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M&A一般 2023.10.18 配信

【企業オーナー向け】M&A仲介とアドバイザリー・投資ファンドは何が違う?

【企業オーナー向け】M&A仲介とアドバイザリー・投資ファンドは何が違う?

M&Aに登場する3種類のプレーヤー


M&Aのニュースや会社・事業の売却を検討する際、M&A仲介事業者とM&Aアドバイザリー、投資ファンド(PEファンド)の名前を聞くことがあるかもしれません。

この3つの事業者はM&Aにおいて極めて重要な役割を担いますが、事業の目的やサポートする内容は大きく異なります。

 

この記事ではその違いを解説します。会社を売却する際の参考にしてください。

M&A仲介とアドバイザリーの違い


日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、M&A総合研究所。これらの会社は上場しているM&Aの仲介事業者です。

2021年11月に上場廃止となったGCAという会社があります。この会社はM&Aアドバイザリーを行っています。

 

M&A仲介事業者とM&Aアドバイザリーの違いは、事業の目的です。

 

M&A仲介は売り手と買い手の間に立ち、両社を繋げて経営課題の解決を導くことを目的としています。課題解決の手段として仲介を行っており、売り手や買い手に対し最良と考えられる会社を見つけてお互いが納得できる着地点を提案します。仲介事業者は、後継者不足に悩む事業承継の案件を扱うケースが多くなっています。

多くの事業者は、売り手と買い手の両方から手数料を受け取るビジネス構造をしています。

 

アドバイザリーは、売り手または買い手どちらかの会社の交渉役を務めます。クライアントが一社となるため、アドバイザリーは買収額(売却額)など最良の条件を引き出すことを目的としています。

徹底的にクライアントと向き合っており、求める条件で折り合いをつけることができなければ、買収を断念する提案も行います。

アドバイザリーは非常にタフな交渉力を持っていることで知られています。

 

取り扱う案件にも違いがあります。M&A仲介事業者は数千万円から10億円程度の案件が中心です。その一方で、アドバイザリーは大型かつクロスボーダー案件など、難易度の高いものを多く扱っています。

GCAは三井不動産の東京ドーム買収時に、東京ドーム側のアドバイザーを担当しました。最終的な買収額は1,200億円でした。

M&A仲介事業者と投資ファンド(PEファンド)の違い


中堅企業が会社の売却を検討する際、M&A仲介事業者と投資ファンドの両方から声がかかることがあるかもしれません。この2つも似ているようで大きく違います。

 

仲介事業者は、売り手に相応しい会社を見つけて両者を繋ぐのが事業の目的でした。

 

投資ファンドは買収した会社の企業価値を高め、転売またはIPOで利益を出すことを目的としています。そのため、買収後は投資ファンドのメンバーが経営に参画し、経営改革を行うケースが多く見られます。

経理や労務管理をデジタル化したり、人事評価制度の策定、取引先や事業計画・事業内容の見直しをすることもしばしばです。

 

経営改革によって利益が出るようになり、業績が改善して上場することも夢ではありません。しかし、その過程で不採算事業の切り離しや人員整理、利益が出ない取引先との取引停止などを行うことがあります。

投資ファンドが買収した後の経営体制はどうなる?


投資ファンドは確実に利益を出そうとするため、企業価値を上げるためには何が最良なのかを徹底的に考えます。

企業オーナーの経営に対する熱意が高く、社員の帰属意識が高い場合、買収後も会社に残るケースも少なくありません。最近、投資ファンドがよく使う手法に2段階エグジットがあります。

 

2段階エグジットを詳しく説明します。

会社のオーナーが大半の株式を投資ファンドに売却します。これが1回目のエグジットです。しかし、投資ファンドはすべての株式を取得するのではなく、一部を経営者に残しておきます。株式を残すことで、会社の価値を最大化するというインセンティブが生まれます。

多くの場合、2回目のエグジットはIPOを狙います。

 

千趣会は2021年4月に結婚式場運営会社ディアーズ・ブレインの株式を投資ファンドCLSAキャピタルパートナーズに譲渡しました。更に、CLSAは株式の一部をディアーズの経営陣に譲渡しています。これにより、このM&AはMBO(経営陣による買収)となります。

ディアーズはMBOで得られた資金によって財務基盤が強化されます。経営者は求心力を失っておらず、婚礼業界がコロナ禍から回復していることから、2回目のエグジットを近いうちに行ってもおかしくはないでしょう。

資金集めを強化する投資ファンド


投資ファンドとの交渉次第では、経営の第一線を退く経営者も多くいます。そのような場合、その業界に精通したプロ経営者などを招聘することがほとんどです。

 

M&Aにおいて、投資ファンドを活用しようと考える場合、組織体制や経営方針は大きく変化することがあると考えてください。投資ファンドは企業価値を最大化し、転売することを目的としているためです。

 

新型コロナウイルス感染拡大の影響でビジネス環境は大きく変化しました。多くの投資ファンドはこれを好機だと捉えており、地方銀行や保険会社、その他金融機関などから買収資金を集めています。

 

M&Aが今後活発化するのは間違いないでしょう。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。