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半導体・製造 2025.1.29 配信

2025年はいよいよ日本も本格的な利上げ局面に、 中小の家具メーカーは販売低迷でM&Aが加速する未来も

2025年はいよいよ日本も本格的な利上げ局面に、 中小の家具メーカーは販売低迷でM&Aが加速する未来も

日本も利上げ局面に突入


日銀が2025年1月23日、24日の金融政策決定会合で0.5%の利上げを決定しました。

この影響を真正面から受けるのが住宅市場。住宅ローンは変動金利で0.6%程度、固定金利で2.0%程度まで上昇する見込みです。住宅購入のハードルが上がって消費者が慎重になると、住宅市場の低迷が視野に入ります。

 

不動産投資の収益性も下がるため、投資用マンションなどの開発も停滞します。住宅の供給量が下がる可能性があるのです。間接的に影響を受けるのが家具業界。消費者向けの家具は、新築住宅の着工数と深い関係があります。

中小の家具メーカーは、販売に苦慮する未来が視野に入ってきます。

価格を抑制して客数を伸ばしたニトリ


2023年の新設住宅着工戸数は22万4352戸。前年比11.4%の減少で、64年ぶりの低水準となりました。注文住宅の新設着工は高齢化、人口減など人口動態によって緩やかな縮小を続けていましたが、2023年に急減しました。

これは建築コストが急激に上がったためで、2023年11月の注文住宅の取得費用は2019年11月比で14.4%増加しています。ウッドショックと呼ばれるコロナ後の需要の急増、ウクライナ危機によるエネルギー価格の高騰、円安の進行などが背景にあります。

 

これまでは日銀が金融緩和路線を継続していたため、住宅ローン金利は低く抑えられてきました。これが利上げに動くとなると、住宅ローンの返済負担が重くなり、住宅の購入に対して後ろ向きになるとの見方があります。

 

矢野経済研究所による、2022年の家庭用家具市場規模は3.7%の増加でした。これはコロナ禍からの市場回復の影響が大きく、2023年は3.7%程度減少すると見られています。

2024年も1.3%減少する見込みです。

 

家具そのものもインフレの影響を受けて買い控えが進行。IKEAやニトリなどの低価格商品が好調です。ニトリホールディングスにおける、島忠事業を除いた2024年4-9月の売上高は前年同期間比7.8%増の3,902億円でした。

オープンから一定の期間が経過したニトリの既存店の売上高は2.8%増加するなど好調。特に客数が堅調で、5.4%増加しています。一方、客単価は2.4%減少しました。

ニトリは2022年3月期、2023年3月期に円安などを背景とした値上げを実施していました。その影響で客数が鈍化していたのです。価格を抑制したことで、客数が増加しています。

 

ニトリはインフレ下で消費者が安いものを求めている意識が強まっていることを、体現しています。

後継者が不在で事業停止に追い込まれたケースも


家具の製造メーカーの2022年の事業所数は3,060。緩やかに減少しています。

家具製造の仕事は主材料の見極めや刃物の取り扱い、塗料・工具を使った繊細な技術、人の体と住環境に対する知識が必要とされるなど、高い専門性が求められます。一般的には家具デザイナーが図面を作り、職人が家具を製作しています。

大手企業では大量生産化が進んでいますが、中小企業ではオーダーメイドで制作していることがほとんど。業界では職人の減少にも悩まされており、資金繰りと人材確保の難しさから廃業へと至るケースが目立ち始めました。

 

2024年12月に手作り家具の工房「岩泉純木家具」が経営破綻しました。広葉樹を使った手作り家具に強みを持っており、最盛期の売上高は1億8,000万円に達していました。

台風の被災などによって業績は低迷、破綻へと至っています。

 

2025年1月には新潟県のジャパンインテリアシステムズが破産手続きの開始決定を受けました。

飲食店向けの業務用イスを製造する会社で、こちらも全盛期の売上高は1億円を超えていました。小学校向けのイスを手掛けるなど事業の幅を広げたものの、業績は停滞。2024年10月に代表が逝去すると、後継者が不在で事業停止に追い込まれていました。

家具製造や木材加工を行う会社のM&Aが活発に


この産業はM&Aが活発化しています。

 

山大は2024年10月にビィ・エル・シーを子会社化しました。山大は山林の伐採、植林事業、国産材製材などを手掛ける会社。ビィ・エル・シーは建築材料、建築内装材の生産・販売を行っています。

ビィ・エル・シーは特に首都圏を中心とした一般住宅向け造作部材、室内ドアの販売が主軸。山大は宮城県を拠点とする会社ですが、子会社化によってエリアの拡大を図りました。

 

オフィス家具の製造を手掛けるイトーキは、2024年2月にソーアの全株を取得しました。ソーアはオフィスのデザイン、プランニング、施工・工事や、別注家具の販売を行う会社。

イトーキはこの買収によって顧客に対するサービスの質が向上するとしています。

 

2024年3月には日創プロニティが洋家具の製造販売を手掛けるシキファニチアを買収しています。日創プロニティの傘下にあるカナエテによる、インテリア製品や家具のオーダーメイドECにおける商品ラインナップ強化が目的。

 

業務効率化やサービスの拡充という点において、家具メーカーの買収は魅力的です。家具の製造を行う事業者で、資金繰りの悪化や人材不足を理由に廃業を検討しているのであれば、売却へと目を向けるべきでしょう。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。