NVIDIAの時価総額がAppleを超える時代が到来! AIが成長産業に

NVIDIAの時価総額がAppleを超える時代が到来! AIが成長産業に
生産性を上げるのに必須となった生成AI
2024年6月5日にGPUの開発などを行うNVIDIAが初めて時価総額3兆ドルを超えました。
コンピューターチップの会社として3兆ドルを突破するのはこれが初めて。Appleの時価総額を抜いてMicrosoftに次ぐ世界時価総額ランキング第2位となりました。NVIDIAは予想を上回る業績で株価が急伸していました。この会社はAIの本命と見られています。
OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiなど、生成AIは調査や資料の作成、プログラミングなどで活用されており、身近な存在となっています。イラストや文章、ロゴの作成など、クリエイティブなタスクもこなすポテンシャルを持っており、産業構造を大きく変える可能性があります。

2倍のペースで売上拡大するNVIDIA
NVIDIAのGPUがAIに最適だと言われるのはなぜでしょうか。
GPUはGraphics Processing Unitの略語で、画像や動画を描写するための画像処理装置という側面が強いものでした。特にNVIDIAはゲーム機との結び付きが強く、2001年のMicrosoftのXbox、2004年のソニーのPlayStation3、2017年の任天堂のNintendo Switchはメーカーと共同で開発を行っています。
ゲーム機の画像処理能力は極めて高く、最先端の技術が盛り込まれています。NVIDIAの強みはゲーム産業で磨かれました。
GPUによく似た装置がCPU。Central Processing Unitの略語で、コンピューターの頭脳となる中央演算装置です。「中央」と呼ばれていることからもわかる通り、CPUはチップがコンピューター全体を制御する仕組みになっています。
一方、GPUは小型のコアを複数搭載しており、それぞれが連動することで複雑な処理を同時並行で進行することができます。GPUの処理スピードはCPUの10倍と言われています。
AIのような複雑な情報処理をするためには、GPUの方が有利だということがわかってきました。
NVIDIAの業績は凄まじい勢いで伸びており、2024年度の売上高は、前期の2.3倍となる609億ドル。営業利益は6.0倍の329億ドルに急拡大しました。2025年度の売上高は前期の2.0倍の1,200億ドル、営業利益は2.3倍の747億ドルとなる見込みです。

AIへの投資額を膨らませるアメリカのテック企業
巨大プラットフォーマーはAIへの投資を加速しています。
2023年4月から6月の間で、Microsoftは107億ドル、Alphabet(Google)は69億ドル、Meta(Facebook)は64億ドルを生成AIに関連するデータセンターなどの設備投資に資金を投じています。
こうした巨大企業の大規模投資がGPUの需要拡大に繋がり、NVIDIAの業績伸長に一役も二役も買っているのです。
GPUは電力消費量が大きく、熱処理を行う大規模な冷却装置が必要。端末やネットワーク機器、冷却装置などの周辺装置に必要な投資を行っているため、必然的に投資規模も大きくなっているのです。
Microsoftは今後2年間で29億ドル(4,400億円)を生成AIの需要拡大に対応するため、日本事業に投資する方針を示しました。東京と大阪に設備を増強し、最新型のGPUを導入します。
巨額の投資は日本の技術者の雇用、育成に繋がると見られており、AI産業の更なる活性化にも期待されています。
日本の生成AIに関連する会社は?
日本においても、画像や文章などのコンテンツを生み出す生成AIの構築を行う会社が活発化してきました。
NTTは大規模言語モデル「tsuzumi」を開発。ポイントは軽量化で、GPT-3の1/300(軽量版)、1/25サイズの軽量化を図っています。軽量にすることで、学習や推論に必要な電力量、コストを削減することができます。
「tsuzumi」は、日本語と英語に対応しており、画像や図、グラフなどを正しく理解できるようチューニングを重ねています。
NECは「NEC Generative AI Service」の提供を2023年7月に開始しました。生成AI関連事業において、3年間で売上高500億円を目指しています。
NECは社内業務での利用を試験的に開始しており、資料の作成時間を50%削減、議事録作成時間を30分から5分に短縮した実績を持っています。
「NEC Generative AI Service」も「tsuzumi」と同じく、サイズ画コンパクトであることが特徴の一つ。顧客が望む業務に特化したシステムを短期間で構築できます。
AIが人手不足に悩む中小企業を救う?
東京商工会議所が2023年5月に実施した調査によると、中小企業が生成AIを「活用している」と答えた割合はわずか5.7%。「活用を検討している」が29.6%でした。検討すらしていない割合が64.7%にも上っています。
多くの中小企業経営者は、生成AIが実務に役立つものだとは考えていないのです。
しかし、生成AIは中小企業こそ役立てたいツールなのです。人手不足を解消することが期待されているためです。
大企業はAIによるチャットボットの構築により、Web上で顧客の疑問や質問に回答したり、コールセンターに導入して自動音声で対応できる仕組みを構築するなど、大がかりな取り組みを行っています。それ以外には、法律や会計の専門家が過去の事例と照らし合わせたり、契約書の作成、企業調査であるデューデリジェンスの効率化を行ったりします。医療でも最適な治療方法の発見などに役立てることに期待がされています。
このように見ると、大企業や専門家に活用されるばかりで、製造業や飲食店、小売店、建築関連の事業者などには意味のないものにも感じます。しかし、生成AIは見積書の送付メールの文面作成や取引先に対して価格改定をお願いする文章、プレゼン資料の作成、文章の校正、翻訳、エクセルの使い方、コーディングなどを行うことができます。
コーディングはエクセルの自動化を行うVBAコードの生成が可能なのです。その他にも、キャッチコピーの作成、経営課題のアドバイス、SWOT分析なども得意なタスクの一つです。
実は身近な場面で活躍しています。
AIは巨額の投資に関連するニュースばかりに気を取られてしまいがちですが、実は日常業務で役立つ優れたツールなのです。中小企業にこそ必要なものだと言えるでしょう。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ
外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。