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M&A一般 2023.10.25 配信

【投資ファンドの種類】バイアウトファンドとベンチャーキャピタルの違いは?

【投資ファンドの種類】バイアウトファンドとベンチャーキャピタルの違いは?

5つに分類されるPEファンド


未上場株に投資をする主なプライベートエクイティファンド(PEファンド)に、バイアウトファンド、企業再生ファンド、ディストレスファンド、ベンチャーキャピタル、メザニンファンドがあります。

 

PEファンドは金融機関や保険会社、機関投資家などから資金を預かり、株式に投資をして数年後に売却をするというのが一般的なビジネスモデルです。

バイアウトファンドやベンチャーキャピタルという言葉は頻繁に耳にするものの、その違いまでを理解している人は多くありません。

 

この記事では、PEファンドの種類と投資手法の違いについて解説します。

PEファンドの基礎知識


5つに分類したPEファンドの主な違いは以下の通りです。

 

【投資ファンドの種類】

●バイアウトファンド:中堅企業の大半の株式を取得して転売または上場によるリターンを得る。
●企業再生ファンド:経営破綻や業績不振に陥った企業の債権の取得、出資を行って業績を改善し、転売または上場によるリターンを得る。バイアウトファンドが企業再生ファンドの役割を兼ねるケースも多い。
●ディストレスファンド:経営破綻寸前または経営破綻後の債権の取得、出資を行う。企業再生ファンドに近い性格をしているが、企業のステージがより危機的な状況に陥っているケースが多い。
●ベンチャーキャピタル:設立して間もないスタートアップの株式の一部を取得し、転売または上場によるリターンを得る
●メザニンファンド:デットとエクイティの両方の性格を持つ劣後ローンや優先株を投資対象とし、配当や転売でリターンを得る。メザニンファンドは、バイアウトファンドが少ない資金で大型の買収を行う際に活用するLBOローンの資金の出し手にもなるケースがある。

 

【種類別の主な会社】

●バイアウトファンド:アドバンテッジパートナーズ、インテグラル、ポラリス・キャピタル・グループ、ユニゾン・キャピタル、産業革新投資機構、ベインキャピタル、CVCキャピタルパートナーズ、KKR、カーライル・グループなど
●企業再生ファンド:リサ・パートナーズ、エンデバー・ユナイテッド(旧フェニックス・キャピタル)など
●ディストレスファンド:ローン・スター・ファンドなど
●ベンチャーキャピタル:ジャフコ、フューチャーベンチャーキャピタル、グロービスキャピタルパートナーズ、日本ベンチャーキャピタル、東京大学エッジキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルなど
●メザニンファンド:MCo(エムコ)、MCPメザニン、野村メザニン・パートナーズなど

 

株式投資は債券投資と比較すると、リスクの高い手法となります。その中でも、バイアウトファンドは比較的リスクの低い手法をとります。

企業再生ファンドやディストレスファンドは、経営が危機的状況にあるためにリスクが高いと言えますが、再生に成功すると莫大なリターンに期待できるため、ハイリスク・ハイリターンの投資です。

利益が出ていないスタートアップに出資をするベンチャーキャピタルも、ハイリスク・ハイリターンだと言えるでしょう。

メザニンファンドはミドルリスク・ミドルリターンの性格を持っています。これは通常の債権と比較して弁済順位が劣る劣後債や、株式に該当する優先株に投資をするため。しかし、劣後債や優先株は金利や配当が高く設定できるメリットがあります。

バイアウトファンドとベンチャーキャピタルの違い


バイアウトファンドとベンチャーキャピタルの違いが分かりづらいと感じる人も多いはずです。どちらも未上場株に投資をし、エグジットは売却または上場です。性格はよく似ていますが、投資手法は全く異なります。

 

2つの違いに以下のようなものがあります。

 

【投資対象】

●バイアウトファンド:堅調に利益を出している中堅企業、または大企業のノンコア事業
●ベンチャーキャピタル:業績が安定しないスタートアップ

 

