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旅行・宿泊施設 2024.6.12 配信

歓迎すべき宿泊・観光需要の急回復も人手不足深刻で運営会社の危機

歓迎すべき宿泊・観光需要の急回復も人手不足深刻で運営会社の危機

2023年に完全回復した日本人旅行消費額


コロナ禍で大ダメージを受けた観光需要が力強く回復しています。

 

国土交通省によると、2023年の日本人国内旅行消費額は21.9兆円。この数字はコロナ禍を迎える前の2019年とまったく同じものです。

2023年の宿泊旅行は2019年の17.2兆円を上回る17.8兆円。周辺産業への消費効果が大きい宿泊を伴う旅行が回復しており、リベンジ消費とも言える需要拡大に旅行・宿泊業界は沸いています。

 

そこに海外旅行者の急増が重なって需要は急拡大していますが、それは人手不足という深刻な事態も招いています。

チケット代は1万円に値上げも東京ディズニーリゾートの売上高は1.3倍に拡大


国内の観光需要好調の象徴とも言える存在が東京ディズニーリゾート。

オリエンタルランドの2024年3月期、テーマパーク事業の売上高は前期比29.7%増の5,137億円でした。入園者数は同24.5%増の2,751万人に拡大しています。

 

東京ディズニーリゾートは2023年10月に値上げを行いました。これまでは大人1名7,900円から9,400円でしたが、値上げ後は7,900円から10,900円となりました。値上げを行っても入場者数は増加。園内での商品販売収入、飲食販売収入を含めた1ゲスト当たりの売上高も増えたのです。

 

2024年6月6日には新エリア「ファンタジースプリングス」がオープンします。ホテル「ファンタジースプリングスホテル」などの宿泊者限定でエリア内のアトラクションに優先的に乗れるチケットを販売しますが、その価格は22,900円から25,900円。

かつて、東京ディズニーリゾートは家族旅行の定番とも言える場所でした。今やディズニーファン向けの場所へと変貌を遂げています。マーケティング目線で見ると、無目的な顧客を意図的に排除し、目的を持って入園するファンを優先的に入れているように見えます。

 

無目的な人がいなくなることでアトラクションに並ぶ時間が軽減され、園内の熱量も高まるからです。ファンが入園するのは土日祝日とは限らないため、入園者の分散が図れるというメリットもあるかもしれません。

 

観光地は強い目的意識を持った人を集め、消費意欲を高める努力が必要です。観光需要が高まっていることからも、その土壌は整っています。

パッケージ型から個人の好みに合わせた分散型へ


外国人観光客数は2019年の水準を上回りました。

日本政府観光局によると、2024年4月の外国人観光客数(推計値)は2019年同月比4.0%増の304万人。東南アジアや中東地域でイスラム教の断食明けに合わせて旅行需要が増加。人気の桜の開花シーズンに合わせて観光客数が急増したと見られています。

 

背景には円安の影響もあります。アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、イタリアなどで4月として過去最高を記録したのです。

日本は歴史的建造物や自然の景観など観光資源が豊富で、貨幣価値が相対的に低いことから宿泊、外食がしやすい国となりました。正に観光立国となったのです。

 

2019年との違いは中国人観光客数が戻り切っていないこと。水際規制の解除で旅行者数は増加していますが、景気の減速などの影響によって中国人の旅行需要そのものが停滞しています。

 

2019年ごろまでのインバウンドの特徴は、京都や浅草などの有名な観光地を大勢で訪れ、大都市圏の商業施設で買い物をするというパッケージ型のものが主流でした。このころは、中国人観光客の爆買いが持て囃されていました。

添乗員を乗せた観光バスが観光地を回り、観光ホテルでカニの食べ放題を提供するお決まりのスタイルが好まれていました。

 

現在は日本の文化や伝統に触れる体験が求められています。旅行メディアやテレビなどで紹介される有名観光地とは一味違う場所が好まれ、シャッター通りとなった山梨県富士吉田市に外国人観光客が多数詰めかけるようになった話は有名です。

また、コンビニの上に富士山が見えるとして、山梨県富士河口湖町の店の前には黒い幕がかけられました。SNSでその写真が人気化し、マナーの悪い観光客が多いとして規制せざるを得なくなったのです。

 

旅行の在り方は変化しており、定番は通用しなくなりました。上の例は偶然有名になったスポットですが、陶芸体験のような伝統文化に触れるもの、地域の食材を使った料理教室、茶道・華道体験などにも人気が集まっています。

文化が見直されているとも言えるでしょう。

深刻化する人手不足と打開策


深刻なのが旅行・宿泊業界の人手不足。

帝国データバンクによると、2023年4月時点での正社員の人手不足割合のトップが旅館・ホテルで75.5%。月次ベースでは6か月連続で業種別トップとなっています。2023年の段階で早くも人手不足が鮮明になっていたのです。

 

観光庁は観光地・観光産業における人手不足対策に向け、宿泊業の人手不足の解消に向けた設備投資等を支援する事業を開始しています。

予約システムや清掃ロボットの導入によって省人化を図るというものです。導入にあたって必要な費用の一部を補助する仕組み。最大で500万円、補助率1/2をカバーする内容です。

 

宿泊施設やテーマパークなどは、昔からおもてなしの心が重視されてきました。サービスの質を向上するために必要なのが人の手であり、意識の高さでした。そのノウハウを叩きこまれた経営者の多くは、古い価値観から抜け出すことができません。

そのため、デジタル化やロボット化に否定的な立場を取りがちですが、生産性を上げる以外に道がなくなっています。中長期的に見ても人手不足が進行するのは明らかです。

サービスの充実を図るためにも、デジタル化などによる業務負担の軽減を早い段階から行うべきでしょう。

 

人手不足で運営負担が重い場合、M&Aによって資産や会社を譲渡する方法もあります。

 

2021年11月に「勝浦スパホテル三日月」と「鴨川スパホテル三日月」の2つのホテルが、ホテルマネージメントインターナショナルへと譲渡されています。背景にはコロナ禍があったものと考えられますが、この売却によって従業員の雇用は継続されることになりました。

2022年8月にはハウステンボスも香港の投資ファンドに売却されています。HISの経営不振打開のための資金調達が主な目的。これによって通常通り運営は行われることになりました。

 

宿泊業は人手不足によって経営が行き詰るケースが少なくありません。廃業の前にM&Aを検討することをお勧めします。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。