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半導体・製造 2022.11.9 配信

電気自動車の普及は追い風となるか?金型業界の現状と課題、M&A最前線

電気自動車の普及は追い風となるか?金型業界の現状と課題、M&A最前線

日常にあふれる製品の製造プロセスで欠かすことのできない金型


金型は金属の素材を用いて作った型の総称。自動車のボディーは金属板をプレス金型で成形しています。ボトルなどのガラスも、金型を用いて成形されています。

鋼板や非鉄金属の加工において欠かすことのできない金型。その多くは製品を製造するプロセスの一部に使われています。

 

この記事では、金型業界の現状や課題、主なM&Aについて解説します。

自動車向けの金型が全体の7割超を占める


金型は材料や用途によって8つに分類されます。

 

〇プレス用:鋼板などの材料を強い力で折り曲げたり、圧縮して成形するためのもの
〇鍛造(たんぞう)用:材料の一部や全体に打撃を加えて成形するためのもの
〇鋳造(ちゅうぞう)用:加熱して液状化させた材料を流し込んで成形するためのもの
〇ダイカスト用:主に融点の低い金属を流し込むためのもの(鋳造型の発展形)
〇プラスチック用:プラスチック材料を成形するためのもの
〇ガラス用:ガラス材料を成形するためのもの
〇ゴム用:合成ゴムや天然ゴムを成形するためのもの
〇粉末冶金(ふんまつやきん)用:金属の粉末を焼き固めるためのもの

 

金型というと、プレス加工や鍛造、鋳造のものをイメージしがちですが、その種類は多岐に渡っているのが特徴です。

 

金型の生産高は、日本経済がバブル期の終焉を迎える直前の1991年に2兆円のピークを迎えました。2008年のリーマンショック時の不況で急速に減少しますが、緩やかに回復。2019年は1兆3,602億円でした。生産高はピークから32.0%減少しています。

事業所数の減少は著しく、ピーク時の13,000事業所から6,700事業所まで半分近く減少しています。

※日本金型工業会「一目でわかる日本の金型産業」より

 

金型の用途は自動車用が73.5%と圧倒的。金型業界の命運は自動車産業が握っていると言っても過言ではありません。転換点の一つとなるのが、ガソリン車から電気自動車へのシフト。

自動車のボディはこれまで通りプレス用の金型が使われると考えられますが、パーツの数はガソリン車が10万点、電気自動車が1万点と言われています。パーツのスリム化が図られるため、サプライチェーンの産業構造は大きく変化するでしょう。

 

特にガソリンエンジンの製造に使用するアルミダイカスト用の金型製造を行う会社などは、大打撃を受ける可能性があります。

産業構造の変化に対応しづらいビジネスモデル


金型業界は8割が中小・零細企業を占め、自動車産業が集積する中部地方に会社が多く集まっています。一定の取引先との関係を強固なものにし、信頼関係を構築してビジネスを展開していたため、一社への依存度が高いという問題点があります。

 

トヨタ自動車など技術力の高い会社の要望に応え、製品づくりを進めていたため、質の高い金型を製造しているメーカーが数多くあります。しかし、営業力や企画力を高めることができなかった結果、取引先を拡大する機会を失った会社があるのも事実。

 

電気自動車の普及という転換期を迎えている今、取引先の拡大、営業力の強化で国内外の需要を獲得することが重要です。

成長意欲の高い人こと金型業界に注目すべき


中小・零細企業が中心の金型業界において、深刻化している問題が事業承継。経営者が高齢化している一方、金型業界に希望を見出せずに跡を継ごうとする人は少ないのが現状です。社員の求人をかけても若者が集まらない状況も続いており、慢性的な人手不足も経営者の頭を悩ませています。

 

しかし、潜在性を秘めているのも金型業界の特徴。金型業界はデジタル化に遅れている典型的な業界の一つ。紙の図面や指示書、見積書、発注書が根強く残り、業務フローや製造プロセスに問題点や課題を抽出してPDCAを回すIoT化も進んでいません。

 

裏を返せば、業務の効率化を高める潜在性があることを示しています。取引先の拡大と業務効率化の両方を進めることができれば、大きな飛躍につながる会社も少なくないでしょう。一流自動車メーカー主導のもと、高い技術力を育んできたポテンシャルのある業界です。

M&Aも進行する金型業界


金型業界はM&Aも活発です。

 

【ダイヤモンドエレクトリックホールディングスのクラフト買収】
自動車機器を製造するダイヤモンドエレクトリックホールディングスは、2022年5月に金型設計や製造、プラスチック成形部品試作製造などを行うクラフトの全株を2億3,700万円で取得。完全子会社化しました。

ダイヤモンドエレクトリックホールディングスは、自動車機器や電子制御機器など、多岐に渡る製品を製造しています。金型成形やプラスチック成形の技術を内製化することにより、迅速な製品化やコストカットに繋げることができます。

ビジネスにスピードが求められる時代。自動車の部品などを製造する会社が、金型のノウハウを内製化する動きは今後も加速する可能性があります。

 

【富士紡ホールディングスがGFIホールディングスを子会社化】
研磨剤や化学工業製品を展開する富士紡ホールディングスが、2022年11月にGFIホールディングスの全株を取得しました。GFIホールディングスの子会社IPMは、金型の製造販売を行っています。

富士紡ホールディングスは、IPMの金型技術を活かして射出成形品の品質向上を目指すとしています。製品のクオリティを高める目的でもM&Aが活用されています。

 

【三ツ知が創世エンジニアリングの全株を取得】
自動車部品を製造する三ツ知が、2020年12月に創世エンジニアリングを子会社化しました。

創世エンジニアリングは金型設計の製造、試作などを行っています。三ツ知は完全オーダーメイドのカスタム製品を中心に、自動車のエンジンやシートの部品を提供してきました。

金型はオーダーメイドで製品を作る際の要。金型設計の高い技術力を取り込むことにより、迅速なサービスの提供や精度の向上が見込めます。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。