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M&A一般 2024.7.31 配信

買い手企業が中小企業の場合も書類提出と簡易監査が必要な時代に

買い手企業が中小企業の場合も書類提出と簡易監査が必要な時代に

中小企業庁も悪質なM&Aに目を光らせる


中小企業庁が2024年5月に「昨今の中小M&A市場における動向を踏まえた周知・注意喚起について 」という資料を公表しています。

これは後継者不足の中小企業が事業承継を実現するためにM&Aを積極的に活用している一方、買い手による不適切な行為が横行していることを問題視するもの。中小企業のM&Aは買い手が有利な立場に立つことが多く、買収成立後に現金や資産などを不適切に移転。支払いに問題を生じさせて、場合によっては倒産に至っていることがあります。

 

売り手側はトラブルを回避するため、買い手側が中小企業である場合は簡易監査や決算書の提出、信用調査などを行うこともできます。信頼できるM&A仲介会社を通して、安全かつ健全な譲渡を実現しましょう。

悪質なM&Aによる主なトラブルは?


買い手側に問題があるM&Aのトラブルには以下のようなものがあります。

 

・会社の連帯保証人を新役員に切り替えるはずが引き延ばされる
・高額な役員報酬を受け取り、従業員から運転資金名目で資金を借り入れる
・従業員の給与の未払いを継続する
・会社の資金や資産を抜き取る

 

M&Aが成立した直後に新たな役員体制を構築し、資金や資産を様々な手口で引き出します。給与の未払い、従業員からの資金の借入など、あらゆる手を使うのが特徴です。

その一方で、多忙などを理由として連帯保証人に切り替える手続きを行いません。短期間で吸い上げが完了すると、姿をくらませて連絡を絶ちます。

連帯保証人を切り替えていないため、譲渡後のオーナーは多額の債務を背負うことになります。

 

これらのトラブルは実際に起こったもので、買い手側一社が複数社に対して同様の手口で被害を与えました。譲渡を終えた経営者の中には6億円以上の債務が残ってしまったケースもあります。

これは知名度が高いグループのM&A仲介会社を通して行われたもの。被害者の会は仲介会社を提訴。資金を抜き取るのが目的だったなどとして警視庁にも被害を相談しています。

M&Aにおける売り手側の注意点


このようなトラブルはなぜ起こってしまったのでしょうか?売り手と仲介会社は特有の問題点を抱えており、それが表面化した結果だと考えることができます。

 

売り手から見ていきましょう。

中小企業のM&Aは買い手側が交渉を有利に進めることが大半です。売り手側は事業承継問題や資金繰りの一時的な悪化、事業展開の行き詰まりなど、経営上の問題点を抱えていることが多いためです。つまり、譲渡することそのものが目的になりがちなのです。

 

早く事業から離れたいと急ぐことや、譲渡契約を終えた安心感から連帯保証を切り替えないなど気の緩みが生じてしまうのでしょう。また、新たな役員体制となったことで経営に口出しができず、チェックする目も行き届かないため、給与の未払いなどといった異常事態にも対処ができなくなります。

 

しかも、国がM&Aによる事業承継を推進しておきながら、監視する体制が構築されていません。規制が甘く、経営者同士の性善説を前提としてM&Aが進められているのです。

買い手側へのチェックを行うこともできる


M&Aでは、売り手側に対してデューデリジェンスと呼ばれる財務や労務、法務などのチェックが行われます。

しかし、買収成立後のトラブルを防ぎ、健全に経営を継続するためにも、買い手側に対して監査を正しく行うことも重要です。現在、買い手側に対するチェックや監査を設ける仕組みはほとんど整っていませんが、必要に応じて行うことは可能です。

特に買い手側が中小企業である場合、経営や事業の実態をつかむことをおすすめします。

 

買い手側の監査は以下のようなものを行うことができます。

 

【買収企業監査】
・数年分の決算書を提出
・財務分析
・信用調査
・会社等訪問
・事業インタビュー

 

トラブルを引き起こす買い手側の経営者は、甘い言葉を投げかけることがほとんど。そのようにして相手を信用させるのです。

企業監査は客観的に経営や事業の質を判断できます。言葉ばかりで実態が伴っていなければ、おかしいと気づく手掛かりを得ることができます。

 

M&Aの仲介会社によっては、買い手側の監査を嫌がることもあるでしょう。要望に対して真摯に応える仲介会社を選んでください。

M&A仲介会社にも責任の一端が


冒頭で紹介したトラブルで仲介会社が提訴されているように、仲介会社側にも問題があります。

 

悪質、あるいは質の低い仲介会社は、成功報酬などの手数料だけを目的として紹介を行っています。そのため、売り手側のメリットを考えることなく、素早く契約成立に導ける、一部の買い手(得意先)ばかりとマッチングさせてしまうのです。

 

このような仲介会社は、買収条件が折り合わなくて交渉が中断すると、放置して新たな買い手候補を紹介しないこともあります。

 

M&A仲介会社を検討する際は、手数料などの金額にばかり目を向けず、親身になって相談できる相手であるかどうかを十分に見極めてください。売り手側の経営課題解決に向けた提案を行い、幅広いネットワークの中から最適な買い手候補を見つけてくれるところが相応しいでしょう。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。