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保育・教育 2024.5.22 配信

2024年児童福祉法改正! 保育士の仕事が増えて保育園の運営に支障が出る?

2024年児童福祉法改正! 保育士の仕事が増えて保育園の運営に支障が出る?

児童虐待の相談件数増加が改正を後押し


2024年4月に児童福祉法が一部改正されました。

今回の法改正のポイントは、子育て世帯に対する支援の強化・拡充が行われることです。新たに「こども家庭センター」が設置され、相談支援機関が整備されます。

保育園で働く保育士は、家庭支援の業務が増えると予想されています。子育て世帯が相談しやすい相談支援機関を保育園に整備することが求められるためです。

 

国内の少子化は予想を超えるスピードで進んでおり、近い将来に保育園の過剰問題が顕在化すると見られています。保育士の業務に家庭支援の強化が加わって保育所の運営負荷が高まると、事業継続を断念することにもなりかねません。保育業界の再編も視野に入ります。

保育士は「こども家庭センター」と連携を強化して子育て支援を行う


2024年の児童福祉法改正の概要は、以下の7つに集約できます。

 

1.子育て世帯に対する包括的な支援のための体制強化及び事業の拡充
2.一時保護所及び児童相談所による児童への処遇や支援、困難を抱える妊産婦等への支援の質の向上
3.社会的養育経験者・障害児入所施設の入所児童等に対する自立支援の強化
4.児童の意見聴取等の仕組みの整備
5.一時保護開始時の判断に関する司法審査の導入
6.子ども家庭福祉の実務者の専門性の向上
7.児童をわいせつ行為から守る環境整備(性犯罪歴等の証明を求める仕組み(日本版DBS)の導入に先駆けた取組強化)等

 

改正の背景には児童虐待の相談対応件数が増加し、子育てに困難を抱える世帯がこれまで以上に顕在化していることが挙げられます。子育て世帯に対する包括的な支援のための体制強化を図ったのです。

 

保育園に関係が深いのは1つ目。

政府は「市区町村は、全ての妊産婦・子育て世帯・子どもの包括的な相談支援等を行うこども家庭センターの設置や、身近な子育て支援の場(保育所等)における相談機関の整備に努める。こども家庭センターは、支援を要する子どもや妊産婦等への支援計画(サポートプラン)を作成する。」と定めています。

保育園は「こども家庭センター」を設置し、相談機関の整備に努めなければなりません。

 

新たに設置される「こども家庭センター」は、市町村の過程総合支援拠点が持っていた機能を活かしながら、一体的な組織として子育て家庭に対する相談支援を実施します。困難を抱える家庭に対して、切れ目なく、漏れなく対応することを目指しています。

そのためには、子育てに関わる関係者との連携が欠かせません。保育園は家庭や子供の状況を把握し、困難を抱えているといった兆候を見出し次第、「こども家庭センター」と情報を共有して然るべき対応をとることが求められるでしょう。

 

今回の法改正では、放課後等デイサービスの障がい児の対象も変更になります。これまでは就学している障がい児が対象で、義務教育終了後の年齢層は利用対象ではありませんでした。これからは市町村が認める場合、専門学校などに通学している障がい児も、放課後等デイサービスの利用が可能となります。

障がい児支援施設で働く保育士や児童指導員は、対応する子供の年齢が広がると予想されます。

 

保育士の業務負荷が高まると予想されるのです。

待機児童の数は6年で1/10に


日本政府は少子化を国難と捉え、様々な対策を行ってきました。その成果が出ているのは間違いありません。

待機児童の数は2017年に2万6000人いましたが、2023年には2600人まで減少しています。86.7%の市区町村で待機児童はなくなったのです。その要因の一つに保育園や保育所などの受け皿を拡大したことがあります。

 

2014年の保育所の数は2万4000でしたが、2023年には3万9000まで拡大しました。拡大したのは規制緩和を行ったためです。政府は2000年3月に「保育所設置に係る主体制限の撤廃」、「定員規模要件の引下げ」、「資産要件の緩和」を行いました。更に2001年からは社会福祉法人に限らず、株式会社でも保育園を運営できるようになりました。

 

子育ての支援体制が充実したことは歓迎すべきことですが、実は将来的な課題が懸念されています。保育所の過剰問題です。

厚生労働省は2024年2月27日に人口動態統計の速報を公表しました。2023年の出生数は過去最低の75万8631人。国立社会保障・人口問題研究所の推計より12年早いペースで少子化が進行しているのです。

コロナ禍によって婚姻件数や出生数が減少し、少子化に拍車がかかりました。

 

それに伴い、保育所の利用者数の減少が起こると予想されています。2025年に利用児童数は300万人のピークを迎え、それ以降は緩やかに下降するとみられているのです。

足元では保育園の閉鎖や倒産が相次いでいます。

 

帝国バンクの調査によると、2019年の保育園の倒産は8件。2年連続で過去最多を更新しました。

2019年11月に東京都世田谷区の認可外保育園が突如として閉鎖。2020年3月にも豊島区の認可保育園、同年10月千葉県印西市の認可保育園が閉園となっています。

いずれの保育園も事前の十分な説明がないままの閉鎖となり、保護者の間では動揺が広がりました。資金と人材不足による経営難で事業継続が困難となったのです。

M&Aで効率的な施設運営を


保育園は子育て支援という社会的な役割が大きい一方で、決して利益を出しやすい業種ではありません。保育サービスの質を高めて他の施設との差別化を図ったとしても、保育単価を大幅に引き上げられる業界ではないためです。

保育園を利用する3歳から5歳までの利用料は無料、住民税非課税世帯は0歳から2歳までの利用料が完全無償化していますが、これはすなわち市区町村から得られる財政支援が収入源となることを意味しています。基本的に保育サービスは一定の質を確保し、生産性を高めて利益を出すモデルなのです。

 

しかし、今回の法改正のように子育て支援の強化によって現場の負担は重くなり、施設の運営難易度は上がります。それに加えて1施設当たりの子供の数は減少すると予想されているのです。人材の確保と育成のバランスをとるのが、これまで以上に難しくなります。

 

保育園は規模の経済が働きやすい業種でもあります。運営する施設の数を増やすと人材の確保を行いやすくなり、施設の数や規模の調整をしやすくなるためです。

事業を強化する手段としてM&Aは有効だと言えるでしょう。閉園や閉鎖、廃業を考えている経営者は、売却という手段で施設の運営を継続できる可能性があります。社会的な意義が大きい事業だからこそ、最適な選択をしなければなりません。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。