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保育・教育 2022.11.30 配信

社会福祉法人のM&Aは可能?保育園をM&Aする際に抑えるべきポイント

社会福祉法人のM&Aは可能?保育園をM&Aする際に抑えるべきポイント

社会福祉法人と株式会社の違いを知ろう


私営の保育園は社会福祉法人や株式会社、NPO法人などによって運営されています。もともとは社会福祉法人に限られていましたが、待機児童を解消する目的で2000年にその制限が撤廃されました。

それによって民間企業が保育園の運営に乗り出しましたが、2019年1月に内閣府が発表した調査によると、保育園の運営主体は社会福祉法人が86.9%、株式会社が4.9%、学校法人が2.8%、その他が5.4%で社会福祉法人が大部分を占めています。

 

M&Aで保育園の運営に乗り出したいと考えている経営者にとって、社会福祉法人の買収というのはイメージを持ちづらいかもしれません。この記事では、社会福祉法人をM&Aを行う際の注意点を解説します。

社会福祉法人の方がベテランスタッフが多い?


まずは社会福祉法人と株式会社の違いを抑えましょう。2つの組織の違いは大きく2つに集約できます。

 

・運営目的
・運営内容

 

社会福祉法人は社会福祉事業を行うことを目的としています。株式会社は事業によって利益を出し、株主に還元することを目的としています。社会福祉法人は非営利であり、株式会社は営利目的で運営されます。

社会福祉法人は補助金や寄付金によって運営資金を調達するため、国や都道府県の監督官庁、評議員会のチェックが行われ、経営状態や運営状況を審査されます。

株式会社は経営者の裁量に任されているため、自由度の高い保育園を運営できます。

 

どちらが優れているということはありません。ただし、社会福祉法人は国や自治体の監督のもとで運営されているため、クセのない保育園が多く見られます。安定的な運営をしているとも言い換えられるでしょう。

株式会社は経営者や管理職の方針や考え方が反映されるため、独自色の強い保育園が目立ちます。

 

また、株式会社の参入は2000年から許可されたため、歴史が浅いという特徴があります。そのため、社会福祉法人はベテラン職員の比率が高い傾向があると言われています。

若手保育士の中には、安定的に働けることや指導が行き届いていること、福利厚生が充実していることから社会福祉法人を好んで選択する人もいます。

M&Aにおいて、社会福祉法人を選択するメリットが多いにあります。

社会福祉法人のM&Aは事業譲渡が基本


社会福祉法人を買収するには、事業譲渡を行うのが一般的です。それ以外の方法に合併がありますが、その場合は社会福祉法人同士である必要があり、株式会社が買収する手段においては選択肢に入りません。

 

厚生労働省は2020年9月に社会福祉法人の合併や事業譲渡の手続きや留意点を整理するため、「社会福祉法人の事業展開に係るガイドライン」を策定しました。更にM&Aを円滑に行えるよう「合併・事業譲渡等マニュアル」を公表しています。実務レベルではこのマニュアルに従って進めます。

 

気になるのは、社会福祉法人のM&Aの対価。社会福祉法人は剰余金において、法人外への対価性のない支出は認めていません。

ただし、事業譲渡の場合は、譲渡する法人が譲渡事業の価値を見積もり、少なくともその価値以上の受取対価でなければ、法人外への資金流出に該当する旨がマニュアルに記載されています。

また、事業価値を算出するに当たり、事業計画を加味することが求められており、将来の収益力も見積もったうえで価値算出することが妥当としています。

 

※厚生労働省「合併・事業譲渡等マニュアル」より

 

社会福祉法人のM&Aを実施する場合、許認可の観点から行政庁への事前相談を行う必要があります。株式譲渡でM&Aを行う場合よりも、手続きが煩雑になることは抑えておきましょう。

 

事業譲渡で忘れてはならないのが、職員への対応。株式譲渡とは違い、事業譲渡は再雇用契約をスタッフ全員と結ぶ必要があります。全員に対してM&Aを実施することを説明し、新たな体制で再スタートすることを納得してもらわなければなりません。

保育士にとってM&Aは不安要素にもなりかねません。組織の買収という行為そのものの認知度が低く、運営方針が大きく変わるのではないかと心配になるのです。

 

M&A前と後とで基本的には変わらないことを説明し、不安を払拭してください。

社会福祉法人のM&Aは株式譲渡と根本的に違うものと考えて行動を


社会福祉法人を株式会社が買収する場合は、事業譲渡が基本的な進め方になります。

事業譲渡は従業員の雇用契約や取引先との契約、賃貸契約などを結びなおす必要があります。株式譲渡よりも手続きが煩雑になります。また、社会福祉法人の保育園は認可に関連する国や自治体とのやり取りが必須となり、連携して進めます。

それだけの時間や手間がかかることを理解しておきましょう。

 

上場企業において、保育園を運営する社会福祉法人の目立ったM&Aはまだありません。ただし、保育園を運営する会社を買収し、保育業界に進出する会社は数多くあります。

 

2020年8月に物流大手センコーグループホールディングスが、認可保育所などを運営するプロケアの全株式を取得しました。買収当時、プロケアは保育所を29カ所、学童クラブを23カ所運営していました。

センコーグループは2016年から介護や家事代行など生活支援事業へと進出。物流事業とは別の事業を立ち上げて収益基盤の拡大を図っていました。保育園の運営はその一環です。生活支援事業内での人材交流など、様々なシナジーが見込めます。

また、保育園を子会社化することにより、自社の社員を保育園に預けやすくすることができ、本業の物流事業における人材確保、定着にも繋がります。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。