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M&A一般 2026.2.12 配信

【M&A後に発覚】デューデリジェンスをすり抜ける
見えない問題の責任の所在と対策

【M&A後に発覚】デューデリジェンスをすり抜ける 見えない問題の責任の所在と対策

はじめに


「最悪の場合、買収後、事業継続ができなくなる!」
そんな悲劇が起こる可能性があるほどの重大な問題が、デューデリジェンス(DD)をすり抜けてしまうとは。

入念に行ったはずのDDも完ぺきではありません。
中には、調査しなかったのではなく、できなかった事案も。
この記事では、DDをすり抜けてしまった問題が、買収後に発覚したときの責任の所在と対策、そしてリスクを最小化するための方法を、事例を見ながらご紹介します。

1. M&Aで「見えない問題」が発覚するリスクとは


M&Aで企業を買収したとたん、事業継続に支障をきたす問題が発覚する──
このような事態に直面する場合があります。

DDの際に顕在化していない問題の中でも代表的なリスクには下記のようなものがあります。

M&Aで「見えない問題」が発覚するリスクとは

2. DDで問題点がすり抜けてしまう理由


ここでは見えない問題がDDをすり抜けてしまう理由と主な種類についてご説明します。

2-1 .DDの調査範囲には限界がある

DDは、買収対象企業の財務状況や法的リスクを調査する重要なプロセスですが、調査できる範囲には限界があります

【 主なDDの範囲 】
通常のDDで調査される主な項目は、財務DD、法務DD、ビジネスDD、税務DD、人事労務DD、不動産DDIT DD、環境DDなどに分類されます。これらの調査には時間的・予算的な制約があり、すべての問題を洗い出すことは現実的に困難です。
また、DDは基本的に対象企業が提出した資料や情報をもとに実施されるため、提供されない情報については調査のしようがありません。

売り手側が意図的に隠蔽していない場合でも、過去の経緯を現経営陣が十分に把握していないケースもあり、結果として重要な問題を見逃してしまうリスクが常に存在します。

 

2-2. 誰も把握していない過去の経営者時代の問題の存在

中でも困難なのは、過去の経営者時代の問題を現経営者が把握していない場合です。
経営者が何代も代わった場合、以前にもM&Aが行われている場合など、過去の書類や事案について、現経営陣が詳細を知らないケースがあります。

 ■ 2-2-1. 文書化されていない取引や約束

過去の経営者が、文書化されていない口約束で行った取引の存在はやっかいです。
特に中小企業では、経営者と取引先や従業員との間で口頭でのやり取りが行われることが多く、契約書や議事録が残っていないケースが珍しくありません。

例えば、主要取引先との間で「先代からのつきあいなので、2割引で発注する」という口約束があったり、古参従業員に対して「退職金は10%上乗せする」などと個別の約束があったりしても、それらが文書化されていなければ、DDで発見することはほぼ不可能です。

このような口頭での合意や暗黙の了解は、前経営者の個人的な信頼関係に基づいて成立していることが多いため、経営者が交代すると、突然問題として表面化することがあります。

 ■ 2-2-2.  過去の申請書類の不備

過去には、提出書類の記載も、認可を出す行政側も確認が不十分ということが少なくありませんでした。
数字が間違っている、住所が違っている、記載箇所が違うなどの不備があっても書類が通ってしまっていたケースも少なくありません。

しかし、これらの不備が新会社へ移行する場合に障害となる場合があります。

M&Aによる事業承継の際には、改めて詳細な審査が行われることもあり、その時点で過去の不備が発覚し、許認可の取得や更新に支障をきたすのです。

 ■ 2-2-3.  問題が顕在化していない段階での発見困難性

問題が顕在化していない段階では発見が極めて難しいという点も重要です。
・税務調査がまだ行われていない期間の税務リスク
・従業員からまだ申し立てられていないハラスメント問題
・退職者からの未払い残業代の請求
・まだ裁判になっていない、取引先とのいさかい

など、将来的に表面化する可能性があっても、DDの時点では把握できません。

■ 2-2-4.  当時の事情を知る者の不在

過去の経営者が退任や死亡している場合、高齢や病気により記憶が不明瞭の場合、現経営陣が引き継いでいない情報や、旧経営者の個人的なネットワークで行われていた取引については、DD調査チームが把握することは極めて難しくなります。

