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M&A一般 2026.6.11 配信

M&A完了後の「大掃除」がリスクの分かれ目
~見えない義務」知ってますか?

M&A完了後の「大掃除」がリスクの分かれ目 ~見えない義務」知ってますか?

はじめに


先日、ある会社の元オーナー、山下さん(仮名)と話をする機会がありました。
一昨年M&Aで会社を売却し、吸収合併のため、会社の法人格は消滅したようです。


【吸収合併とは】
A社がB社の事業・資産・負債などすべての権利義務を引き継ぎ、事業を引き継いだB社の法人格は消滅するというM&A手法。
消滅した会社には通常の株式譲渡のように、株主に対しては対価が支払われます。
これに対して「新設合併」では、A社とB社など複数の会社が統合し、新しいC社を設立。統合した各社は消滅し、すべての権利義務はC社に引き継がれます。


このとき、旧会社の社員たちが「見えない義務」についての知識がなかったことにより、大きなリスクにさらされるところでした。
見えない義務とは?大きなリスクとは?
まずは、この事例について詳しく見てみましょう。

1. M&A後の大掃除こそリスクの分かれ目


1-1. いよいよ新体制!大掃除で古いものは何もかも捨てていい!?

今回のM&Aは吸収合併であったため、山下さんの会社は消滅することになっていました。

買収した企業の目的は、主に立地と取得ハードルの高い複数の許認可でした。
つまり、買い手にとっては、取得した会社の形あるもの(建物、設備、備品、書類など)は重要ではありませんでした。

M&Aの契約がすべて完了し、いよいよ新体制。
新会社では組織だけでなく、建物や設備も大リフォームが行われる予定で、消滅する旧会社時代の、古い物品、オフィス家具、紙の書類などは、必要なもの以外廃棄するように言われていたようです。

買い手企業では業務はIT化されており、書類などはほとんどがペーパーレス。
大リフォーム前に大掃除に当たった旧会社の社員は、「旧会社は消滅する」という言葉を念頭に置いて、法律上保存義務のある書類があることを知らずに、創業当初からの古い書類は「不要」と判断して廃棄してしまいました。

消滅するとはいえ、決算だけは通さないといけないので、決算に関係する書類やデータだけはなんとか保存して、税理士に渡しておいたようです。

また、パソコンも全台入れ替えとのことで、パソコンも廃棄。
つまり、過去のすべてのメールも消えてしまいました。
※メールはIMAP方式ではなくPOP3方式であったため、メールデータは各パソコンの中に保存されていたのでした。

※IMAP・POP3については7-5 でご説明します。

今回の場合、「会社が消滅しても法律上保存義務がある書類が存在する」ということが周知されていなかったのです。

さて、困ったことになりました。
これでは、せっかくの新会社は後に大きなリスクにさらされる危険があります。

後の「8.保管管理体制」の項目で、実際の所どうなったかをお話しすることにしましょう。

いよいよ新体制!大掃除で古いものは何もかも捨てていい!?

1-2. 「見えない義務」とは書類の保存義務のこと

M&Aでの中でも、特に吸収合併の場合、譲渡された会社は吸収され消滅しますから、社名も変わり、オフィスや設備もリノベーションされると、「人材と技術と販売網以外はもう旧会社の痕跡は何も残さなくていい」と考えても不思議ではありません。

しかし、消滅する会社にも「見えない義務」が存在します。それは、重要書類の保存です。
旧会社がたとえ吸収されて消滅した場合でも、会社が存在していた時のトラブルや調査が後になって入る可能性があります。

その際の証拠書類となるものですから、過去の書類やデータは、法律によって一定期間保存が義務付けられています。

例えば、税務調査は、最大7年前まで遡られる可能性がありますから、会社が消滅しても7年分は保存が必要なのです。
株主名簿などは原則永久保存なのです。

そこで、このコラムでは、「誰がどの書類をいつまでの保存する義務があるのか」という「見えない義務」について詳しく解説します。

※「書類」という言葉には、紙の書類だけでなく電子データも含まれます。電子メールで受け取った請求書や契約書なども対象です。

2.M&Aの種類別「誰が保存すべきか」


M&A(企業の買収や合併)には大きく3つの種類があります。
その種類によって、書類の保存義務を負う相手が変わるため、まずはここをしっかり理解しておくことが重要です。

