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半導体・製造 2022.3.2 配信

変化が激しい半導体業界で中小企業がM&Aをするメリット

変化が激しい半導体業界で中小企業がM&Aをするメリット

変化が激しい半導体業界で中小企業がM&Aをするメリット

世界中が注目する業界の一つ半導体。デジタル化が加速した世界では半導体の重要性がこれまで以上に高まっています。


世界半導体市場統計によると、2020年の世界半導体市場は前年比6.8%増となりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で景気が冷え込む中でも、巣ごもり需要がデジタル製品の購入を加速させ、市場は膨らみました。その流れを受けて2021年は前年比25.6%と過去最高を更新。2022年も前年比8.8%増を見込んでいます。
デジタル化が加速した世界では半導体の重要性がこれまで以上に高まっています。

■半導体市場世界地域別予測

※「WSTS 2021年秋季半導体市場予測について」より

※ソニーの電気自動車「VISION-S」 画像は「CES 2022出展、新たなフェーズに向けて」より

中小企業1社で立ち向かうのが困難な時代に


世界最大のテクノロジー見本市「CES 2022」でソニーが衝撃の発表を行いました。吉田憲一郎社長が電気自動車への参入を明かしたのです。ソニーは自動車のセンサーに強みを持っており、2020年の見本市で試作車両である「VISION-S(01)」をお披露目していました。この実験車はセンサーの性能を高める目的で開発されましたが、今回の参入は自動車産業への参入という驚くべき挑戦が示唆されました。
これは自動車産業のビジネスモデルが大転換していることを象徴する出来事です。自動車は3万点もの部品が必要と言われ、複雑な工程が新規参入のハードルを上げていました。電気自動車は2万点と言われており、33.4%部品数が少なくなります。また、電気自動車はガソリンなど可燃性の高い危険な物質を極力抑えられ、開発に時間がかかるエンジンも必要としません。参入のハードルが下がりました。
そして、電気自動車で最もポイントとなるのはソフトウェアです。これは米テスラが先行して開発しているもので、自動運転機能などの主要なシステムを適宜アップデートする仕組みを導入しています。これにより、自動車はハードではなく、ソフト力が主流となります。ハードの価値は下がり、消費者はソフト力で車を選ぶ時代がやってくると言われているのです。ソニーはソフト開発力のある会社であり、その背景を知れば自動車産業への参入も頷けます。
デジタル技術が自動車の在り方を一変させました。電気自動車に欠かせない部品が半導体であり、スマートフォン需要が一服した後も市場は旺盛に伸びると見て間違いないでしょう。
ただし、半導体分野は新しい技術が次々と開発されており、柔軟に対応する力が求められています。多額の研究開発費に設備投資、人員強化による生産体制の確保など、中小企業1社が独立してこの流れに対応するのは極めて難しいと言わざるを得ません。

垂直統合を得意としてきた日本


半導体産業はアメリカを中心に工場を持たないファブレス化が進み、水平分業化が進みました。水平分業とは、研究開発、原料調達、製造、販売を切り分け、それを得意とする会社が担うビジネスモデルです。水平分業にすることにより、研究開発が得意な企業はそれに特化した人材を採用し、製造工場などの余分な設備投資をする必要がありません。
一方、日本の半導体産業は研究開発から調達、製造、物流、販売までを一社が統合して行う、垂直統合型のビジネスモデルを得意としてきました。すべての工程を一社が担うことにより、質の高い製品を比較的安価に提供できるようになります。
半導体を扱う中小企業は、顧客の要望や需要に応えきれなくなっています。垂直統合を得意としてきた日本は、M&Aによって企業同士の協力関係を強め、技術力の向上や人材の強化、顧客基盤の拡大ができる土壌があります。

国主導で世界進出、市場拡大を計画


日本は2021年6月18日に閣議決定した成長戦略において、半導体技術開発や工場立地を推進する方針を打ち出しました。台湾積体電路製造(TSMC)が茨城県つくば市に拠点を設けるなど、海外企業との合弁も視野に入れながら、世界に貢献できる供給網の構築を目指すとしています。
国内の半導体産業は国主導で育てるものであり、M&Aによる統合が進むことで市場の拡大や世界進出が視野に入ります。
半導体産業を支援しているのは、何も日本だけではありません。中国は半導体関連技術へ5兆円を超える大規模投資を行う上、5兆円の半導体基金を設立しています。アメリカは最大3,000億円の補助金制度を含む国防授権法を可決。バイデン統領は5.5兆円の半導体産業投資を含むCHIPS法案に賛意を示しました。台湾は累計2.7兆円の投資申請を受理。韓国はAI半導体技術開発への投資に1,000億円を計上しています。
国と国との半導体開発合戦は過熱しており、海外企業の開発スピードや安価な製造体制は今後一層加速するものと予想できます。
半導体はM&Aが最も活発な業界の1つです。売却側の視点に立つと、M&Aを行う前と後とで以下のような変化が見込まれます。

【M&Aを行う前】
・多額の研究開発・設備投資による借入金が増加
・目まぐるしく変化する顧客の要求に応える難易度の高い経営判断
・国内の半導体産業の成熟化が進み業績が頭打ち

【M&Aを行った後】
・資本力のある会社のもとで健全な開発・製造環境が整う
・顧客基盤や販路が拡大することによって最適な顧客や市場が獲得できる
・海外進出の足掛かりをつかむことができる

ここからは国内の主な半導体企業のM&Aを見てみましょう。

【半導体企業のM&A】
〇あいホールディングスのナノ・ソルテック買収
2022年2月、セキュリティ機器事業のあいホールディングスが、中古半導体の製造や検査装置の買取・修理を行うナノ・ソルテックの株式99.28%を取得しました。半導体の製造・検査装置においては、メモリやCPUに用いる3nmの超微細半導体が主流ですが、電気自動車においては350nmが依然として活用されており、20年前の中古品が多く用いられています。
ナノ・ソルテックは古い半導体を新品に近い状態にオーバーホールする技術に特化しています。あいホールディングスは利益率の高い半導体産業に参入すると同時に、グループが持つ販売チャネルを活用して国内外の大手半導体メーカーを中心に販路拡大・買取強化を行うとしています。

〇レスターホールディングスが半導体商社PALTEKをTOBで子会社化
半導体・電子部品や電子機器を取り扱うレスターホールディングスが、2021年5月に半導体商社PALTEKをTOBで連結子会社化しました。レスターホールデングスは総合エレクトロニクス商社として事業を拡大し、半導体が不可欠なIoTやAI、自動運転技術への対応力を強化しました。PALTEKは国内市場が成熟したことにより、業績が鈍化していました。レスターホールディングスの顧客基盤や販売網を活用し、再成長を狙います。

〇ミネベアミツミがエイブリックを子会社化
ミネベアミツミが、2019年12月にアナログ半導体メーカーのエイブリックの全株を343億9,300万円で取得しました。エイブリックは電源用ICや医療用のアナログ半導体を製造しています。ミネベアミツミは産業・住宅機器市場を中心とした半導体が主力事業。エイブリックの買収により、医療機器などの新たな市場獲得ができます。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。