【投資するステージ】

●バイアウトファンド:成熟期以降
●ベンチャーキャピタル:創業期から成長期

 

【出資を受ける企業の主な課題】

●バイアウトファンド:成長の行き詰まり、後継者不足
●ベンチャーキャピタル:運転資金、事業投資資金の不足

 

【投資手法】

●バイアウトファンド:過半数以上の株式を取得し、ハンズオン型の経営を行う
●ベンチャーキャピタル:数%から十数%の株式を取得するが、経営は創業者(または経営者)に任せる

 

【エグジットの成功確率】

●バイアウトファンド:高め
●ベンチャーキャピタル:低め

 

バイアウトファンドは、成熟期を迎えた中堅企業や大企業のノンコア事業を買収するケースがほとんどです。出資を受ける側は、成長が行き詰まっていたり、後継者不足に悩んでいる経営者が大半を占めます。

ファンドは資金を提供して国内外での事業の拡大や、経営に参画する人物の招聘を行います。利益が出ている企業に出資をすることが多く、転売や上場によって多くの利益をリターンを獲得します。

 

ベンチャーキャピタルは、創業期や成長期の企業に投資を行います。スタートアップの多くは赤字であり、成長に必要な資金が不足しているケースがほとんど。しかし、信用力が低いために銀行から十分に借入れができないことがあります。

ベンチャーキャピタルは数千万円から数億円を出資し、株式の一部を取得します。出資後も経営には深く関与せず、創業者などに一任します。ただし、ベンチャーキャピタルが持つネットワークに組み入れ、新たなビジネスのアイデア、取引先の開拓、業務提携などの促進を支援することがあります。

スタートアップを取り巻く環境が変化し、飛躍的に成長することは多く、その土壌となるエコシステムの形成はベンチャーキャピタルの主要な役割の一つとなりました。

 

アメリカの起業家養成スクールYコンビネーターによると、スタートアップが成功する確率は7%。ユニコーンと呼ばれるまでに成長する企業は0.3%ほどと言われています。

従って、ベンチャーキャピタルの成功確率は高くありません。

 

ベンチャーキャピタルは1社に対する投資額を抑制し、数多く出資する傾向があります。30社に投資をして1~2社上場すれば良い方でしょう。

 

バイアウトファンドは投資対象となる企業の収益性や市場シェア、収益構造、事業課題を見極めて慎重に投資を行い、ベンチャーキャピタルは創業者のアイデアや熱意、ビジネスモデル、新奇性を重視する傾向があります。

変化する投資ファンド業界


バイアウトファンドは、手法よりもいかにして利益を出すのかを優先的に考える傾向があります。そのため、時代に合わせて投資手法を変えることもしばしばです。

2020年10月にバイアウトファンドの世界的な大手カーライルが、日本のスタートアップでECサイト構築サービスSTORESを展開するヘイに出資しました。70億円投資したと言われています。

この事例は投資ファンド業界を驚かせました。手堅い投資を行うバイアウトファンドが、リスクの高いスタートアップに対して巨額の投資を行ったためです。

 

こうした動きの背景に、低金利時代が長く続いていたことが挙げられるでしょう。金利が低いと、バイアウトファンドは機関投資家などから資金を調達しやすく、借入が行いやすくなります。そのため、ハイリスクな投資をしやすくなるのです。

低金利時代に積極的なスタートアップ投資を行っていたファンドに、ソフトバンクビジョンファンドがあります。WEWORKやOYOなどに対して巨額の投資を行いました。

しかし、2022年にアメリカが利上げを行うと、スタートアップを取り巻く市況は急速に悪化しました。ソフトバンクグループは巨額の赤字を計上することになります。

2022年以降、バイアウトファンドがスタートアップに積極的な投資を行うケースは減少しています。今後、コロナ禍で弱体化した会社に対する企業再生やディストレス投資が増加するのではないかと見られています。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。