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M&A一般 2023.8.30 配信

2022年秋(9月・10月・11月)は外食企業のM&Aが活発に

2022年秋(9月・10月・11月)は外食企業のM&Aが活発に

案件数では歴代2位だった2022年のM&A


2022年に国内企業が発表したM&Aは総額15.8兆円で、2021年比で2割減少しました。2017年以来の低水準。1,000億円を超える大型案件は36件で、総額は8.4兆円。前年比3割減少しています。

ただし、案件数は合計4,551件で、1980年の集計開始以来歴代2位の規模となりました。

ベンチャー企業のエグジットとしてM&Aを選択するケースも


M&A件数が多い要因として、経営者の高齢化が進行していることによる、後継者問題の解決を急いでいることが挙げられるでしょう。日本の中小企業数は350万。小規模のM&Aが活発に行われています。

2022年はウクライナ危機に端を発するエネルギー高でインフレが加速し、それに伴って人件費も高騰しました。人手不足も加速し、アルバイトの時給も上昇しています。

サービス業などを中心として単独での経営に限界を感じ、売却を選択するオーナーは少なくありません。

 

M&Aの仲介サービスが充実したことも背景にあります。1987年のM&A事業者は24社ほどでしたが、2020年は370社程度存在することが分かっています。

マッチングサイトなどの手軽なサービスも登場し、これまでM&Aが選択肢に入らなかった建設業や製造業を営む小規模事業者も、会社の売却を行うようになりました。

 

ベンチャー企業の若い経営者も、エグジットの手段としてIPOではなく、積極的にM&Aを活用する動きが見られます。

 

AIアルゴリズムの設計や実装を行うZeroは、2022年1月にネオマーケティングに買収されています。Zeroは3期目の新しい会社。ネオマーケティングと取引のあるクライアント企業に対してAIを活用した精度の高いソリューションを提供し、Zeroの企業価値を高めることができると判断しました。

 

2022年5月には、自動機械学習ソフトウェアの開発を行うaiforce solutionsがAI insideに買収されています。aiforce solutionsは1億円以上の営業損失を計上しており、投資が先行している状態。このような会社の場合、資金調達を重ねなければなりません。本業に集中できない経営者も多く、M&Aで経営を安定させた上で開発に専念することを望むケースがあります。

外食企業のM&Aが活発化した2022年9月・10月・11月のM&A


2022年秋は、外食企業のM&Aが目立ちました。2022年3月にまん延防止等重点措置が解除され、飲食店は自由に営業ができるようになりました。しかし、コロナ禍の時短協力金による収入効果は大きかったのも事実。更に居酒屋店など、一部の業態は需要が完全に回復していません。

 

それが飲食企業のM&Aを加速させた背景にあります。

 

2022年9月に鳥貴族ホールディングスが、ダイキチシステムを子会社化しました。ダイキチシステムは「やきとり大吉」を運営しています。

 

ダイキチシステムは展開する居酒屋店のほとんどが、フランチャイズ加盟店。しかも、郊外型の小規模店を得意としています。鳥貴族は全体の4割がフランチャイズで、繁華街の大型店を得意としています。鳥貴族が運営する店舗と顧客の取り合いが起こりません。

鳥貴族はフランチャイジーとのパイプが構築できるなど、メリットの大きいM&Aでした。

 

同じく9月にはクリエイト・レストランツ・ホールディングスがベーカリーショップのサンジェルマンをJTから取得しました。

クリエイト・レストランツはフードコートや居酒屋店など、様々な業態の飲食店を展開しています。ベーカリーショップはコロナ禍の影響を受けづらく、一定の集客が望める業態です。

M&Aによって事業ポートフォリオを強固なものとしました。

 

10月には小僧寿しが特定子会社のアニスピホールディングスの株式を、アニスピの代表取締役に譲渡しています。この会社はケアハウスなどを運営しています。小僧寿しの非中核事業で、売却によって経営資源を本業に集中することができます。

コロナ禍のテイクアウト・デリバリー需要も一服し、小僧寿しは新たな事業戦略を構築しなければなりません。非中核事業の売却も重要な経営判断の一つです。

M&Aを実施するのに適切なタイミング


M&Aは実施するのに適した時期やタイミングというものがなく、「売りたい」「買いたい」と考えたときが最適だと言われています。

これはM&Aが目的ではなく、会社を成長させる手段の一つであるため。もし、M&Aが目的化されているのであれば、経営者は一定のゴールを設定し、それを達成する期間(スケジュール)を設けるでしょう。しかし、そのような経営者はなく、売り手側は「後継者がいない」、「売上が伸び悩んでいる」、「シェアを獲得しきれない」、「DX化を推進しきれず生産性を上げられない」、などの課題を抱え、それを解決する手段としてM&Aを行います。

 

M&Aは仲介事業者などに相談してから、半年から1年ほどかかるケースが多く、平均的な期間は9か月となっています。M&Aの相談が多い月や季節というものは基本的にありません。ただし、2023年の秋から冬にかけては、経済の失速を懸念してM&Aの相談が加速する可能性があります。

視界不良が依然として継続する国内景気


2023年の日本経済は2四半期連続の高成長となり、実質GDPはコロナ前のピークである2019年7-9月期を回復しました。2023年4-6月期の実質GDPは1.5%も伸びています。

下半期のポイントは物価高による個人消費の冷え込み。日本のインフレ率は世界的に見れば低位に抑え込まれているものの、すでに2%を超えて推移しています。

 

食料品、電気、ガスの値上げが家計を直撃し、経済の下押し材料になっていることは間違いありません。物価高は当面、高止まりが予想されており、不動産のように高額なものから食料品に至るまで、買い控えが続くことも予想されます。

消費の冷え込みとエネルギー高、人件費高騰の影響は、多くの中小企業の経営環境を悪化させる要因となる可能性があります。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。