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飲食・食品 2022.12.14 配信

値上げと客離れの難しい判断に迫られる回転ずし業界

値上げと客離れの難しい判断に迫られる回転ずし業界

業界トップのスシローが客数を2割落とす


回転ずし大手スシローに大異変が起こっています。2022年11月の既存店客数が前年同月比で2割以上減少したのです。

スシローは10月1日から値上げを行いました。110円の皿は120円に、165円は180円、330円は360円にするという内容。値上げ幅は大きくありませんが、客離れが進行しています。

 

まぐろなどの水産品の価格は宴会需要の消失によって抑えられているものの、エネルギー価格高騰による物流費、電気代等が店舗の利益を圧迫しています。

原価率の高い回転ずし店は、コスト高を価格に転嫁するほかありませんが、スシローのように急速な客離れを引き起こしかねません。難しい経営判断を迫られています。

値下げでの客引きは限界か


10月に値上げをしたのは、スシローの競合くら寿司も同じ。しかし、スシローの客数への影響は甚大でした。

※各社月次報告書より

 

くら寿司の10月の既存店客数は0.5%、11月は8.4%の減少でした。スシローは10月が20.1%、11月が26.9%の減少でした。2か月連続で2割以上減少しています。

 

大幅に減少した要因は大きく2つあると考えられます。1つは2022年6月に消費者庁から「うに」のキャンペーンがおとり広告であると指摘され、措置命令が下ったこと。これによって消費者からの信頼を失いました。

もう1つはスシローが価格に頼ったマーケティングを続けていたこと。これによって価格重視の顧客が集まるようになっていました。

ブランドに対するファンが多い飲食店の場合、わずかな値上げはさほど客数に影響しません。また、くら寿司のように人気アニメーションなどとのコラボレーション企画を継続的に実施している場合、値上げによる影響を緩和することがあります。

 

スシローがおとり広告だと指摘されたのも、うにが110円で食べられるという価格訴求のものでした。それによって品切れが続出し、提供できなくなったのです。マーケティングはブランドのファンを作ることが目的ですが、スシローにはその観点が欠けていました。

上昇し続けるアルバイトの時給


多くの回転ずしチェーンは協力金や助成金、融資によってコロナ禍を乗り越えることができましたが、2022年4月以降は協力金が得られなくなりました。その影響は甚大です。

 

スシローは2022年9月期に101億2,300万円の営業利益を出していますが、営業収益以外に45億5,800万円の「その他収益」を計上しています。この大部分が時短協力金だと考えられます。なお、スシローは国際会計基準であるIFRSを採用しているため、営業外収益を営業利益の中に入れて計算しています。

 

くら寿司は2022年10月期第3四半期において、29億8,900万円の経常利益を出していますが、助成金収入を30億9,400万円得ています。もし、国や自治体からの援助がなければ、くら寿司は赤字です。

 

更に店舗の運営コストも上がっています。電気代、ガソリン代(輸送代)はもちろんですが、深刻なのはアルバイトを中心とした人件費の高騰。ジョブズリサーチセンターによると、2022年10月の三大都市圏の10月の平均時給は1,151円。前年同月比34円の上昇です。2022年はすべての月で昨年よりも平均時給が上がっています。

 

かつて大学生のアルバイト先として人気だった飲食店ですが、現在はベンチャー企業や大手企業のインターン、アルバイトに人気が集まっています。これは、将来の就職を意識した職場を求めるようになったためです。企業も優秀な学生を獲得したいと考えるようになり、採用に積極的になりました。

 

アルバイトが店舗運営の基本である回転ずし店は、人手不足に悩まされています。

 

マーケティング活動もWebが中心となり、SNSなどを駆使した認知活動が求められます。飲食店の経営者は職人気質の人も多く、ITに馴染みがない人も少なくありません。しかし、新規客を呼び込むには、Webマーケティングを早い段階で行う必要があります。認知を広げるためには計画的な行動を起こす必要があるからです。

販促活動のIT化が進まないことも課題として浮彫になってきました。

倒産件数は5年ぶりの増加へ


東京商工リサーチによると、2020年4月~2021年1月までのすし店の倒産件数は28件。2019年の22件から6件増加しました。コロナ禍で生き残りを諦め、廃業を選択する経営者が増えています。

しかし、飲食店の廃業は従業員を路頭に迷わせることにもなり、最良の選択とは言えません。また、会社を清算しても飲食店の資産価値は低い傾向があります。経年劣化が進んでいるためです。

 

選択肢の一つとなるのがM&Aです。会社を売却することで、店舗を永続することができます。もちろん、従業員を解雇する必要はありません。

すし店ではありませんが、2021年12月に北海道旭川市の老舗ジンギスカン店「成吉思汗(ジンギスカン)大黒屋」が、カレー店大手の壱番屋に買収されました。大黒屋は地元の人々や観光客に愛されるお店ですが、事業承継問題に悩んでいました。

資本力のある壱番屋は、大黒屋を全国的なブランドにするといいます。

 

このように、1店舗だけを運営する小さな会社であっても、大手企業からは歓迎されることが少なくありません。老舗のブランド力を必要としているからです。

客数の減少、事業承継で悩んでいる飲食店は、M&Aによって課題が解決することもあります。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。