 

2-1. 株式譲渡の場合

株式譲渡とは、会社の「株」そのものを売る方法です。
この場合、売られた会社の法人(組織体)はそのまま続きます。
株主(オーナー)だけが変わるので、過去の契約書や帳簿、労務記録などはすべて買い手側がそのまま引き継ぐことになります。

【例】A社がB社の株を100%取得した場合、B社はA社の子会社になりますが、B社という会社自体は消えません。したがって、B社が過去に作成・保管していたすべての書類の保存義務は、引き続きB社(実質的にA社グループ)が負います。

誰が保存すべきか?

2-2. 事業譲渡の場合

事業譲渡とは、会社の「事業」だけを売る方法です。
この場合、売り手側の会社(法人)はそのまま残り、所有者も変わりません。
したがって、書類の保存義務は「売り手側」に残ります。

「事業を売るのだから書類も不要だ」と思うかもしれませんが、法人が続く限り保存義務は会社の所有者にあります。
ただし、譲渡契約書で特定の書類(顧客リストや技術資料など)の引き継ぎが取り決められている場合、その部分は買い手側も保管する必要があります。

【例】山田氏が所有するC社がD社に製造部門の事業を譲渡した場合でも、C社は山田氏の所有であることに変わりなく、法人もそのまま存続します。
会社法や税法上の帳簿保存義務は引き続きC社が負います。
ただし、契約書で「過去3年分の製造記録をD社に引き渡す」と定められていれば、D社もその記録を保管する義務を負います。

2-3.吸収合併の場合

株式譲渡や事業譲渡の場合は、譲渡した法人がそのまま残るため、書類もそのまま保管されやすいのですが、一番、間違いやすいのが吸収合併のケースです。
「吸収合併」とは、1つの会社が他の会社を「吸収」して、吸収された会社が「消滅」するという方法です。

この場合、たとえ消滅しても、会社の書類の保存義務は「存続する会社」に全て引き継がれなければなりません。
「社名も変わったし、元の会社は消滅した」と思うかもしれませんが、法的には、存続会社の法人格がそのまま旧会社を継続しているということになります。
したがって、昔の書類を廃棄する理由にはなりません。

【例1】E社はF社を吸収合併しました。
F社の法人格は消滅しますが、F社が保管していた株主総会議事録や経理帳簿、労務記録などの書類は、すべてE社が保存義務を引き継ぎます。
もし、社名を「G社」に変更した場合は、G社が引き継ぐことになります。

まとめると:
株式譲渡=買い手側
事業譲渡=売り手側(原則)
吸収合併=存続会社
が保存義務を負います。

3.「どの書類を」「いつまで」保存すべきか


.「どの書類を」「いつまで」保存すべきか

具体的に何をどれくらい期間保存しなければならないのかは、会社法・税法・労働関係法令などの複数の法律で定められています。
以下のように書類の種類ごとにまとめました。

【会社法に基づく書類】
・株主名簿 → 保存期間:永久保存
・計算書類・事業報告 → 保存期間:10年
・株主総会議事録・取締役会議事録 → 保存期間:10年

※不動産の売買を行うときにも、その不動産が発生した当初からの履歴が必要となります。同じように会社も、会社発生時からの所有者(株主)の履歴が必要となる場合があるため、株主名簿は会社が存続する限り保管しておく必要があります。

【労働関係法令に基づく書類】
・健康診断個人票 → 保存期間:5年
・出勤簿・タイムカード → 保存期間:3年
・雇用契約書・労働条件通知書 → 保存期間:3年
・賃金台帳 → 保存期間:3年
・労働者名簿 → 保存期間:退職後3年

【税法に基づく書類】
・源泉徴収関係書類 → 保存期間:7年
・消費税関連書類(インボイス等) → 保存期間:7年
・帳簿・決算書類・請求書等 → 保存期間:7年(欠損金あり→10年)

※2026年2月2日時点の法律に基づいています。

4. 保存義務に違反したら何が起こるのか


書類を保存していなかった場合のペナルティは、大きく3つに分けられます。
特に注意したいのが、書類を保存していなかったことにより、証拠書類がない場合、税務署や訴訟の裁判の場で、「推定」の値でペナルティが課される場合があります。
どれほど反論しようとも、証拠となる書類がないので、その説得力は限定的となってしまうのです。

