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半導体・製造 2023.3.15 配信

ダイナミックに変貌を遂げようとする日本の半導体産業

著作者:rawpixel.com/出典:Freepik

ダイナミックに変貌を遂げようとする日本の半導体産業

2nmのロジック半導体を量産化するスーパー企業


日本の半導体産業が大変革を遂げようとしています。NTTやトヨタ自動車、ソニーグループなど8社が出資した新会社ラピダスの誕生です。

ラピダスは、2027年を目処に2nm以下の最先端ロジック半導体の量産を目指すという野心的な目標を掲げています。

2nmのロジック半導体は米IBMでも量産技術を持ち合わせない、超最先端技術を駆使したもの。ラピダスに勝算はあるのでしょうか?

日本に新たに誕生したラピダスとは?


ラピダスは以下8つの企業が共同で出資しています。

 

・トヨタ自動車
・デンソー
・ソニーグループ
・NTT
・NEC
・ソフトバンク
・キオクシア
・三菱UFJ銀行

 

三菱UFJ銀行が3億円、その他の会社がそれぞれ10億円を出資しています。それを基に計算すると、出資総額は73億円。三菱UFJ銀行が4.1%、その他の会社がそれぞれ13.7%の出資比率となります。

その他、日本政府はラピダスに対して700億円の補助金の支給を決定しており、官民あげての大事業となります。

 

日本は半導体技術で世界トップに立っていたものの、1980年代にアメリカとの間で半導体摩擦が生じ、競争力を失った経緯があります。日本は現在、40nmの半導体しか作ることができず、世界のトップ企業から大きく遅れをとりました。

半導体製造を行う台湾のTSMCはこの技術で他社の追随を許しません。しかし、台湾を併合したい中国の存在など、地政学的な脅威が本格化しました。

 

ラピダスはIBMから技術協力を受け、協力体制を敷いて2nm半導体の大量生産化を目指しています。技術提供の打診をしたのはIBMだと言われています。半導体製造が台湾に集中した場合、将来的な脅威が避けられないと考えているためです。

半導体製造といえば、TSMC以外にサムスン電子があります。しかし、韓国も北朝鮮に隣接しているという危うい立ち位置にあります。

 

アメリカと日本は、40年近い時を経て、半導体技術で共同歩調をとりました。

2nmのロジック半導体は何が凄いのか?


なぜ、2nmのロジック半導体にこだわっているのでしょうか。

2nmの半導体は500億個のトランジスタを、指の爪にのせるほどの大きさに集約することができます。従来の7nmのものと比較して、45%の性能向上、75%の電力削減が行えます。スマートフォンのバッテリー寿命を4倍に引き上げられるという代物です。

 

もし、量産化に成功して人々の生活に入り込んでくれば、スマートフォンの長時間の利用、ノートPCの高速化、自動運転車の性能向上、データセンターの二酸化炭素排出量削減などが行えます。自動運転技術の向上など、正に次世代の生活に欠かせないものとなります。

 

ラピダスの出資者にトヨタ自動車やソニー、NTT、ソフトバンクなどの先端技術を必要としている会社が名を連ねているのはそのためです。

 

TSMCは3nm半導体チップの量産化をすでに整えていると言われており、2023年1月にその製造拠点である工場の式典を開催しました。2nmの技術をどこまで開発しているのかはわかりませんが、2025年を目処に量産化を開始するとしています。

TSMCが熊本に工場を設立した理由


国内の半導体産業における動きとして、ラピダスと同じく業界を驚かせたのが、TSMCの熊本工場の建設でした。2024年に稼働する計画を立てています。

この工場では22nmと28nmの半導体が製造され、ソニーのイメージセンサーや、トヨタ自動車の車載半導体が供給される見通しです。

 

工場の建設プロジェクトは8,000億円程度と言われていますが、4,500億円程度を日本が補助する方向で調整しています。外国企業の工場の誘致にこれだけの補助金を出すのは異例。TSMCはアメリアのアリゾナ州にも工場を建設する計画を立てており、補助金の支給を表明しています。

しかし、アメリカの工場は5nmという日本とは比べ物にならないほど、技術力の高い製品を作り出す計画です。

 

22nmの半導体であってもこれほどの補助金を出す背景には、日本が40nmまでの量産体制しかない半導体後進国になってしまったことや、TSMCで半導体エンジニアを育成できること、国内での半導体不足解消、地政学リスクの部分的な解消など、メリットが大きいと判断したためでしょう。

 

特に半導体関連のエンジニアを育成することは、日本にとっての大きなプラス要因になると考えられています。

半導体のM&Aは?


ダイナミックに変革する半導体産業。ソフトバンクグループが買収したArmをアメリカで上場させる計画が持ち上がるなど、大型のM&Aやエグジットが活発に行われています。

 

国内では中堅企業のM&Aが目立ちます。

 

【日清紡ホールディングスのディー・クルー・テクノロジーズの買収】
自動車部品や化学品などを扱う日清紡ホールディングスは、エレコム傘下のディー・クルー・テクノロジーズを2022年7月に完全子会社化しました。

ディー・クルー・テクノロジーズは、モジュール基盤設計からソフトウェアの開発まで、一貫した開発体制を持っています。また、AIや量子コンピューターの開発経験があり、高付加価値製品の開発にも期待ができます。

日清紡は、2022年1月にグループ会社の新日本無線とリコー電子デバイスが統合し、日清紡マイクロデバイスを発足させていました。この会社はマイクロ波電子管や半導体を製造しています。ディー・クルー・テクノロジーズの買収で、技術や人的リソースを有効に活用するとしています。

 

【ミツミ電機のオムロン半導体工場の譲受】

半導体デバイスや光デバイスなどを扱うミツミ電機は、オムロンの半導体工場を2021年6月に譲受しました。

ミツミ電子は、8つの主力サービスを展開しており、そのうちの1つがアナログ半導体。アナログ半導体は電源ICやタイマーICなどに活用されており、自動車・医療機器などに搭載されています。

ミツミ電機は半導体の前工程と後工程の工場をそれぞれ2拠点保有しているものの、生産能力不足が目立っていました。

工場を取得して100億円超の投資を行い、月産2万枚の8インチウェハの生産体制を構築しました。

工場には更なる拡張余地があり、需要に応じて生産体制を広げるとしています。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。