■ 2-2-5. 意図的な隠蔽による情報の非開示

最も深刻なのが、売り手側が問題を意図的に隠蔽しようとする場合です。
企業価値を高く見せたいがために、不都合な情報を積極的に開示しないことがあります。

例えば、過去の訴訟で和解した案件を「既に解決済み」として詳細を説明しなかったり、重要な取引先や退職者との関係悪化の兆候を軽微な問題として過小評価したり、従業員の退職率の高さを「業界では普通」と説明したりするケースがあります。

 2.3 中小企業特有のずさんな管理体制が問題を隠す

中小企業の場合、内部統制や文書管理が不十分な場合もあります。
限られた人員で業務を回すため、契約書の未整理、議事録の未作成、会計資料の散逸といった状況が珍しくありません。

また、経営者への権限集中も問題を見えにくくします。
意思決定の大半を経営者が行い、組織内で共有されないため、経営者交代や売却時に情報の断絶が生じやすくなります。

さらに、会社資産と経営者個人資産の区別が曖昧なケースもあり、個人支出の会社経費処理や会社資産の個人名義化により、真の財務状況把握が一層困難になります。

 2.4 DD段階では確定できない行政上の認可や検査

2-4-1. DDの段階では判明しづらい問題

M&Aに伴う許認可の取り扱いは、DDの段階で判明しづらい問題の代表例です。

特に吸収合併で社名・経営者が変わる場合、国の事業に関わる、あるいは国有地を賃貸する場合は、更新ではなく新規の申請が必要になる場合もあります。その場合は、会社登記完了後でなければ申請できませんから、DD段階で認可取得の可否が確定できないことは買い手のリスクとなります。

また、建物の増改築時に元の建物の違法性が発見されれば、大規模な改善命令や最悪の場合使用不可となる可能性もあります。
国有地を借りている場合は小規模な倉庫や植樹でも申請が必要で、未実施なら手続きから始める必要があります。

M&Aのデューで襟ジェンスですり抜けてしまう行政上の許認可問題

3. 事例で見る「見えない問題点」


DDで発見できなかった「見えない問題」について、代表的な問題の種類別に事例と対策をご紹介します。

M&Aですりぬける主な問題と対策

3-1 過去の労務問題が一気に噴出したケース

製造業を買収した企業が、クロージング後3ヶ月で複数の元従業員から未払い残業代の請求を受けたケースがあります。
前経営者時代にサービス残業が常態化しており、タイムカードの改ざんや勤怠記録の破棄が行われていました。
DDでは一部の現役従業員へのヒアリングは実施していましたが、既に退職した従業員からの情報収集は行っておらず、問題を把握できませんでした。

結果として、買収企業は約3,000万円の未払い残業代と遅延損害金の支払いを余儀なくされました。退職者による労働基準監督署への通報もあり、企業イメージの低下も招きました。

このケースでは、現役従業員は雇用継続を懸念して真実を話さなかったことも問題発見を困難にした要因でした。
退職者にヒアリングを行うことで、より率直に過去の問題を語ってくれる可能性が高くなります。

※ただし、M&Aが完了するまで、会社譲渡のことは口外できませんから、ヒアリング実施の人選や方法は慎重に行う必要があります。

3-2 環境汚染リスクが顕在化したケース

化学品メーカーを買収した企業が、工場敷地内の土壌汚染が発覚し、浄化費用として数億円の負担を強いられたケースです。
前経営者時代の廃液処理が不適切であったことが原因でしたが、環境DDでは表層部分の調査のみで、深部の汚染状況までは調査していませんでした。
買収後に工場の増築を計画した際、より詳細な環境調査を実施したところ、基準値を大幅に超える有害物質が検出されました。
周辺住民への説明会や行政への報告、さらには浄化工事で約3億円の費用が発生し、工場の稼働停止期間も6ヶ月に及びました。

通常の環境DDでは費用を抑えるために限定的な調査にとどまることが多いのですが、このケースは化学品を扱う事業では徹底した環境調査を行うことで回避できる可能性があります。

3-3 主要取引先との口約束が反故になったケース

卸売業を買収した企業が、最大の取引先との関係が経営者個人の信頼関係に依存していたため、買収後に取引条件の大幅な見直しを迫られたケースです。

前経営者と取引先社長が先代からの仲であり、通常より有利な条件での取引が口頭合意で継続していました。
特に取引の契約は存在しておらず、口約束で仕入れ値が決められていました。

買収後、取引先は市場相場での取引を要求し、結果として利益率が20%低下しました。
この取引先は売上の40%を占めていたため、事業計画の大幅な見直しを余儀なくされました。

