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半導体 2022.6.8 配信

競争の激しい海外の半導体市場で圧倒的シェアを握る検査装置などの周辺ビジネス

競争の激しい海外の半導体市場で圧倒的シェアを握る検査装置ビジネス

マスク欠陥検査装置でシェア100%を誇るレーザーテックとは?


日本の産業の中核を担うものとして「産業のコメ」と呼ばれるようになった半導体。1988年の半導体における日本のシェアは50.3%でしたが、2019年には10.0%まで低下しました。NECや東芝、日立などトップ5に食い込んでいた企業は韓国のサムスン、SKグループなどに追い抜かれてしまいました。

しかし、半導体の周辺産業で異彩を放っている日本企業があります。EUV光源を使ったマスク欠陥検査装置で100%のシェアを握るレーザーテックです。売上比率はTSMC、サムスン、インテルの3社で6割を占めており、海外展開によって成功した企業でもあります。

この記事では半導体の周辺事業で活躍する、日本のニッチトップ企業を紹介します。

高利益体質の任天堂を上回る営業利益率


レーザーテックは1960年7月に設立された、X線テレビジョンカメラの開発、設計、製造をする東京ITV研究所が前身。1963年に神奈川県川崎市に本社を移転後、磁気テープ走行中のテンションを測定する装置や、フォトマスクのピンホールを発見する半導体の検査装置を開発します。

1976年10月にLSIのマスクパタン欠陥を自動検査する「フォトマスク欠陥検査装置」を世界で初めて開発しました。1986年12月に連結子会社であるLasertec U.S.A. ,Incを設立し、アメリカ進出を果たします。

2012年3月に東京証券取引所第二部に上場。2013年に一部へと指定替えされました。2020年ごろから株式市場で注目を集めるようになりました。2019年4月9日のレーザーテックの株価は2,635円。それが2022年1月4日に36,090円をつけたのです。

注目された理由は業績が極めて好調だったからです。

 

■レーザーテックの売上高と営業利益

決算短信より筆者作成

 

2022年6月期と2021年6月期はおよそ1.5倍のペースで売上高を伸ばしています。営業利益の伸びも旺盛で、2020年6月期が前期比1.9倍、2021年6月期が1.7倍というハイペースで進捗しています。営業利益率は2019年6月期の27.6%から2020年6月期は7.8ポイントアップ。2021年6月期は更に1.7ポイント増加しました。

レーザーテックの営業利益率37.1%という数字は、IPビジネスと付加価値の高いゲーム開発で高利益体質を維持している、任天堂の34.9%を上回るものです。

レーザーテックは、高成長率、高利益率、高シェア率を獲得している優良企業です。

業績を押し上げた「ABICS」とは?


 

 

 

決算説明資料より

 

レーザーテックは戦略的に事業を成長させてきた会社です。2018年6月期までは既存事業とウェハ検査事業で着実に実績を積み上げてきました。上の図のPhase2までに該当する期間です。

しかし、半導体は日進月歩で進化する産業です。部品や製品は精密化しており、わずかな欠陥を見逃すわけにはいきません。

レーザーテックは製造現場の要望に応えるため、検査装置「EUVマスクブランクス欠陥検査/レビュー装置『ABICS』」を開発し、2017年4月に販売を開始しています。『ABICS』はインフルエンザウイルスよりも小さい数十nmという微細な欠陥を感知する精度を誇ります。

その精度の高さが世界中の半導体製造企業から高い評価を得て、販売数が加速した2019年6月期以降の業績を押し上げる結果となりました。上の図のPhase3から業績が大きく変化しているのがわかります。

日本の高い技術力や開発力を遺憾なく発揮し、成長へと結びつけた稀有な会社です。

フォトレジスト材料世界一のメーカーとして輝く会社


日本の半導体産業においてニッチトップとして輝いているのが、半導体回路形成に使用される感光材(フォトレジスト)の生産を手掛ける東洋合成工業。半導体基板に回路を描くフォトレジスト用のKrFやArFにおいては世界シェアトップの会社です。

経済産業省は世界市場のニッチ分野で勝ち抜いている企業を選定し、「グローバルニッチトップ企業」として公表しています。東洋合成工業は「感光性材料(半導体回路形成に使用されるフォトレジストの主要原料)」で選出されました。

蒸留塔の設計・設備を行っていた東洋合成工業は、オイルショックで売上高が激減。これを契機に、半導体回路形成に使用されるフォトレジスト用感光性化合物の基礎研究に着手しました。半導体黎明期だった当時、大手化学メーカーもこの分野に進出するものの、生産管理が煩雑なうえに高度な品質管理を求められたため、多くの企業が脱落したといいます。

中小企業らしい小回りを利かせた取り組みを続けたことにより、東洋合成工業は感光性材料で世界シェア50%を握るまでに成長しました。

業績も堅調です。

 

■東洋合成工業の売上高と営業利益

決算短信より筆者作成

 

2022年3月期の売上高は前期比22.0%増の331億4,400万円、営業利益は同57.3%増の46億2,400万円でした。営業利益率は前期から3.2ポイント上昇し、14.0%まで高まっています。

東洋合成工業の事業は大きく2つに分かれています。1つは感光性材料事業、もう1つは電子材料向け高純度溶剤などを扱う化成品事業です。2022年3月期の感光性材料の営業利益は前期比80.8%増の32億9,700万円、化成品事業は同18.9%増の13億2,600万円でした。感光性材料が会社全体の業績をけん引しています。

感光性材料は開発と生産管理の2つがカギを握っています。東洋合成工業は最先端技術を追求するベンチャースピリットと、安全・安定した製品を供給する大企業らしさの両面を持ち合わせた企業だと言えます。

 

半導体の検査・測定装置はM&Aが活発化している領域


レーザーテック、東洋合成工業ともに半導体黎明期から事業を続け、イノベーションを重ねることで業績を伸ばしてきました。しかし、半導体に関連する中小企業の多くは資金を開発や設備投資に回すことができず、半導体産業に要求されるスピードについていくことが難しくなっています。

資本力のある会社の傘下に入り、事業の安定性を確保する企業も少なくありません。M&Aは会社の存続や事業の発展、海外進出への後押しとなる可能性があります。

 

【半導体関連の主なM&A】

〇あいホールディングスがナノ・ソルテックを子会社化

セキュリティ機器や事務用機器などを開発するあいホールディングスが、2022年2月にナノ・ソルテックの株式を取得して子会社化しました。ナノ・ソルテックは半導体の検査・計測装置を新品同様のスペックにまで復元する技術を持っています。

電気自動車に用いられる350nmクラスの半導体製造には20年以上前の中古品が多く使われており、ナノ・ソルテックが提供するサービスの需要が中長期的に衰えることがないと判断しての買収です。

 

〇ブイ・テクノロジーがイーエフイーを子会社化

半導体やディスプレイを製造するブイ・テクノロジーが半導体検査や測定装置の搬入・メンテナンスなどを行うイーエフイーを2022年5月に買収しました。ブイ・テクノロジーは12インチから8インチまでの様々な検査装置需要を積極的に取り込んでおり、イーエフイーの事業とシナジー効果が高いと判断しました。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。