4-1. 行政罰(政府からの罰則)

会社法違反:株主総会議事録や取締役会議事録の不保存には100万円以下の過料があります。
税法違反:税法に違反している場合、次のような不利益が発生します。
<青色申告取消>
青色申告の承認が取り消され、欠損金の繰越控除や特別償却などの税務上の特典を受けられなくなります。

<推計課税>
実際の取引記録がないため、税務署が同業他社のデータなどを参考にして所得を「推計」して課税する(推計課税)ことがあり、実態よりも高い所得が認定される可能性があります。
場合によっては、過少申告加算税(10〜15%)や重加算税(35〜40%)なども課されます。

保存義務違反した場合の行政罰

4-2. 民事上のリスク(訴訟での不利益)

契約に関する紛争が起きた際に、証拠となる書類がないと自社の主張を立証できません。特に労働紛争では、タイムカードや雇用契約書がないと、従業員側の主張が「推定で」認められる傾向があります。

例えば、仮に、従業員が残業時間を独自にメモしていたとすると、会社側はその時間が正確なのかどうかを証明することができないため、従業員のメモが採用されてしまうということです。
後程、実際に起こった事例を紹介いたします。

4-3.取引上の信用失墜

書類管理がずさんな企業は、取引先や金融機関からの信用を失います。
M&A完了後の新体制の会社が上場する場合や、銀行から融資を受ける場合、また、新たに別のM&Aを行うケースもあります。
その際、過去に渡る財務資料、労務資料、契約書類などの提出を求められた場合に対応できないと、ビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。
最悪の場合、融資を受けられずに事業が立ち行かなくなることさえあるのです。

5. 書類不備による判決例


書類不備による判決例

書類管理の不備がどれほど深刻な結果をもたらすか、実際の判決や裁決の事例を見てみましょう。
以下はM&Aでの事例ではありませんが、証拠書類がないということによる不利な結果を事例でご紹介します。

事例① ゴムノイナキ事件(大阪高裁・平成17年12月1日判決)

【事件の概要】
工業用ゴムの販売会社の社員が、未払い残業代を争った事件です。
社員は連日にわたり深夜まで(午後10時〜翌午前4時頃まで)残業や休日出勤を行っていたにもかかわらず、残業代が支払われていませんでした。
この会社はタイムカードによる出退勤管理をしていませんでした。
裁判所は、出退勤管理をしていなかった点は「会社側の責任」と指摘し、残業の直接的な証拠が少なかった場合でも、社員の妻が記録したノートなどを根拠に、午後9時までの残業が一律に認定されました。
結果:超過勤務手当約272万円+付加金約230万円=合計約500万円の支払いが命じられました。

【 このケースのポイント】
「残業許可願を出さなかった=残業ではない」は成り立ちません。会社が残業を把握しながら放置していたと判断された場合、証拠が少なくても残業が認定されます。タイムカードなどの記録を残さないことが、逆に会社側の不利になります。

事例② 医療法人徳洲会事件(大阪地裁・平成15年4月25日判決)

【事件の概要】
野崎徳洲会病院の医療事務労働者(勤続25年)が未払い残業代を請求した事件です。
病院では完全週休2日制を導入した後、要員補充をしないため仕事量が増え、多くの職員がサービス残業をせざるを得なかった状況でした。

病院側は「勤務記録表への自主申告」という制度を設けていたが、実質的にタイムカード以外の残業時間は記録されず、残業代が支払われない仕組みになっていました。
裁判所は、レセプト(診療報酬明細書)の作成には毎月10日という期限があり、遅滞が許されないことから、時間外労働が「黙示の命令」で行われていたものと判断しました。
結果:未払い残業代約106万円の全額+同額の付加金が支払いを命じられました。

【 このケースのポイント】
「明示の残業命令がなかった」でも、業務の性質や期限の拘束から黙示の命令があったと認定されることがあります。勤務記録の不備は、こうした認定を促す原因になります。

事例③ 国税不服審判所の裁決事例(推計課税)

【この事件の概要】
中華そば店を営む個人事業主が、帳簿の一部しか保存していなかった事例です。
帳簿に記載した売上金額も出前売上の30〜40%を除外し、さらに仕入先と共謀して納品書や領収書を偽造していました。