※ただし、M&Aが完了するまで、会社譲渡のことは口外できませんから、ヒアリング実施の人選や方法は慎重に行う必要があります。

M&Aの事例で見る見えない問題点

3-4 許認可は更新でなく、新規申請と判明したケース

宿泊業を買収した企業が、国有地の賃貸契約に必要な認可の更新手続きについて行政に問い合わせたところ、「M&Aにより会社自体が変更される場合、許認可更新ではなく新規申請する必要がある」と言われました。
当然、買収完了後、新社名への手続きが完了してから新たに申請することになりますから、クロージングまでに認可が必ず降りるかどうかの確定ができません。

行政側に見通しを問い合わせても「概ね大丈夫だとは思いますが審査してみないとわかりません。」とのことでした。
万が一、認可が下りなければ事業継続自体が不可能となります。

こうした不確実性に対処するためには、契約書に「行政の承認が得られない場合の対処」を明記しておくことが可能です。
例えば、一定期間内に必要な許認可が取得できない場合は契約を解除できる条項や、許認可取得に追加費用が発生した場合の負担割合を定めておくなどの対策が考えられます。

3-5 古い建物の建築確認申請での問題

昭和時代に建てられた工場を含む製造業を買収した企業が、買収後に工場の一部を増改築しようとしたところ、建築確認申請が通らなかったケースです。元の建物が建築基準法に適合していないことが判明し、不適合部分を改善しないかぎり、改築のための確認申請ができない状況でした。

具体的には、増築を繰り返した結果、一部、建築確認未申請の小規模増築があり、一部、適切な避難経路が確保できていないなどの問題などがありました。

また、建築基準法では合法であっても、市区町村の条例にひっかかる、と言う場合も存在します。
これらを回避するには、現在の土地建物と過去からの建築確認申請を徹底的に照らし合わせる事、現地調査、関係者へのヒアリング、行政機関への確認など、多角的なアプローチを行うことが重要です。

また、他の問題と同様に「行政の承認が得られない場合の対処」を明記しておくことが可能です。

4. M&A後に問題が発覚した際の責任は誰にあるのか


M&A後に予期せぬ問題が発覚した場合、「誰がその責任を負うべきなのか」という問いは、多くの当事者が直面する深刻な課題です。
責任の所在を明確にすることは、損害回復の第一歩であり、今後のリスク管理体制を構築する上でも重要な意味を持ちます。

ここでは、売り手企業、買い手企業、DD実施者それぞれの責任範囲と、実際に責任を追及する際の現実的な困難さについて詳しく見ていきます。

 M&A後に問題が発覚した際の責任は誰にあるのか

4.1 売り手企業の責任範囲と限界

売り手企業はM&A契約の表明保証条項により、提供情報の正確性や重大な問題がないことを保証し、違反時には買い手が損害賠償を請求できます。

ただし、売り手の責任には明確な限界があります。
最重要点は、売り手が認識していなかった問題については責任が限定されることです。

多くの条項には「売り手の知る限り」「善管注意義務を尽くした範囲で」という限定文言があり、現経営陣が把握していない過去の問題は表明保証違反に該当しない可能性があります。

この文言を入れるか入れないかで結果が大きく場合があります。
意図的な情報隠蔽は詐欺として損害賠償や刑事責任を問えますが、単に把握していなかった場合は表明保証違反の範囲内でしか責任追及できません。

また、中小企業M&Aでは補償限度額が売買代金の10〜30%程度に設定されるため、甚大な損害には不十分なリスクがあります。
さらに、前経営者が売却代金を使い切っていたり、資産移転済みで賠償能力がないケースもあり、勝訴しても回収できない事態も想定すべきです。

4.2 買い手企業の自己責任が問われる範囲

買い手企業には、十分な注意義務を果たしてデューデリジェンスを実施する責任があります。
適切な調査を行えば発見できたはずの問題については、買い手の自己責任とされる可能性が高いという原則があります。

具体的には、以下のような問題は買い手の調査不足と判断されることがあります。
• 登記簿や公開されている行政処分情報を確認すれば判明した問題
• 現地調査を行えば発見できた物理的な欠陥や設備の不具合
• 取引先へのヒアリングを実施すれば把握できた契約条件の相違
• 過去数年分の財務諸表を精査すれば気づけた会計上の異常値
• 業界の一般的な慣行として確認すべき許認可の状況

