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その他 2023.11.15 配信

中国とアメリカの景気減速が顕在化?世界経済の回復に遅れが

中国とアメリカの景気減速が顕在化?世界経済の回復に遅れが

先進国での利上げが経済の重しに


コロナ禍からの反動で世界経済は一時旺盛な回復力を見せていましたが、ここにきて暗雲が立ち込めています。世界経済をけん引していた中国とアメリカ景気の減速が鮮明になってきたためです。

 

世界経済成長率は2022年の推計3.5%からトーンダウンし、2023年と2024年は3.0%となる見込みです。アメリカとヨーロッパはインフレを退治するための政策金利引き上げが経済の下押し要因となりました。

中国はゼロコロナ政策が解除されて景気回復に向かうと見られたものの、不動産市況が悪化して先行き不透明な状態が続いています。

アメリカはなぜ世界経済の中核にいるのか?


経済大国であるアメリカの動向は、世界経済を見渡す上でなくてはならない存在です。世界の名目GDPのおよそ25%ほどをアメリカ、次いで中国が15%ほどを占めています。日本は10%にも達していません。

アメリカは個人消費のシェアが高いのが特徴。世界全体の個人消費の3割をアメリカが占めています。中国は1割程度。人口3.3億人のアメリカが、14億人の中国を大幅に上回るほど、消費する力が強いのです。

しかもアメリカは日本と異なり、年間0.7%程度の人口増加率を維持しています。個人消費や投資活動が活発で、人口も底堅く推移しています。経済成長に必要な要素を満たしているため、世界の景気をけん引する存在になっているのです。

 

アメリカは2023年7月のFOMCで合計11回の利上げを行いました。利上げ幅は5.25%に達します。

政策金利を引き上げるのは、インフレが進行しているためです。コロナ禍からの経済の急回復や、ウクライナ危機によるエネルギー高で世界的に物価高が進みました。アメリカも例外ではなく、年間インフレ率は2011年の3.2%から2022年には8.3%に達しました。

 

インフレ下では商品を高く売れるため、企業は儲けを出して理論上は労働者の収入が増えます。収入が増えて消費に回って経済が好循環し、好景気に見舞われます。

しかし、インフレの進行スピードが速すぎると賃金上昇がそれに間に合わないため、消費者の購買意欲が失われてしまいます。

それを防ぐために、政策金利を引き上げてインフレにブレーキをかけるのです。

 

政策金利を引き上げると、ローンなどの金利が上がるため、企業の投資や個人の消費意欲が失われます。モノが売れなくなるため、物価高を抑制することができるのです。

2023年に入ってアメリカが利上げを見送った理由


FRBは11月1日に金融政策を決める会合を開き、利上げを見送りました。9月に続いて2会合連続の見送り決定です。

利上げの効果もあってアメリカの2023年のインフレ率は4.1%程度まで下がりました。物価高は落ち着きを取り戻しています。

 

政策金利は5.25%~5.5%の幅を維持しています。アメリカの住宅ローン金利は30年固定で7.49%と言われています。2000年12月以来の高水準です。

日本はフラット35の通常金利が1.96%。アメリカとは圧倒的な差が生じています。金利が高くなりすぎたことから、アメリカのローン需要も減退。住宅ローン申請件数を示す総合指数は、2023年10月に6%減少しました。

 

アメリカは度重なる利上げを断行したものの、個人消費の勢いは依然として失われておらず、GDPは5期連続でプラス成長となっていました。

その一方で、シリコンバレー銀行やウィーワークが経営破綻するなど、景気に暗い影も見え始めました。

FRBは軟着陸すると利上げ効果に自信を見せていますが、2024年前半に景気後退局面に突入するというエコノミストの声があります。2会合連続で利上げを見送った背景には、景気の腰折れ懸念があるでしょう。

 

アメリカは当初、2023年中の景気後退が予想されていました。それが2024年に表面化する可能性があると言われています。

不動産市況が急速に悪化する中国


中国経済の悪化も鮮明になってきました。内需不足、不動産不況に続いて、輸出も停滞しているのではないかと言われています。

 

中国は2023年7月の小売売上高は前年比2.5%の増加に留まりました。伸び率は前の月よりも縮小しています。家電はマイナス5.5%、宝飾品はマイナス10.0%も落ち込みました。贅沢品や生活を豊かにする製品の需要が縮小しています。

6月の消費者物価指数は前年同月比で0.3%減少。2年5か月ぶりにマイナスとなりました。

 

習近平政権は危機感を強め、悪化が目立つ統計情報の公表を取りやめています。情報統制をしているため、中国経済の実態が見えづらくなりました。政府がそのような行動をとっていることからも、景気悪化は鮮明になっていると考えられます。

 

目下、心配の種とされているのが不動産不況。住宅価格の下落が続き、深刻な不動産不況に陥りました。恒大グループは2023年8月アメリカの裁判所に連邦破産法の適用を申請。48兆円という巨額の債務を抱えている実態が明らかになりました。この数字は中国のGDPの2%に及ぶものです。

 

中国は好景気に沸いていた時代、地方にある「融資平台」と呼ばれる地方政府が出資・設立した投資会社が、インフラ整備に必要な資金を拠出していました。日本で言う第三セクターに近いものです。

民間企業はこの仕組みを使って低コストで資金を調達。巨大な開発プロジェクトを次々と立ち上げました。中国では土地を国が所有していました。地方政府は土地の使用権を事業者に売却し、その資金をインフラ開発などに充当していました。

しかし、不動産不況でマンションや住宅が売れなくなると、不動産開発とインフラ整備を進めることができなくなります。「融資平台」の債務残高は2023年に1,353兆円に達したと言われています。

 

仮にデフォルトすることになれば、金融システムに甚大な影響を及ぼすでしょう。

 

現在の中国はかつての日本に酷似しているとも言われています。中国は一人っ子政策を導入していたために、急速な少子高齢化が進んでいます。国民の消費意欲が減退し、経済成長が鈍化。不動産バブルが弾けて景気後退局面が懸念されているのです。

 

中国が長期停滞局面である「日本病」に陥ることになれば、世界経済が大打撃を受けるのは間違いないでしょう。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。