しは、買い手にとってもメリットの大きいM&Aです。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。