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2018.03.05 コラム

親父65歳社長、これでいいのだ!息子に継がせたいと思っても、現実は違う。経営とはそんな生やさしいものでは無いのだよ。

親父65歳社長、息子34歳会社員。とある企業の事業承継の現実物語がここにある

生涯のパートナーとの死別

創業から20年。現在は社員が50人を超える、その業界ではちょっと名が知れた企業になった。関東を拠点とする特殊加工部品の製造会社。
若かった時は、奥さんに会社の経理担当として働いてもらった時もあるが、会社が大きくなるにつれ組織化や仕組化の必要性を感じ専任の経理担当もおいた。
実は、二人兄弟の兄が始めた小さな自動車部品工場が傾いた時に、その株式を弟の自分が買い取って始めたのが今の会社だ。
特殊加工部品の製造に舵をきったのは、この辺りではその部品は作っていなかったから。だから、全くノウハウが無い中で、会社を始め
たまたま大学時代の人のご縁で、大手の企業との取引が決まって、トントン拍子に売上も軌道に乗った。
リーマンショックの時は、一時会社が傾きかけた時もあるが、なんとかそう言う時には根っからの幸運があるようで、新しい取引先との契約に恵まれ今になる。
そして、60歳も半ばに差し掛かり、やっとやっと今から旅行でもして人生を楽しもうとした矢先、妻が亡くなった。
俺なんかよりずっと元気だったのに、突然いなくなるものだから、それから半年の記憶は何も無い・・。

新しい買い手は、とても優しい企業

半年以上経って、少し頭が動くようになった時、一つ脳裏にうかんだのは会社の今後のこと。
俺の周りの同じ業界の奴らは、経営者なんてみんな70歳近く。最近では、大きな機械の設備投資ができないと仕事にならないと言って、周りの会社がどんどん廃業をしていく。
そんな中廃業した会社の分も補うように皮肉にも自分の会社の取引が拡大し、どんどん売上が上がる。
そこで、俺は怖くなった。この先拡大する会社の経営を俺はできるのだろうか・・・。若い時のように仕組作りや顧客回りを繊細に緻密にできるのだろうか。
息子は、今時の子。夜になれば部屋にこもってゲームをする生活。経営と言う言葉とは程遠いように親の俺からもそう見える。

そこで数年前から構想はあったが、会社譲渡を本格的に初めてみようと考えた。
最初はいつもお付き合いがある銀行さんに相談。ところが、事業承継の相談が良くある為なのか1年経っても一向にM&Aの話が進まない。
・・・そんな時、昔馴染み相談すると、事業承継を専門にしている会社で真摯に対応してくれる評判がいい会社があると言う。
早速、話半分でイノベーションリーダーズのM&Aオールとか言うM&Aサービス会社に問い合わせをしてみた。

相談に会社に来てくれたM&Aオールのスタッフさんは女性で、まるでM&Aの硬いイメージとは全く異なる。
僕の支離滅裂な話も上手に汲み取ってくれ、上手に<案件概要書>という会社のプロフィールみたいなものも作成してくれた。
そして、売却先を探し始めて1ヶ月も立たないうちに、うちみたいな会社を継承したいと希望する会社が4社見学に来てくれる流れになった。
バタバタの見学劇が終わり、全部とっても良い会社だったが、その中でも事業の親和性がとても高い、何より会社のスタッフたちをとても大切にしてくれそうな”優しい会社”と基本合意契約に向けて進めることにした。

葛藤からの解放

寒い時期。この時期はとっても嫌な思い出が多い。
ついつい考えすぎる癖がある俺が、病気をして倒れた季節でもある。最愛の妻とお別れした時期でもある。
でも、こうして事業承継を決めてからトントン拍子に進んだのも天国のあいつが導いてくれているような気がしていた。
会社を始めて20年。俺は毎夜毎夜ずっと会社のことだけを考えていた。仕組みをもっとうまくできないだろうか・・・良い働き手が来てくれるにはどうしたら良いだろうか・・・大手との提携が決まる前日なんて眠れない時もあった・・でもやり甲斐もあった。
そんな日々の出来事が、M&Aの譲渡契約書を見ながら脳裏をよぎった。

いよいよ会社が新しいオーナーに引き渡しが目前になっていた。何度も何度もよぎった息子への会社承継。
でもそれを辞めた決断をしたことは今でも後悔はない。
きっと会社はこれからの会社に変わっていくことだろう。
俺ができるのは、あと1年何事もなく会社を新しいオーナーに引き継ぐ手伝いをすること。
寒い雪が降るこの季節に空を見上げると、空からは大粒の雪が舞う日が多くなっている。きっと天国の妻のおめでとう、お疲れ様でしたのメッセージが届いたのだろうか。

さぁこれからゆっくり大きな風呂にでも入って、これからの僕の人生と向き合ってみようかと考えると、重い重い肩の荷物が少しずつ溶けていくような気がした。俺の経営は迷いの連続だったような気がする。でも最後にこのような素晴らしいご縁で、新しい会社のオーナーが決定したこと、譲渡できるような会社にできたことが俺の過去を全部肯定されたような気持ちになった。

この記事の編集者

村田 理恵 M&Aコンサルタント
株式会社 INNOVATION LEADERS 代表取締役

起業後、起業家向けのインタビューTV番組を運営。さらに、上場会社のIR部門に特化したIR動画制作を展開。その他、新規事業開発を行い自社コンテンツもM&Aを利用し売却。
現在は、サンプリングメディア「プレゼント付録」事業を展開。また、冠婚葬祭業界のM&A仲介実績では年間2桁の実績値を誇る<M&Aオール>を展開中。