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保育・教育 2022.8.31 配信

結婚式場が保育園を運営? 株式会社がM&Aで保育事業に進出する理由

結婚式場が保育園を運営? 株式会社がM&Aで保育事業に進出する理由

テイクアンドギヴ・ニーズが合弁会社アンドカンパニーを設立


2017年4月、結婚式場運営大手のテイクアンドギヴ・ニーズが保育園を運営する「まちの研究所」と合弁会社アンドカンパニーを設立。2017年10月に「も、の保育園」を開業しました。

これは、ウエディングプランナーが子供を安心して預け、働きやすい環境をつけるための取り組み。女性の活躍をバックアップし、婚礼業界をけん引するテイクアンドギヴ・ニーズらしい先進的な取り組みでした(新型コロナウイルス感染拡大の影響で2022年3月末に閉園)。

2016年4月に政府が待機児童解消を目指して「企業主導型保育事業」を開始。企業が自由に保育園を設置できるようになりました。これにより、保育園のM&Aは活発化しています。

サステナビリティの観点からも保育園が注目される


テイクアンドギヴ・ニーズの社員の平均年齢は28歳。6割を女性が占めています。一般的に結婚式場運営会社の離職率は高いと言われています。理由は婚礼の打ち合わせは平日の夜や週末が多くなるため。その時間に子供を預かる保育園は少ないのが現実です。

テイクアンドギヴ・ニーズの保育園は、夜9時30分まで子供を預かり、日曜日や祝日も開園していました。

結婚式場に限らず、飲食店、ホテル、小売店などは平日の夜や週末が最も忙しい時間帯になりがち。家族を持つと長く続けられないと考える人が多くいます。その一方、業務内容は属人的になりがちで、人を育てるのに時間もかかります。

人材を中長期で育てたいと考える企業と、結婚を機に退職したいと考える従業員のジレンマが生じていました。

 

SDGsの目標の中には女性の社会進出を掲げる項目があり、日本政府も「女性の指導的地位に占める女性の割合30%」達成を目指しています。

特にサービス業においては、福利厚生の一環として企業主導型の保育園を開業する動きは加速するでしょう。保育園の運営ノウハウを取り込むため、M&Aが活発化する可能性は十分にあります。

 

最近の事例では産業廃棄物処理を行うミダックホールディングスが、2022年5月に企業主導型保育事業を行うLOVE THY NEIGHBORの全株式を取得しました。同社は英語教育保育園「用賀インターナショナルスクール」などを運営しています。

ミダックホールディングスは、様々なシナジー効果が得られるとしたうえで、上場企業として求められるサステナビリティの視点から社会課題の解決に応えることも狙っているとしています。

企業の福利厚生だけでなく、サステナビリティの観点からも保育事業に注目が集まっています。

「事業所内保育園」と「企業主導型保育所」の違い


リクルートホールディングスは、2008年に事業所内保育園アンズを開園しました。運営はアイ・エス・シーという全国30園以上の保育園を運営する会社が行っています。

「事業所内保育園」と「企業主導型保育所」は何が違うのでしょうか?

大きな違いは「認可」されているかどうかです。事業内保育園は認定保育所に分類され、開園には市区町村の認可が必要です。認可保育園は対象年齢や職員の配置基準が決められています。

「事業所内保育園」「企業主導型保育所」どちらも助成金が用意されていますが、補助の内容は大きく異なります。

 

企業が福利厚生を目的として保育園を開園するケースを軸に説明してきましたが、事業の多角化(新規事業として保育事業に進出)や、事業の拡大(開園エリアの拡大)、人材獲得などを目的とする保育園のM&Aは頻繁に行われています。

物流大手が保育事業に参入


総合物流企業のセンコーグループホールディングスは、2020年8月に認可保育所などを運営するプロケアの全株式を取得しました。プロケアは当時、小規模保育所を29か所、学童クラブを23か所運営。従業員が800人を超える中規模運営会社でした。

センコーグループホールディングスは、介護関連事業のビーナスや「けいはんなヘルパーステーション」などを買収し、介護や生活支援事業などの新事業展開を加速していました。更に保育事業を加えて経営を安定化させる狙いがあります。

また、同社は買収当時すでに6か所の企業内保育所を運営しており、プロケアのノウハウを活かして主力の物流に関わる人材を確保する相乗効果にも期待しています。

 

保育事業を行う上場企業ソラストは、2022年3月、東京を中心に認可保育園を19か所運営する「なないろ」を子会社化しました。ソラストは47か所の保育園を運営しており、買収によって66か所に拡大しました。同社は更に3件のM&Aの実行を予定しており、エリアと規模の拡大を進めています。

ソラストは売上高24億円(2020年度)から100億円規模が射程に入りました。M&Aを軸として急成長を遂げています。

保育園を買収する際の注意点


保育園はやや特殊なビジネス構造をしています。「認可保育園」と「認可外保育園」という2つの分類がカギになります。

 

認可保育園は国の法律に従って設定された保育園の設置・運営基準を満たし、都道府県の認可を受けたものを指します。

公立保育園は市区町村が直接運営するもの。公設民営保育園は市区町村が民間に運営を委託しています。私立保育園は非営利法人、学校法人、宗教法人などが運営しています。

 

認可外保育園は基準を満たしていない施設です。

認可を受けていないとはいえ、施設や運営内容が認可保育園に必ずしも劣っているわけではありません。独自のプログラムや取り組みを取り入れ、地域の人々に人気のある無認可の保育園も多数あります。

ただし、認可保育園は、子供を預ける側にとって信用・信頼という側面でやや優位に立っていると言えます。

 

保育園のM&Aには、主に株式譲渡と事業譲渡の2つがあります。経営権が移転する株式譲渡を行うと手間がかからず、コストが削減できます。しかし、宗教法人や非営利団体は株式を発行していません。その場合は事業譲渡を行います。

事業譲渡の場合、認可・無認可問わずに市区町村への申請が必要。また、保育士などの従業員一人ひとりと雇用契約を交わさなければなりません。M&Aを不安視して離職を考えるスタッフが出るなど、時間をかけて対応する必要があります。

事業譲渡の場合は手間がかかることを頭に入れておくと良いでしょう。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。