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その他 2024.10.30 配信

物価高騰はいつまで続く? 2024年後半の経済の行方

物価高騰はいつまで続く? 2024年後半の経済の行方

2%程度の物価高が続く日本


総務省が10月18日に発表した消費者物価指数によると、9月のコアCPI(生鮮食品を除く総合指数)は前年比2.4%で、事前の市場予想2.3%を上回るものでした。

生鮮食品を除く食料が2か月連続で拡大。令和の米騒動などと呼ばれた米やジュースなどが上昇しました。

 

エネルギー価格の高騰や円安の進行で物価高が起こりやすくなっています。国民を悩ますインフレはいつまで続くのでしょうか?

経済の行方は新政権の行く末を占うことにもなるでしょう。

「失われた30年」は終わりを迎えた?


日本銀行はコアCPIが2024年度に2%台半ばになった後、2025年度と2026年度はおおむね2%程度で推移するとの予想を出しています。これは2013年1月に日銀が目標として掲げた2%の物価上昇と合致するものです。

 

この物価高の一番のポイントは、賃金の上昇が伴うのかどうかということ。賃上げのペースが物価高を上回るのであれば、消費意欲が高まって企業に入るお金が増え、更なる賃金上昇を望める”良いインフレ”になります。

 

2024年の春闘の回答集計値によると、定期昇給分を含む賃上げ率の平均値は+5.28%でした。これは昨年の+3.80%を大幅に上回るもの。+5%を超えるのは実に33年ぶりでした。

日本はデフレに苦しむ期間が長く、「失われた30年」という言葉が頻繁に使われてきました。2024年の賃上げ率は、デフレ脱却と呼ぶにふさわしいものでした。

 

なお、日銀は2024年7月の金融政策決定会合で利上げを決定しましたが、背景にはこの賃上げ率の大幅な上昇がありました。

2025年も5%の賃上げが実現するか


連合は2025年春闘でベースアップを3%以上、定期昇給分を含めて5%以上の賃上げを要求する方針を固めています。なお、中小企業には6%を求めるとしています。

連合の芳野友子会長は、「5%以上の賃上げを今後も着実に継続してつなげていくことが非常に大事だ」と記者会見でコメント。値上げで企業が利益を出しやすくなっていることと、人手不足であることを背景として、強気の目標を掲げました。

 

 

 

※連合「2024 春季生活闘争」より

 

2024年の春闘で満額回答をした主な会社にトヨタ、日産自動車、ホンダ、パナソニック、シャープ、サントリー、キリン、イオンなどがあります。トヨタは4期連続で満額回答しました。

 

それでは、中小企業の賃上げ率はどうでしょうか?

従業員数が99人以下の小規模な事業者でも、賃上げ率は3%近くまで達しています。

 

従業員数 賃上げ率
■1,000人以上 3.61%
■300~999人 3.58%
■100~299人 3.30%
■99人以下 2.90%
■全体 3.57%

 

物価高は2025年から2026年にかけて2%程度上昇する見込みです。しかし、現在のように賃金上昇がそれを上回るペースで進むかもしれません。

その状態は日本中が待ち望んでいた好景気の兆しであると見ることができます。

最低賃金1500円を看板政策に


賃上げが実現している背景には、政府のバックアップもあります。

 

岸田政権下では、賃上げを実現した企業への税制優遇が拡充されました。賃上げ促進税制の対象となりうる企業として、中小企業全体の8割がカバーされるよう、中小企業向けに5年間の繰越控除制度を創設。これにより、赤字でも賃上げ促進税制が活用可能となったのです。

また、税制の措置期間を従来の2年から3年に広げ、大企業や中堅、中小企業向けのインセンティブ制度も強化しました。

石破政権は看板政策として、2020年代に最低賃金1500円を掲げています。2024年は1055円。相当高い目標であることがわかります。経団連の十倉会長が無理な目標を掲げるべきではないと牽制するコメントを出したほどです。

 

ただし、石破政権は岸田政権の賃上げ政策を踏襲すると見られており、政治体制が変わってもそのスタンスを崩すことはないでしょう。

企業側とどれだけすり合わせをすることができるか、という調整力の問題になります。

懸念される格差社会


物価高と賃金アップの好循環が生まれようとしている今、懸念材料となるのが格差社会。企業規模別の賃金の上昇率の違いを見るとわかる通り、大企業と中堅、中小企業ではその差が大きく出ます。これが派遣社員や契約社員、アルバイトなどの非正規雇用であれば、その格差はもっと大きくなります。

 

更に受給額がほとんど変わらない年金生活者の場合、物価上昇の影響を強く受けることにもなります。

 

大企業・中堅で働く正規雇用の社員と、非正規雇用者・年金受給者などとの格差が広がる未来が見えてくるのです。

 

非正規雇用者を多く抱えている世代が就職氷河期世代。40~50代の人が中心です。氷河期世代の正社員率は、男女ともに他世代と逆転していると言われています。つまり、非正規雇用者の割合の方が高いのです。

 

消費税撤廃やインフレ給付金、最低賃金1500円は国の補償で行うなど、足元の日本の財政状態を鑑みると実現不可能とも思える政策を掲げる「れいわ新選組」ですが、支持者の多くは氷河期世代だと言われています。

ポピュリズムの風潮は格差が広がるアメリカ、ヨーロッパを席捲してきました。日本でもその影響が広がる可能性は大いにあります。

 

2026年まで物価高は続く見通し。格差は広がり続けるかもしれません。その影響は政治の世界にも何らかの作用を引き起こすでしょう。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。