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M&A一般 2024.5.8 配信

【M&A検討中の経営者必見】売り手側がM&Aの仲介会社を選ぶポイントは? シリーズ②

【M&A検討中の経営者必見】売り手側がM&Aの仲介会社を選ぶポイントは? シリーズ②

売り手が最も気にかける譲渡金の割り出し方は?


M&Aは仲介会社によって譲渡価額が異なることがあります。これは事業活動の結果として得られる業績が毎年変動することや、ブランド・営業権・知的財産権などの無形資産を適切に評価するのが極めて難しいため。業界動向にも左右されることがあり、一筋縄ではいきません。

 

売り手側にとってM&Aの成功は多額の譲渡金を得ることではありません。譲渡後も成長できる最良のパートナーを探すことです。

しかし、企業価値の基本的な算出方法やプロセスを知り、仲介会社の手数料の種類を把握することで、M&A仲介会社を選ぶ際の参考になり、サポートを行うコンサルタントの話す内容も理解しやすくなるはずです。

 

この記事では、企業価値を決める方法と手数料の種類を詳しく解説します。

企業価値を算出する3つのアプローチ


非上場企業は市場の価値を知る術がないため、客観的な評価を下すことが簡単ではありません。ただし、M&Aの実務においては企業価値評価を算出することが必要であり、特定のアプローチ方法を使うことで合理的な評価を行うことができます。

 

基本的なアプローチ方法は以下の3つです。

 

・コストアプローチ:資産と負債を基準とする方法
・マーケットアプローチ:市場を基準とする方法
・インカムアプローチ:収益またはキャッシュフローを基準とする方法

 

これらのアプローチ方法から、更に細分化された手法を活用します。

目に見えやすい純資産を使うコストアプローチ


コストアプローチは純資産を基準としたアプローチ方法です。決算情報(貸借対照表)を基にした客観的評価を行うことができます。中小企業のM&Aにおいては、よく使われています。

以下のような手法が用いられます。

 

・簿価純資産法
・時価純資産法

 

簿価純資産法は、貸借対照表の簿価を基準に企業価値を算出します。シンプルで分かりやすいですが、決算書に出ている数字をそのまま使うため、過去に取得した不動産が持つ価値などを適切に評価することが困難です。

簿価と時価の評価が乖離している場合、納得しづらいと感じることがあるかもしれません。

 

時価純資産法は、純資産額を時価評価して企業価値を算出します。会社が保有する資産と負債を基準日時点の時価に換算し、資産から負債を差し引くのです。土地や有価証券などの市場価値が加味されるため、資産を多く保有する企業の経営者は納得しやすい内容となるでしょう。

 

コストアプローチはシンプルである点が特徴。また、将来の見通しが不確定な企業でも一定の評価が得られるというメリットもあります。

同じ業種やビジネスモデルで価値を算出するマーケットアプローチ


マーケットアプローチは、株式市場やM&A市場の取引価額を基準とするアプローチ方法です。客観的で納得感のある企業価値算出方法ですが、同じビジネスモデルや業種で同規模の会社が市場にあるかどうかがポイントになります。

以下のような手法があります。

 

・類似企業比較法
・類似取引比準法

 

類似企業比較法は、企業の事業内容、業種、企業規模、収益性が似通った上場企業を複数選出し、財務上の数字を基に企業価値を算出します。

EV/EBITDA倍率が頻繁に使われます。これは事業価値がEBITDAの何倍とされているかを表す指標。事業価値がEBITDAの何年分で賄えるのかを算出します。同類の会社の最大値や最小値、平均値などを割り出し、対象企業に当てはめます。

なお、EV(事業価値)は「企業の株式時価総額+ネット有利子負債」で算出されます。

 

類似取引比準法は、同一業界で行われたM&Aを基準とするものです。譲渡価額や財務指標を基に取引倍率を算出。企業価値を割り出します。

 

マーケットアプローチは市場原理を取り入れることができ、収益性や将来性も加味した客観的な価値を割り出しやすいという特徴があります。しかし、同業種・同規模で同じビジネスモデルの会社を見つける必要があります。

特殊な事業を行っていたり、規模が大きくない会社には適用できません。

収益性を考慮するインカムアプローチ


インカムアプローチは、将来的に見込めるキャッシュフローや収益を基に企業価値を算出するアプローチ方法です。対象となる会社の将来的な収益に注目しており、成長性を加味して評価することができますが、算出する人の恣意性が入りやすいという特徴があります。

以下のような手法があります。

 

・DCF法
・収益還元法

 

DCF法は対象となる企業の財務状況と事業計画から将来的に期待できるキャッシュフローを割り出し、一定の割引率を当てはめて現在価値を算出します。

金利などの資金調達環境や業界特有の商環境の変化など、多様なシナリオを用意して評価を算出することができます。

しかし、計算プロセスが複雑で割引率の多少の変化が企業価値に多大な影響を及ぼすなど、算出する側の客観性の担保が難しいなどのデメリットがあります。

 

収益還元法は将来的な利益を基に価値を算出する方法です。この方法は予想利益が同額であるという仮定で進められるため、DCF法よりも硬直的な評価方法です。実務で使われることはほとんどありません。

 

インカムアプローチは、将来的な成長に期待できるスタートアップの買収などで使われることが多い方法です。

手数料にはどのような種類があるのか?


仲介手数料には以下のような種類があります。相談料や月額固定料など、仲介会社によっては発生しないものも多くあります。

成功報酬は最終契約締結後に支払うものです。多くの仲介会社ではレーマン方式を導入しています。

 

【経済産業省公表の「中小M&Aガイドライン」に記載されているレーマン方式の手数料】
・基準額5億円までの部分:5%
・基準額5億円超~10億円の部分:4%
・基準額10億円~50億円の部分:3%
・基準額50億円~100億円の部分:2%
・基準額100億円超の部分:1%

 

注意したいのは、レーマン方式の基準額の中身。「株式価値」、「移動総資産」、「企業価値」など、様々なケースがあります。

株式価格が2億円、有利子負債が2億円、その他負債が1億円の会社があった場合、企業価値(株式価格2億円+有利子負債2億円)は4億円。手数料(5%)は2,000万円となります。

移動総資産(株式価値2億円+有利子負債2億円+その他負債1億円)は5億円で、手数料(5%)は2,500万円となります。

レーマン方式を採用している会社であれば、基準額の内容も確認するとよいでしょう。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。