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IT・通信・システム開発 2022.4.6 配信

成長余地の大きいシェアリングエコノミーはM&Aが加速する領域になるか?

成長余地の大きいシェアリングエコノミーはM&Aが加速する領域になるか?

数々のユニコーンを生んだシェアリングエコノミー


シェアリングエコノミーとは、「インターネット上のマッチングにより、個人が保有する資産やスキルを他人が利用できるようにする経済の仕組み」(内閣府「デジタル化による消費の変化とIT投資の課題」)と定義されています。

個人が保有する不動産や自動車、お金、モノ、スキルなどをプラットフォームを介して、第三者に貸し出したり販売する仕組みです。代表的な企業にAirbnb(不動産)、Uber(自動車)、Makuake(お金)、メルカリ(モノ)、ランサーズ(スキル)などがあります。AirbnbやUber、メルカリは上場前に評価額が10億ドル(およそ1,100億円)を超えたユニコーンとして知られています。

シェアリングエコノミーは新型コロナウイルス感染拡大によるIT、DX化の波に乗り、今後更なる成長が期待される分野です。成長戦略としてM&Aを選択する企業も目立つようになりました。

市場規模は2030年までに14兆円を超える?


情報通信総合研究所の「シェアリングエコノミー関連調査」によると、2020年の市場規模は2兆1,004億円。現状のペースで成長した場合、2030年には7兆4,719億円に成長するとしています。この規模は広告業界と同程度であり、国内有数の有望市場に成長する見込みです。

さらに、新型コロナウイルスが抑制され、シェアリングエコノミーサービスの認知度が低いなどの課題が解決した場合、2030年に14兆4,526億円という巨大産業に成長する可能性を秘めているといいます。シェアリングエコノミーは、携帯電話などの電気通信事業の市場規模13兆円を上回る潜在性を秘めた重要な産業です。

※情報通信総合研究所「シェアリングエコノミー関連調査」より

シェアリングエコノミーの各カテゴリーと、サービスを提供する国内の企業は以下のようになっています。2020年の市場規模をカテゴリー別に見ると、モノが9,577億円(全体の45.6%)で圧倒的に高くなっています。

※情報通信総合研究所「シェアリングエコノミー関連調査」より

コロナ禍で営業黒字化を果たしたメルカリ


新型コロナウイルス感染拡大の恩恵を受けた代表的な企業がメルカリ。緊急事態宣言の発令によって強力な行動制限が課されると、店舗に足を運んでいた消費者が一斉にECやアプリへと向かいました。

メリカリ国内の流通総額は緊急事態宣言が発令された2020年4-6月に1,804億円となり、前年同期間比39.6%も増加しています。不調だった米国事業も急速に流通総額を伸ばしました。2020年4-6月は284百万ドル。前年同期間比2.8倍です。

■メルカリ国内のGMV(流通総額)とMAU(アクティブユーザー数)の推移

■メルカリ米国のGMV(流通総額)とMAU(アクティブユーザー数)の推移

メルカリは2021年6月期の売上高が前期比39.1%増となり、51億8,400万円の営業利益(前年同期は193億800万円の営業損失)を出しました。上場以来初めての黒字化を果たしたのです。メルカリは上場前から米国進出をしていましたが、eBayなどの強力なライバルに中古市場のシェアを握られて苦戦が続いていました。先行投資が嵩んでいる状態だったのです。

黒字化によって風向きが一気に変わりました。

空間の貸し借りに商機あり?


シェアリングエコノミーの市場規模において、最も成長期待が高いのはスペースです。楽観的なシナリオでは2030年に4兆3,343億円となる見込みです。2020年比で13.3倍という驚異的な成長余力を持っています。ベースシナリオでも2兆3,513億円であり、2020年比7.2倍となります。

スペースを活用するシェアリングエコノミーの代表的な企業は民泊のAirbnbですが、国内では貸会議室のTKPが良く知られています。

TKPは2020年2月期に売上高が前期比53.0%増の543億4,300万円という驚異的な成長力を見せました。

 

■TKPの業績推移

決算短信より筆者作成(営業利益の目盛は右軸)

TKPは2019年4月に世界110カ国で「リージャス」ブランドのレンタルオフィス事業を展開するIWG社とその子会社Regus Group Limitedとの間で、日本リージャスグループホールディングスの全株式を取得する契約を締結。500億円での巨額買収となりました。

日本リージャスは150拠点でフレキシブルオフィス、コワーキングスペースを提供しており、貸会議室事業を中心に展開していたTKPが、シェアオフィス事業へと進出したことになります。TKPは貸会議室事業でケータリングなどの付帯サービスを育てており、シナジー効果も大きいと判断していました。

残念ながら、買収直後に新型コロナウイルス感染拡大という不測の事態に襲われ、業績は一時的に悪化しましたが、経済の回復とともに貸会議室やシェアオフィスの需要は戻ると考えられます。米Google社は2021年4月にリモートワークを廃止し、オフィスに戻るよう命じました。

大手企業を中心にオフィスでの仕事は重要な役割を担っています。意見を交わすことで、新たなアイデアが出るだけでなく、組織の結束に繋がるためです。オフィスに集まる機会が多くなれば、貸会議室の利用も増加が見込まれます。

政府がスタートアップ庁設立を計画するなど、起業家向けのシェアオフィスの利用も増加が見込まれています。

シェアリングエコノミーは、”仕入れ”が重要なカギを握っており、TKPはリージャスの買収によって大量の”在庫”を持つこととなりました。シェアリングエコノミーサービスを提供する企業がM&Aによって事業を拡大する動きは、今後一段と高まるものと予想できます。

 

【シェアリングエコノミーの主なM&A】

〇クラウドワークスがコデアルを子会社化
スキル提供型シェアリングプラットフォームを展開するクラウドワークスが、2021年10月にIT人材マッチングサービス「CODEAL」を運営するコデアルの全株式を取得しました。コデアルは1万5,000人を超えるIT人材を抱えています。クラウドワークスは月額課金型のサービスを拡充するため、買収を決めました。

 

〇メルカリが金融プラットフォームのOrigamiを買収
2020年1月メルカリの子会社メルペイが決済サービスを提供するOrigamiの株式を取得し、子会社化すると発表しました。Origamiは中小事業者のキャッシュレス化を推進してきた会社です。メルペイは月間1,450万人の顧客基盤を抱え、メルカリ内外で決算する汎用性の高い仕組みを提供してきました。買収によって顧客基盤を拡大し、利便性の高いサービスを提供します。
メルカリは決済サービスを提供することで、モノのシェアリングサービスを提供するだけでなく、メルカリの経済圏を広げることに注力しています。決済サービスの買収は、メルカリが事業の幅を広げるだけでなく、ビジネスモデルを進化させる動きと見ることができます。

執筆者 コンサルタント/ライター フジモト ヨシミチ

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。
現在は中小企業を中心としたコンサルティングと、ライターとして活動しています。
得意分野は企業分析とM&Aです。