国税不服審判所は、税務署による推計課税(同業他社のデータなどを基に所得を算定)を5年分遡及して維持しました。
結果:事業所得の申告もれが5年間で6,000万円以上と認定され、更正処分と重加算税が課されました。

【 このケースのポイント】
帳簿や証拠書類が不十分だと、税務署が「推計」で課税する。実態よりも高い所得を認定されるケースが多く、書類の保存が自社を守る武器になります。

6.その他のケース:会社閉鎖・倒産時・個人事業主の法人成りも保存義務は続く


上記で、「吸収合併」つまり、元の会社が消滅した場合は特に注意が必要、と述べましたが、会社が消滅するケースは他にもありますので、参考のためにご紹介します。

会社が消滅留守ケースは「会社閉鎖」「倒産」「個人事業主の法人成りへの変更」です。
※個人事業主は法人ではありませんが、個人事業主を閉鎖する場合も同じことです。

会社を閉鎖(解散・清算)した場合

清算結了の登記を行った後も、税法上の保存義務は続きます。
清算結了から7〜10年以内であれば、税務署は過去の取引について調査を行うことが可能です。
実務上、清算結了後に元代表者個人に対して追徴課税が行われた事例も報告されています。

倒産(破産)した場合

破産手続き終結後も、税法上の保存期間は続きます。破産管財人から関係者(元役員や債権者など)への引き継ぎが必要になります。債権者が「当時の取引内容を確認したい」と求めてきた際に書類がないと対応できません。

個人事業主が法人成りする場合

個人事業主が法人を設立した場合、意識が法人の方だけに向きがちですが、個人事業主の時の書類は一定期間保管しておく必要があります。
個人事業主を廃業したからと言って義務が消えるわけではありません。

7.実務上の保存方法と注意点


実務上の保存方法と注意点

7-1.紙書類の保存

M&A後、旧会社と新会社の書類が混在しやすいため、年度別・カテゴリ別に分類して保管することが重要です。火災や水害に備えて、防火・防水対策を講じた場所に保管し、管理者が適切に管理する必要があります。
可能であれば、紙の書類をスキャンしてデータ保存も併用するとなお安心です。

7-2.電子データでの保存

2024年1月から、電子メールで受け取った請求書や契約書など「電子取引データ」の保存が義務化されました。
これを紙で保存することは、原則として認められなくなっています。
電子保存する場合は、クラウドストレージなどを活用し、バックアップ体制も整えておくことが不可欠です。

特に注意したいのは、パソコン内だけに保存している場合や外部ハードディスクなどに保存している場合、パソコンの入れ替えや故障、ハードディスクなどの紛失や破損が起こる可能性があります。

災害にも強いクラウドストレージに保存しておくのが安全でしょう。

7-3. 注意したい「サブスクリプション」の解除

・クラウドストレージ
保存先をクラウドストレージにしておくことで万全かというと、そうでもありません。
新会社に移行するにあたり旧会社で利用していたクラウドサービスも登録を打ち切り、別のサービスに移行するという場合があります。

クラウドのデータを移行せずに登録を先に解除してしまうと、その中のデータも消えてしまいます。

・クラウド型業務ソフト
クラウドの経理ソフトや労務管理ソフトなどを利用していた場合、データの保存先が、該当ソフトのアカウント上にある場合があります。
その場合、前もってcsv などでデータを保存しておくなどをせずに、ソフトを解約してしまうとデータも消えてしまいます。

7-4. M&A特有の注意点

デューデリジェンス(買収監査)での際は、膨大なデータを提出したはずです。
これらの中には各種契約書や財務データなどが含まれています。
これらの書類のリストは、M&Aが完了した後も必ず保管しておきましょう。
一つの理由は、後日「あの契約書が見つからない」という問題が起きた際に、リストがあれば確認できます。
もう一つは、後日、新会社との何らかのトラブルになった際にも、その証拠となる書類やデータを保管していないと、反論すらできないことになります。

