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保育・教育 2023.4.5 配信

講師不足が学習塾業界最大の課題!M&Aがその課題解決に結びつくか

講師不足が学習塾業界最大の課題!M&Aがその課題解決に結びつくか

学習塾の経営者の頭を悩ませる3つの課題とは?


学習塾は新型コロナウイルス感染拡大の影響を強く受けた業界の一つ。対面型の講義が一時的に行えなくなり、授業料の返金・割引などの措置を取らざるを得なくなりました。

2020年は停滞していましたが、これをきっかけとしてオンライン化、デジタル教材の導入が進みました。2023年4月からはコロナ禍の負の影響を脱し、デジタルを活用した質の高いサービスを提供できるようになるでしょう。

 

しかし、この業界には長年にわたって経営者の頭を悩ませている課題が3つあります。

 

1.塾講師の不足
2.集客の苦戦
3.脆弱な教室運営体制

 

これらが課題となっている本質を見極めた上で、具体的な解決策を見出さなければなりません。

「タイパ」重視の時代に合わなくなった塾講師の仕事


■学習塾・予備校市場規模推移

※矢野経済研究所「学習塾・予備校市場に関する調査を実施(2021年)」より

 

矢野経済研究所によると、2021年度の学習塾の市場規模は9,690億円を見込んでいます。前年比4.9%の増加です。

ただし、2020年は前年比4.9%の減少でした。2021年からはコロナ前の2019年の水準に戻ったことになります。

 

日本国内では少子高齢化が深刻化していますが、教育への意識の高まりや、一部家庭での受験競争の激化によって市場規模は微増、横這いが続いていました。市場が旺盛に拡大しているというよりは、大中小規模の様々な教室が生徒獲得に奔走しているというのが実情です。

 

どの塾においても、最も苦戦しているのが講師の獲得です。かつて塾の講師は高単価のアルバイトとして、有名大学の学生が押しかけていました。しかし、時代は大きく変わりました。

現在、時給が低いと言われる飲食店でも、都内であれば時給1,500円というケースも少なくありません。

 

しかも、優秀な学生であればあるほど、早い段階で経営コンサルティング会社や投資ファンド、広告代理店、スタートアップなどでインターンを経験しようとします。

タイムパフォーマンスを追求する「タイパ」という言葉が若者の間で使われていますが、学生は希望する会社に最短の方法で辿り着こうとしているのです。そうなると、学習塾がいくら時給を上げても優秀な大学生は集まりません。

 

また、塾講師は教えるのに必要なノウハウの研究や資料の作成には時給が支払われないことがほとんど。そうなると、コストパフォーマンスも悪いと判断されてしまいます。

講師不足は中長期的に学習塾を苦しめるでしょう。

塾講師の減少を食い止めてV字回復を成し遂げた価値共創ビジネスとは?


学習塾の大手、東京個別指導学院もかつて塾講師の減少に悩んでいました。しかし、2014年度から見事なV字回復を成し遂げます。

 

■講師数の年間平均人数

決算説明資料より

 

東京個別指導学院が取り組んだ内容が、大学生との価値共創ビジネス。これは塾講師として活躍する大学生を、単なるアルバイトとして扱うのではなく、会社と講師が顧客価値や社会価値、経済価値を共に作ろうとするものです。

 

講師が所属する教室それぞれが年間計画を立て、PDCAを回すのです。学生は教室を経営している感覚で仕事ができます。それを報告し合うことで、ビジネスアイデアを持ち寄ることができます。

会社として、5,000人の講師がオンライン上で学び合う場を提供し、活発な意見交換ができるようにしています。

 

インターンは就業経験ができ、就職に有利になることが最大のメリットです。東京個別指導学院はアルバイトに経営という要素を取り入れ、一歩先を行きました。講師として活躍した人は、面接で有利になるだけでなく、経営やビジネス感覚を養うことができます。

 

裏を返すと、ここまでのパラダイムシフトを起こし、講師が活躍できる仕組みを用意しなければ、優秀な大学生を獲得することができません。

高額な集客用のポータルサイトが利益を圧迫


中小の教室は特に集客にも苦戦しています。大手企業は莫大な広告費をかけて認知度を上げ、集客力を強化しています。

明光義塾の明光ネットワークジャパンは年間15~20億円の広告宣伝費、販売促進費を投じています。販管費全体のおよそ半分に当たります。

 

小規模の教室はマス広告が使えないため、Webでの集客が中心になります。学習塾向けのポータルサイトは固定の掲載費が高額で、資料請求や入塾による成果報酬も発生します。

その他にGoogle検索で上位に表示するリスティング広告がありますが、組織内に使いこなせる人が少ないと、効果を高めることができません。

Web集客は知識が求められ、難易度の高い施策です。

 

教室によってはデジタル化が進んでおらず、生産効率が悪いケースも見られます。これは教育業界全体がデジタル化に馴染んでおらず、全体的に後れを取ったことが背景にあります。

教室の運営体制は決して円滑とは言えず、集客にまで手が回らないということも少なくありません。

活発化する塾同士のM&A


講師不足の解消や教室の規模拡大、集客と組織体制の効率化を図る手段の一つがM&Aです。

 

学習塾は規模のメリットが生じやすいビジネスです。大手企業はマス広告で効率よく生徒を集めることができます。管理システムによって教室の運営体制は効率化が図れ、学習に有効なノウハウが生まれれば、瞬時にすべての教室に流し込むことができます。

 

知名度の高い学習塾であるほど、講師も集まりやすくなります。東京個別指導学院のような取り組みも行えるかもしれません。

 

【ベネッセが京都洛西予備校を子会社化】

ベネッセホールディングスは2023年3月に、京都洛西予備校の全株式を取得する株式譲渡契約を締結しました。京都洛西予備校は京都市内を中心に小中高校生向けの学習塾「洛西進学教室」を運営しています。京都では知名度が高く、高校受験などでの高い実績を持っていました。

ベネッセは進研ゼミ個別指導教室などの学習塾を展開しています。今回の買収により、京都エリアの拠点数の拡大を図りました。

 

【ナガセがヒューマレッジを買収】

東進ハイスクール、東進衛生予備校、四谷大塚などを運営するナガセが、小・中・高を対象とした学習塾を運営する「木村塾」のヒューマレッジの全株を2023年1月に取得しました。

ヒューマレッジは34校舎で9,000名の生徒数を抱えています。ナガセは全国展開を目指しており、ヒューマレッジの指導ノウハウを取り入れ、生徒数の更なる獲得に邁進します。

 

【ウィザスがBlue Sky FCを子会社化】

近畿地方を中心に集団指導塾「第一ゼミナール」を展開するウィザスは、2022年2月にBlue Sky FCの全株を取得することで合意しました。Blue Sky FCは小中学生向けに「個別指導まなび」を30教室展開していました。

ウィザスの買収は学習塾事業のドミナント戦略の一環。塾講師などの人員や、教室などの最適化を図る狙いがあります。学習塾は特にドミナントの効果が出やすい業種の一つです。

 

【英進館がビーシー・イングスの全株を取得】

九州を中心に学習塾を展開する英進館が、中国地方で最大規模のビーシー・イングスを2021年10月に買収しました。

このM&Aにより、英進館は九州から中国地方へとエリアを拡大しました。

ビーシー・イングスは生徒数が1万3,000人以上の知名度が高い学習塾。株式の大半はファンドが保有しており、一時は上場の話もありましたが、コロナ禍でビジネス環境が激変。相互補完が望める英進館への売却を選択しました。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。