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人材 2024.2.7 配信

コロナ禍以降は売り手市場が鮮明でキャリアコンサルタントは企業支援が中心に

コロナ禍以降は売り手市場が鮮明でキャリアコンサルタントは企業支援が中心に

長い氷河期時代を乗り越えて人材不足が深刻


1993年から2005年に学校を卒業した人を就職氷河期世代と呼びます。有名大学を卒業しても就職先が見つからず、公務員の採用数も絞り込んだために非正規社員が増加しました。

現在、40代男性のアルバイト・パート比率は19%。女性が23%です。他の世代は男性が5%、女性が4%ほどと言われています。

長きに渡る氷河期世代は、非正規比率が圧倒的に高いという問題点がありました。しかし、2015年から2020年にかけて有効求人倍率は急上昇します。コロナ禍で一時的に労働市場は冷え込みましたが、2022年以降は回復が鮮明になりました。

 

市場環境に合わせ、就職や採用を支援するキャリアアドバイザーの役割も変化しています。

キャリアアドバイザーは企業支援型のコンサルタント業に


2022年の年平均有効求人倍率は1.28倍でした。コロナ禍の2021年に1.13倍まで落ち込みましたが、力強く回復しています。2023年11月も1.28倍であり、底堅く推移しているのがわかります。

2018年に有効求人倍率は1.61倍。高度経済成長期を過ぎてから、最高を記録しました。

 

※労働政策研究・研修機構「完全失業率、有効求人倍率」より

 

日本は2016年にキャリアコンサルタント登録制度が創設されました。キャリアコンサルタントとは、キャリアコンサルティングを行う専門家で、若者の自立支援機関、教育機関、ハローワークなどの需給調整機関、企業など幅広い分野で活躍する人を指します。

登録試験機関が行うキャリアコンサルタント試験を受け、専門の資格を得て活動します。厚生労働省はキャリアコンサルティングの定義として、「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行う」としています。

つまり、キャリアコンサルタントは求職者、求職者と企業と結ぶエージェントやハローワーク、採用する企業のいずれにおいても活躍するフィールドが設けられていることになります。

 

下のグラフは、キャリアコンサルタントの活動の場の変化を示したものです。就職氷河期にあたる2006年ごろはハローワークなどの需給調整機関で働く人が50%程度を占めており、求職者の就職支援が主な活動フィールドだったことがわかります。

しかし、2022年には20%まで下がりました。その一方で、30%以下だった企業領域が2022年には40%を超えるようになっています。

キャリアコンサルタントは、求職者の就職支援からキャリアアップ、人材育成支援へと主な活動が変化しているのです。

 

■キャリアコンサルタントの主な活動の場

希望退職者募で狙い撃ちされるゼネラリスト世代


キャリアアドバイザーやキャリアコンサルタントに相談する人は、仕事を探している人から、企業ですでに仕事をしている人が多くなったというのは、見てきた通りです。

実際に多い相談内容は、現在の仕事に関するものが第1位。能力開発やキャリア・プランが2位でした。

 

※労働政策研究・研修機構「キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査」より

 

キャリア形成や学び直し、リスキリングなど、現在の就業環境においていかに成長するのかという視点に重点が移っています。

これは、企業が求める人材も変化していることに起因しています。

 

高度経済成長期以降、日本の企業の多くは内需の拡大に合わせて成長してきました。組織規模が急速に肥大化する中で、ほとんどの経営者は組織形態を維持するための仕組み化づくりに腐心してきました。

個人が専門的な能力を発揮できる組織形態よりも、バランス力に優れた人物を育て、組織同士の調整力を働かせる人材を大切にしてきたのです。それが結果的として、年功序列型の組織形態へと発展し、数多くのゼネラリストを輩出することになりました。

新卒偏重型の採用形態となったのも、企業文化に馴染み、調整力のある人材を求めた結果によるものでした。

 

日本が育んできた組織は、品質の高い製品やサービスを生み出し続ける点においては、これ以上ないほど優れていたと言えます。日本の製造業やモノづくり産業を支えたのは間違いありません。

 

しかし、内需の拡大が望めなくなり、自動車という主力産業においてさえ、国内の市場規模は縮小の一途を辿るようになりました。転換点を迎えてしまったのです。

そうなると、多くの会社が競争力と高めて他社のシェアを上回ることに力を入れるようになります。また、日本を飛び出して世界で戦える力をつけなければなりません。

競争力を強くするため、製品を生み出すサイクルを高める必要が出てきたのです。企画力やアイデア力、創造力、統率力など、専門的な知識・能力を持つ人が必要となりました。かつてのゼネラリストはむしろ重荷になります。

 

フジ・メディア・ホールディングスや日産自動車、NEC、富士通、キリンホールディングスなどの名だたる企業が従業員の削減を行っていますが、対象となる年齢の多くが40~50代。ゼネラリストが求められていた時代の人びとです。

自律型の人材を求めるようになった背景は?


多くの企業が求める人材の性格にも変化が表れています。

 

新型コロナウイルス感染拡大は、ビジネス環境が短期間で激変するリスクがあることを知らしめました。このとき、強みを発揮したのは小回りの利く会社でした。

王将フードサービスは、中華料理・ラーメンチェーンの中でいち早くテイクアウト・デリバリーを浸透させました。王将はコロナ禍という外食産業の大激変のさなかでさえ、わずか6%の減収に留めた会社です。ライバルで「日高屋」を運営するハイデイ日高は、30%もの減収に襲われました。

 

王将は厳しい研修制度があることでよく知られていますが、その結果として自律性の高い従業員が集まっています。

王将は500以上の店舗を運営しています。それだけの数の店に瞬時にテイクアウト・デリバリーの仕組みを設けるのは簡単ではありません。それが実現できたのも、各店舗や人材の自律性の高さゆえでしょう。

 

下の表は、帝国データバンクが企業に対して求める人材像について調査したものです。2017年2月と2020年10月に実施した内容の比較です。

※TDBカレッジ「企業の求める人材像の変化と“性格スキル”とは~景気のミカタ~」より

 

2017年は「意欲的である」「素直である」といった性格が重視されていました。2020年はその数字が下がり、「問題意識が強い」「主体性がある」といった項目が高まっています。

新型コロナウイルス感染拡大により、自ら課題を見つけ、それを解決しようとする自律性の高い人材が求められるようになっているのです。

 

日本企業の弱点の一つに、意思決定の遅さがあります。組織規模が大きくなれば、それだけ承認プロセスが煩雑になり、決裁までに時間がかかります。

それが製品サイクルの遅さに繋がる要因の一つになっています。しかし、近年では承認プロセスを簡略化し、迅速に意思決定できるようになってきました。

組織形態が変化し始めているため、求められる人材も変わっているのです。

 

キャリアアドバイザーやキャリアコンサルタントは、デジタル人材輩出などに学び直しの機会を提供するだけでなく、意識の持ち方そのものを変化させることに重点が移るでしょう。

有効求人倍率が高止まりする可能性は高く、中期的にも企業の課題解決を行うキャリアアドバイザー・キャリアコンサルタントが活躍すると予想できます。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。