旧会社と新会社の書類を区分して管理し、社名変更した場合は旧社名でも検索できるインデックスを整えてください。

7-5. 重要書類だけではない業務資料やメール

保存する必要があるのは、法律で定められている財務資料、契約資料、労務関連資料だけではありません。
個々の社員にゆだねられた業務関連の資料やデータも含まれます。
今後も事業を継続するにあたり、過去の資料やデータが必要となる場合もありますから、それをしっかり見極めることが重要です。

さらに気を付けたいのがメールです。
Gmailのように、IMAP形式(サーバー上に保存されるメール)であれば、他のデバイスからでもアクセスできますが、POP3形式(パソコンに保存されるメール)の場合、パソコンを廃棄するとメールは復活できません。

電子帳簿保存法により、メールで添付されているような帳票類は、パソコンを廃棄した後からでは復活できません。
必ずメールデータをエクスポートして別の場所に保管しておく必要があります。

8. 書類の保存管理体制


8-1.社内規程の整備

文書管理規程を作成し、どの書類をどれだけの期間保存するかを明文化しましょう。
M&A後の書類管理ルールも規程に盛り込み、保存期間一覧表を全社員に周知することで、誤って書類を廃棄するリスクを減らすことができます。

8-2. 責任者の明確化

文書管理責任者を任命し、各部門でも担当者を設置しましょう。
定期的に監査を実施し、保存状況を確認することで管理体制の実効性を高めることができます。

8-3. データ化

紙でしか保存されていない古い書類はスキャンするなどして、原本とは別にデータ化して保存しておくことも一つの方法です。
紙の書類はどうしても劣化しやすく、うっかり廃棄してしまったり、他の書類と混じってしまい、保管場所がわからなくなってしまうリスクも少なくありません。
データ化しておくことで、劣化を防ぐことができ、検索することができるため、見つけやすくなります。

8-4.外部専門家の活用

税理士や会計士に保存すべき書類をレビューしてもらう、弁護士に契約書の重要性を判断してもらうなど、外部専門家の知見を活用することも有効です。
大量の書類を保管する場合は、文書管理専門業者の倉庫サービスを利用することも選択肢の一つです。

【山下さんの会社の保管管理体制】

冒頭でお話しした山下さんの会社の重要書類やデータやメールは社員によって廃棄されてしまいましたが、どうなったのでしょうか?

実は、M&Aのデューデリジェンスの時に、ほとんどの書類は山下さんがPDFにデータ化しており、買い手企業にも渡してありました。
過去10年分を会計ソフトからcsvに落として保存してありました。
会社の代表メールは会社名義のGmailに転送してあったので、他のデバイスからでも閲覧可能となっています。

山下さんによれば、まずは、こうした知識を経営陣とせめて幹部には周知しておいてほしいとのことでした。

まとめ


M&Aが完了した後も、旧会社の書類やデータを廃棄してよいわけではありません。
特に吸収合併の場合、旧会社が消滅しても、書類の保存義務は存続する会社に引き継がれます。

書類の保存義務の所在は、M&Aの種類によって異なります。
株式譲渡の場合は買い手側、事業譲渡の場合は売り手側(原則)、吸収合併の場合は存続会社がそれぞれ義務を負います。

保存期間は書類の種類に応じており、株主名簿は永久保存、決算書や議事録は10年、帳簿や税務書類は7年、労務記録は3〜5年とされています。

これらの義務を守らないと、税務調査による追徴課税や労働訴訟での敗訴など、数百万円以上の損失が発生するケースがあります。
証拠書類がないと、税務署や裁判所が「推定」で判断されることが多く、企業側に大きな不利となります。

対策としては、社内に文書管理規程を整備し、廃棄前には経理責任者や顧問税理士の確認を経る仕組みを作ることが重要です。
また、電子データは電子データとしての保存が義務化されているため、クラウドストレージを活用した保存体制を整えておくことが求められます。

ただし、クラウドを過信することは禁物です。
クラウド契約を解約する際は、データの移行や別途保存することを忘れずに行わないと、解約と同時にデータが消えてしまうことを意識しておく必要があります。

旧会社の書類やデータは一定期間の保存義務があるということを全員に周知しておく必要があります。

執筆者 経営支援・WEBコンサル・WEBコンテンツライター 白河 真琴

中小企業の経営のサポートの経験を活かしながらコンテンツライターとして活動中。
自身の会社のM&Aの経験から企業法務やM&A関連の執筆を中心に行っています。