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その他 2022.2.28 配信

堅調な成長が見込める有望市場「警備業」、M&Aの注意点と事例を紹介

堅調な成長が見込める有望市場「警備業」、M&Aの注意点と事例を紹介

人材派遣業アウトソーシングが警備会社を買収


2021年10月、人材派遣会社アウトソーシングが、交通誘導警備のアーク警備システムとアークミライズの全株式を取得し、完全子会社化しました。アウトソーシングが買収した狙いは大きく2つあると考えられます。1つは警備業の市場が拡大傾向にあること。もう1つは警備業は慢性的な人材不足という経営課題を抱えており、アウトソーシングが抱える人的リソースを有効活用できることです。有望市場である警備業はM&Aも活発ですが、人材を確保できるかどうか。ここが成功のカギを握っています。

市場規模は3兆5,000億円


警視庁によると、警備業に携わる8,339の事業者の合計売上高は3兆4,734億円でした。これは証券業の3兆8,000億円、放送業の3兆9,000億円と肩を並べる規模です。2020年は新型ウイルス感染拡大の影響によって建築工事の延期やテーマパーク、ショッピングモールの一時閉鎖、営業時間の短縮が相次ぎました。その影響を受けて市場規模は前年割れしていますが、2019年までは右肩上がりで堅調に推移してきました。

※「令和2年における警備業の概況」より

ワクチン接種が進み、経済活動は少しずつ再開されています。警備業は再び成長軌道に乗ると予想できます。市場の伸長に合わせて新規参入する事業者も増加しています。

※「令和2年における警備業の概況」より

コロナの影響をなくすと、市場規模は平均1.2%のペースで拡大し、事業者の数は毎年1.6%増加している計算になります。この2つの要素は足並みを揃えて増加、拡大していることになります。
警備業は大きく4つに分かれています。

・1号警備業務:施設巡回警備
・2号警備業務:交通・雑踏警備
・3号警備業務:貴重品警備
・4号警備業務:身辺警備

1号と2号警備業務に従事する事業者が全体の9割を占めています。交通・雑踏警備は施設巡回警備をやや上回る数です。警備業は実務を3年以上経験して「警備員指導教育責任者」の資格をとり、一定の要件を満たすと事業を始められます。そのため、誰でも手軽に始められるものと見做されてきました。しかし、今は新規で始めるには難易度の高い事業という見方が一般的です。ポイントは人の獲得です。

有効求人倍率6倍の慢性的な人材不足


厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、2021年の全職業の有効求人倍率は1.14。警備業である「保安の職業」は6.11に跳ね上がります。求職者1人に対して、6つ以上の求人があることになります。人材不足で有名な介護サービスが3.82で、警備業はそれをはるかに上回っています。人手不足が深刻なのです。
背景には季節を問わず屋外での仕事が多いことや、24時間勤務で夜も仕事があること、万が一の事故を引き起こしたときの責任の重さ、身の危険を伴う仕事であることが潜んでいます。
しかも、給与水準が高いわけではありません。求人ボックスの調査によると、警備業の平均年収は329万円。国税庁が発表している日本人の平均給与461万円を3割近く下回る水準です。
人材の育成も重要です。警備業は警備業法で定められた教育を実施する義務があります。新任教育に20時間、現任教育に10時間のプログラムを受ける必要があるのです。確保した人材をすぐに現場に送り込むことができません。警備会社にとっては、その期間は稼働に対する対価が得られないことになります。すなわち先行投資が必要であり、ある程度の資金力がなければ続けることができません。
有望市場でも新規参入に尻込みしてしまうのは、人が主役の仕事であるにも関わらず、条件が厳しいことがあります。

安定した会社のM&Aで新規参入が可能


警備業を長く続けてきた会社は高いハードルを乗り越えており、体力のある優良企業だと言えます。警備業は高度経済成長期に需要が膨らんだ業種であり、経営者の高齢化も進んでいます。人材獲得、育成の難しさを理由に、家族や経営陣が事業承継に前向きでないケースも見受けられます。警備業への新規参入を望む声は多く、M&Aは売り手・買い手にとってメリットの高い事業承継手段です。
特に介護施設、不動産管理会社、イベント会社は警備会社とのシナジー効果が高く、警備会社の買収で安全性を高めた事業推進を行える可能性があります。

【主な警備会社のM&A】
〇アウトソーシングのアーク警備システム、アークミライズの買収
アウトソーシングは主に技術・製造系のアウトソーシングを請け負う企業です。アーク警備システムは交通誘導警備業務を行っています。アウトソーシングは営業力・採用力が強く、人材育成ノウハウも豊富です。警備会社の課題である人材不足を本業で補うことができます。警備事業の成長性、シナジー効果による課題解決。双方にとってメリットの高いM&Aと言えます。

〇セントラル警備保障が警備業のCSP東北の株式36.0%を追加取得して子会社化
CSP東北はセントラル警備保障が株式の31.0%を保有する関連会社でしたが、2021年6月に追加取得して保有比率を67.0%まで引き上げました。セントラル警備保障は、東北エリアにおいて支社、エスシーエスピー、CSP東北の3つの組織で警備事業を行っていました。CSP東北への影響力を強めることによって組織を再編し、全体最適へと繋げる狙いがあります。

〇エルテスが警備業のアサヒ安全業務社の全株式を取得
エルテスは2020年12月に鉄道関連工事の監視業務などを行うアサヒ安全業務社を買収しました。エルテスはSNSやWebによる風評被害の防止、情報漏洩リスクを軽減する仕組みを提案する専門企業。エルテスは次の成長戦略として警備業のデジタル化を掲げており、会社を買収することで検証を行う体制を整えました。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。