トップページ
案件情報
M&Aとは
M&Aオールが選ばれる理由
業界特化M&A
ご相談の流れ・料金
M&Aの実例・インタビュー M&Aコラム よくあるご質問
まずはお気軽にご相談ください
飲食・食品 2023.4.26 配信

オイシックスがシダックスをグループ会社化!進化する給食業界の最前線

オイシックスがシダックスをグループ会社化!進化する給食業界の最前線

給食業界の巨人が新興宅食会社の傘下に


注目を集めていた、オイシックス・ラ・大地によるシダックスのTOBが2022年10月24日に成立しました。買い付け予定数の下限である1,479万2,959株を上回る1,558万2,759株の応募がありました。

これにより、オイシックスはシダックスの株式を28.47%保有する筆頭株主となり、同時に持分法適用会社化しました。

カラオケ事業を売却したシダックスは、学校や保育園に食を提供する給食サービスが主力。M&Aで大地を守る会やらでぃっしゅぼーやを子会社化したオイシックスは、次なる注力事業に給食を挙げていました。

 

食に関連する企業が事業を安定させる目的で、給食事業へと乗り出すケースは数多く見られます。また、生産性を向上させるために同業者同士のM&Aも目立ちます。給食業界の最前線を解説します。

波乱含みだったオイシックスによるTOB


オイシックスによる株式の取得は一筋縄ではいきませんでした。経営陣が主力の給食事業を骨抜きにされることを恐れたためです。

このM&Aは複雑で、TOBという形をとりながら、ほとんどの株式は投資ファンドのユニゾン・キャピタルから譲り受けました。

経営が傾いたシダックスは、2019年5月にユニゾン・キャピタルからの支援を受けました。その時に普通株に転換できるB種優先株を発行しています。シダックスはこの第三者割当増資によって65億円を調達しました。

 

オイシックスが買い取りを希望したのは、このB種優先株。普通株に転換すると、保有比率は27%超にも上るものでした。オイシックスが公開買付という形で買い取った理由は、投資ファンドが売却価格をつり上げる機会を得る目的があったものと考えられます。

今回のケースのように経営陣と買い付け希望者の意向に相違が生じた場合、経営陣側にホワイトナイトがついて価格がセリを行うように上昇することがあるためです。

実際、「牛角」などを運営するコロワイドが買い付けを希望しているとの発表もありました(その後、取り下げています)。

 

それくらい、シダックスの給食事業は魅力があります。520カ所の公立小中学校に対し、1日72万食の給食を提供しています。また、社員食堂や病院・高齢者施設向けの食事も提供しています。

2020年はコロナ禍で学校などを中心に行動制限が課されましたが、2021年3月期の給食事業は22億4,700万円の営業利益を出しています。赤字に陥ることはありませんでした。

これは、シダックスが学校だけでなく、会社や病院など、幅広く食を提供していたことも関係しています。シダックスは経営資源を給食事業に集めることで、見事な復活を遂げていたのです。

宅食事業の頭打ちで成長力が弱まったオイシックス


オイシックスは宅食分野で業界をけん引する会社に成長しました。コロナ禍で外食を控える動きが広がり、2021年3月期の売上高は前期比40.9%増の1,000億6,100万円に急伸しました。

しかし、そこから伸び悩みが鮮明となり、2023年3月期の売上高は前期比5.8%増の1,200億円を見込んでいます。

 

成長戦略の一つとして掲げたのが、BtoCからBtoB領域への本格参入。給食事業でした。

シダックスをグループ傘下に収めたオイシックスは、代表取締役の髙島宏平氏を、シダックスの社外取締役として送り込みました。

オイシックスは保育・高齢者施設などのメディカル領域において、得意とするミールキットを献立に盛り込み、提供する食事の質を上げる取り組みを開始します。高付加価値商品が提供できれば、利益率の高いサービスへと進化する可能性があります。

 

オイシックスは2024年3月期上期から、テストマーケティングを実施すると発表しています。給食は単なる食の提供だけでなく、別の会社とタッグを組むことで高付加価値の商品を生み出すサービスへと進化しました。2社の取り組みは注目すべきものとなるでしょう。

給食業界が抱える経営課題とは?


給食業界が抱える経営課題は3つあります。食材原価が高騰していること、生産性向上が図りづらいこと、安全管理を徹底しなければならないことです。

 

安全管理に関しては多くの企業で取り組みが進んでおり、学校給食における食中毒の発生件数は減少傾向にあります。安全に対する意識は、経営者だけでなく、流通事業者から最前線の現場に立つ人にまで浸透しつつあります。

解決が難しいのが、食材原価の高騰と生産性の向上です。

 

解決策の一つとされているのが、M&Aによる規模の拡大。給食事業はスケールメリットが働きやすく、大量仕入れ、配送網の集約、基幹システムの統合などにより、原価の低減や効率化を図りやすいという特徴があります。

 

そのため、食を扱う企業が給食事業を展開したり、給食事業者同士のM&Aが活発に行われています。

進行する業界再編の波


給食業界の主なM&Aを紹介します。

 

【一富士フードサービスと日京クリエイトの合併】

業界最大手の一つ、日清医療食品のグループ会社である一富士フードサービスと、日京クリエイトが2021年4月に合併しました。一富士フードサービスが承継会社となり、新たなスタートを切りました。

この合併は人材などの経営資源を有効活用することが目的。合併は経営体制や部署、仕入先、システムなどを統合します。

合併によって生産性の向上を図りました。

 

【レパストが食品工場を取得】

2020年11月に給食事業を展開するレパストが、弁当の製造などを行うマシモの食品工場を取得しました。レパストはマシモの工場と従業員を引き継ぎ、弁当製造ノウハウを吸収。給食事業にその技術を活かして付加価値の高いサービスを提供します。

また、大手食品小売事業との取引の拡大、PB商品開発など、事業の拡大を狙っています。

 

【学習塾の京進が給食事業へと参入】

学習塾を展開する京進が、2019年4月に給食事業のリッチを連結子会社化しました。京進は2017年6月に高齢者施設運営を行うシンセリティグループを買収していました。介護食を中心としたサービスと、リッチの給食事業とのシナジー効果を高めます。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。