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人材 2023.2.8 配信

システムエンジニアを派遣するSIerとSESの違いは?

システムエンジニアを派遣するSIerとSESの違いは?

成果物ありきのSIerと労働力を提供するSES


システム開発やシステムエンジニア業界で「SIer」と「SES」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。どちらも事業や業務内容は似ていますが、明確な違いがあります。

 

SIerはシステム開発に関連する業務全体を請け負い、開発から保守、運用までを担います。つまり、SIerをサービスとして提供する会社は、顧客が望むシステムを安定的に提供するという成果物がメインになっています。

SESはシステムエンジニアが不足している顧客に対して、エンジニアの労働力をサービスとして提供します。システム開発はエンジニアの労働力に依存しており、その課題解決を行うのがSESです。

SIerの事業と業務内容


SIerはITゼネコンと呼ばれています。システム開発は要件定義や設計など上流工程と呼ばれるプロセスがあり、これがシステム開発の成功を左右します。顧客の要望や条件、予算、リソース、費用などを加味した上で青写真を描きます。

 

顧客との調整を図りつつ実現可能な範囲を決めるもので、極めて難易度が高いプロセスです。特に金融機関向けや自衛隊のような防衛関連、省庁に導入するシステムは複雑かつ高いセキュリティが要求されるため、大企業が受注するのが普通です。

 

代表的な企業に以下のようなものがあります。

 

【金融機関向けシステム】

・三菱UFJインフォメーションテクノロジー

・みずほリサーチ&テクノロジーズ

・野村総合研究所

 

金融系のSIerはホールディングスの一部門に位置付けられており、子会社となっているケースがほとんどです。この中で特殊なのは野村総合研究所で、13.08%の株式は野村ホールディングスが保有しているものの、株式を上場しています。

 

【防衛関連システム】

・富士通(富士通ディフェンスシステムエンジニアリング)

 

日本の防衛費増額の要因となったミサイル防衛に関連するシステムや、宇宙監視、サイバー攻撃対策など幅広いシステム開発を担当しています。

 

【省庁向けシステム】

・NEC

・伊藤忠(伊藤忠テクノソリューションズ)

 

NECは省庁向けシステム開発の老舗。最近では開発ノウハウを活かし、自治体向けの統制運用プラットフォームやDXソリューションプラットフォームなどクラウド型のサービスも提供しています。

 

なお、SIerとよく似た企業にITベンダーがあります。ITベンダーは自社で製造した製品を販売します。違いは既製品(ITベンダー)か、カスタマイズ商品(SIer)かどうかです。

SIerの主なM&A


SIerは老舗の大手企業が多く、各社が得意領域を活かして活動しています。拠点を広げるためにM&Aを活用するケースが目立ちます。

 

富士通はITサービスの事業拡大を目的として、数百円規模のクロスボーダーM&Aを実施すると2023年1月5日に報じられています。富士通は国内中心の事業展開を行い、豊富な手元資金を得ることができました。事業領域を海外へと移し、企業の成長スピードを上げようとしています。

 

NECは2021年1月にイギリスのIT企業Charter Systemsを買収しました。同社は警察向けのシステムを開発している会社。イギリスで60%のシェアを握り、カナダにも事業を拡大している会社です。

ベンチャー企業が多いSES


SESはIT人材の派遣業に近く、参入障壁が高くありません。派遣する人材の確保と提供する価格で差別化を図ります。価格競争力が強く働く業界のため、大手企業は好んでこの領域には手を伸ばしません。

 

【上場しているSES】

・ギークス

・ランサーズ

・クラウドワークス

 

ギークスは企業とIT人材をマッチングするサービスを展開している会社。売上高のおよそ3割をIT人材事業で占めています。

2022年3月期のIT人材事業の売上高は前期比25.6%増の18億1,400万円でした。堅調に成長しています。

 

ギークスはM&Aにも積極的な会社。2023年1月にオーストラリアでIT人材サービス事業を展開するLaunch Group Holdings Pty Ltdを子会社化しました。取得価額は19億1,200万円。クロスボーダーM&Aで大勝負に出ました。

コンサルティング会社がIT企業を買収するケースが目立つように


SIerは顧客のシステム開発の必要性が顕在化した後に需要が生じますが、近年はもっと上流の経営戦略の策定によって潜在的な需要が掘り起こされるようになりました。大手コンサルティング会社が、システム開発などを行うIT企業を買収するケースも目立つようになったのです。

これは事業会社がコンサルティング会社の協力を得ながら明確な経営戦略を打ち出し、デジタル化による効率的な事業の推進、プロジェクト進行、課題解決を行おうとする動きが加速しているためです。

 

コンサルティング会社は案件を獲得できますが、それを外注すると非効率。IT企業を傘下に収めてプロジェクトを円滑に進めようとしています。

 

2021年6月にコンサルティング大手アクセンチュアが、ドイツのシステムエンジニアサービスを提供するumlautを買収しました。買収によって製造業などの製造プロセスを情報技術で変革し、サプライチェーンマネジメントの効率化、環境に配慮した工程管理を行うとしています。

 

アクセンチュアは2020年9月にもAIを活用したシステム開発を行うアメリカのN3を買収していました。AI技術を駆使した売上向上を実現するシステムの提供を行っています。

このような技術を取り入れることで、アクセンチュアはコンサルティングの精度が高められるうえ、顧客がシステムを望めばそれを迅速に提供することができます。

 

マッキンゼーもIT系企業の買収に力を入れています。2015年に航空宇宙や軍事分析のVisualDoD、小売分析企業の4tree、データ技術コンサルティング会社のQuantumBlackを買収しました。

マッキンゼーは、顧客に対して新たなツールやテクノロジーを提供するための体制を戦略的に構築していると発表しています。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。