買い手企業が自己責任を問われるかどうかは、「通常の注意義務を尽くした買い手であれば発見できたか」という基準で判断されます。
専門家を起用してDDを実施していたとしても、調査範囲が不十分であったり、明らかな兆候があったにもかかわらず追加調査を怠ったりした場合には、買い手の過失と認定される可能性があります。

4.3 デューデリジェンス実施者(専門家)の責任

弁護士、公認会計士、税理士などのDD実施者にも、一定の責任が生じる可能性があります。ただし、専門家の責任は委託された業務範囲と専門分野に限定されるという重要な原則があります。
財務DDを実施した公認会計士は財務諸表の正確性や会計処理の適切性を検証する責任がありますが、法的問題や環境問題の発見責任はありません。

同様に、法務DDを担当した弁護士は契約関係や法令遵守状況を調査する責任がありますが、財務数値の正確性までは保証しません。
DD報告書には通常、調査範囲と限界が明記されています。「調査範囲外」として明記された事項や、「追加調査を推奨する」と記載されていたにもかかわらず買い手が実施しなかった事項については、専門家に責任を問うことは困難です。

4-4 現実的には責任追及が困難

理論的には売り手、買い手、専門家それぞれに責任範囲があるものの、実際に責任の所在を明確にし、損害賠償を獲得することは容易ではありません。
これが、M&Aにおける隠れた問題への対処を複雑にしている現実です。

4-4-1. 損害額の立証の困難さ

問題発覚後の業績悪化が、その問題に起因するのか、それとも買収後の経営判断や市場環境の変化によるものなのか、因果関係の証明が難しいケースが多いのです。

4-4-2. 訴訟コストと時間の問題

損害賠償請求訴訟には、弁護士費用、鑑定費用、訴訟期間中の機会損失など、多額のコストがかかります。
中小企業のM&Aで数千万円の損害が生じたとしても、訴訟に数百万円のコストと数年の時間をかけることが合理的かどうかは慎重に判断する必要があります。

また、訴訟は当事者間の関係を決定的に悪化させます。売り手が引き続き事業に関与している場合や、業界内で評判を気にする必要がある場合には、法的措置を取ることで失うものも大きくなります。

4-4-3. 証拠収集の困難さ

問題が意図的に隠蔽されていた場合、その証拠を見つけることは容易ではありません。
売り手が保有していた資料は既に破棄されている可能性もあり、関係者の証言も時間の経過とともに曖昧になります。

4-4-4.回収可能性の問題

前述の通り、売り手が個人や中小企業の場合、売却代金を既に消費していたり、他の債務の返済に充てていたりして、実質的な資力がないケースが少なくありません。
勝訴判決を得ても、差し押さえる財産がなければ、実際の賠償金回収は困難です。
このような現実を踏まえると、問題が発覚してから責任追及を考えるのではなく、M&A実行前に予防的な対策を講じることの重要性が理解できます。

5. 「見えない問題」のリスクを最小化するための対策


「見えない問題」のリスクを完全にゼロにすることはできませんが、適切な対策によって大幅に軽減することは可能です。ここでは、DDで見逃された問題による損害を最小化するための具体的な手法をご紹介します。

5.1 より徹底したデューデリジェンス手法

通常のDD手法に加えて、より深掘りした調査を実施することで、潜在的な問題を発見できる可能性が高まります。
特に中小企業のM&Aでは、文書化されていない情報や人的ネットワークに依存した取引関係が多いため、書面調査だけでは不十分な場合もあり、下記の方法を追加して行う必要があります。

ただし、ここで注意したいのは、上記の事例でもご紹介した通り、M&Aのプロセスが進行中であることの漏洩リスクがるため、インタビューやヒアリングには細心の注意が必要です。
逆に言えば、漏洩リスクから外部とのインタビューやヒアリングを躊躇してしまう原因でもあります。

「見えない問題」のリスクを最小化するための対策

現役従業員が話しにくい問題を把握するために、退職者へのインタビューは有効です。
在職中は言いづらかった労務問題や不正の情報を、退職後であれば率直に話してもらえる可能性が高まります。
特に、直近3年以内に退職した元従業員、管理職経験者、経理や人事などバックオフィス部門の退職者は、重要な情報を持っている可能性が高いといえます。

インタビューでは、退職理由、職場環境、経営者の人柄、未払い残業代の有無、ハラスメントの実態、不正や違法行為の有無などを確認します。
ただし、退職者の中には会社に恨みを持つ人もいるため、情報の客観性には注意が必要です。
複数の退職者から同様の証言が得られるか、裏付けとなる証拠があるかを確認することが重要です。

