クリニック・医療業界の承継 〜出資持分と譲渡金額〜
クリニック・医療業界の承継
〜出資持分と譲渡金額〜
“町のお医者さん”が閉業した日
私の住む神奈川県には、昔から“町のお医者さん”として開業している内科を営むおじいちゃん先生がいる。
私自身も子どもの頃からよくお世話になっていた内科クリニックだ。
しかし、先月末で30年間も続けていたクリニックを閉めてしまった……。
「そろそろ引退してゆっくり過ごそうと思う。
うちのクリニックを受け継いでくれる親族もいないので閉めることにしたんだ」
医療法人も会社と同じで、昨今、院長の高齢化によるクリニックの閉鎖や承継が多くなってきていることを実感した。
医療法人の出資持分とは何か? ~退職時にもらえるお金~
今回は一般の方にはなかなか特殊な医療法人のM&Aについて説明しよう。
医療法人は医療法や税法に基づく分類で、大きく2つに分けることができる。
・出資持分のある医療法人
・出資持分のない医療法人
出資者が医療法人を設立した時に出資した持分に関して財産権・返還請求権を持ち、
相続・譲渡(承継)することができるのが出資持分のある医療法人で、
これは経過措置型医療法人とも呼ばれる。
一方で、出資持分なしの医療法人は基金制度による出資やその該当額の払い戻しを除いて
解散時に残った残余財産は国などに帰属させる。
平成19年に改正医療法が施行されたことにより、平成19年4月1日以降に設立された法人は、
すべて<出資持分なし医療法人>となった。
出資持分があると「持分払戻請求権」と「残余財産分配請求権」という2つの財産権があることになる。
理事長が医療法人に100%出資している場合には、法人を退職する時や解散する時に、
医療法人の純資産の全額の払戻しが可能になる。
医療法人のM&Aの場合、「退社時に貰えるお金」という点で見ると、
最初の確認ポイントとなるのが<持分の有無>と言うことだ。
執筆者 武藤タケル
ライター(男性30代)
健康・政治・経済から、結婚式・葬儀・健康分野など様々な分野を得意とするライター。
趣味はキックボクシングと傾聴講座。様々な業界のM&Aに関するリアルを取材してお伝えします。