5.1.2 主要取引先・仕入先へのヒアリング

契約書が存在しないケース、契約書と実際の取引に差異があるケースでは、主要な取引先や仕入先に直接ヒアリングすることで、口頭での約束や慣習的な取引条件を把握できます。

特に確認すべき点は、過去の経営者個人との関係性や独占供給や最恵待遇などの特別条件の有無などです。
ただし、こちらも、M&Aの事実が漏洩するリスクがあるため、実施のタイミングと方法には細心の注意が必要です。
最終契約直前の段階で、売り手の同意を得た上で実施するのが一般的です。

5.1.3 行政機関への入念な照会

許認可関連の問題は、通常は事業社や事業主が変更となっても、書類上の更新を行えばいい場合が多いため、後回しにされやすいものです。

しかし、吸収合併のように会社自体が変更になる場合は、審査をやり直しと言う場合もあり、その結果いかんでは事業継続に致命的な影響を与える可能性もあります。
許認可の取得状況を書面で確認するだけでなく、実際にひとつひとつ行政窓口を訪問して詳細を確認するくらい、慎重に行うことをお勧めします。

5-2 M&A保険(RWI保険)の活用

M&A保険とは、表明保証違反があった場合、買い手の損害をカバーするという買い手が加入する保険です。(一部売り手のための保険もあります)
国内の中小企業のM&Aではまだ利用率は少ないものの、今後、M&Aの増加と共に、利用率は上昇していく可能性があります。
主な特徴とメリットは以下の通りです。

■保険料:買収金額の1%から3%程度
■補償限度額:買収金額の10%から30%程度
■補償期間:通常1年から3年(税務関連は5年から7年も可能)
■免責金額:補償限度額の0.5%から1%程度
■メリット
RWI保険の最大のメリットは、売り手の資力に依存せず補償を受けられる点です。
特に、売り手が売却代金を既に使い切っている可能性がある中小企業のM&Aでは、実効性の高い保護手段となります。
また、売り手側も補償責任から解放されるため、M&A交渉がスムーズに進みやすくなります。
■デメリット:
保険会社も独自のDDを実施するため、手続きに2~4週間程度の追加期間と、DDコストが発生します。
また、一部のリスク、不正情報開示などは補償対象外となります。
RWI保険は、買収金額が5億円以上の案件で活用されることが多く、それ以下の規模では保険料負担が相対的に重くなるため、費用対効果を慎重に検討する必要があります。

5-4 売り手との継続的関係の構築

売り手側の経営者にアドバイザーやコンサルタントとして一定期間関与してもらう「ロックアップ条項」を契約書に盛り込むことも有効です。
過去の経緯を知る人物が身近にいることで、問題が発覚した際の原因究明や対応がスムーズになります。

前経営者の関与により期待できる効果は以下の通りです。
• 過去の取引や約束の背景説明取引先や金融機関との関係の円滑な引き継ぎ
• 行政機関との折衝における協力
• 従業員との信頼関係の維持
• 業界特有の慣習やノウハウの伝承

前経営者との顧問契約では、報酬、契約期間(通常6ヶ月から2年程度)、業務内容、情報提供義務、競業避止義務などを明確に定めます。
特に、問題が発覚した際の協力義務を契約に盛り込んでおくことで、原因究明や対応がスムーズになります。

まとめ


M&Aのデューデリジェンスには構造的な限界があり、文書化されていない取引、過去の労務問題、許認可の問題などが事後に発覚するリスクは完全には排除できません。

問題が発覚した際の責任は、売り手の表明保証違反、買い手の調査不足、専門家の過失など複数の要因が絡み合い、実際の責任追及は困難を伴います。
そのため、表明保証条項やエスクロー口座の設定といった契約上の対策に加え、退職者へのインタビューや行政機関への入念な照会など、より踏み込んだデューデリジェンス手法の実施が重要です。

さらにM&A保険の活用や段階的買収の検討により、発見困難なリスクに対する備えを多層的に構築することが、安全なM&A取引の実現につながります。

執筆者 経営支援・WEBコンサル・WEBコンテンツライター 白河 真琴

中小企業の経営のサポートの経験を活かしながらコンテンツライターとして活動中。
自身の会社のM&Aの経験から企業法務やM&A関連の執筆を中心に行っています。