迫る塾業界の再編の波、備えは万全か 〜変化の兆しとM&Aの現実〜

今回は、塾業界の現状と、今後さらに進むと見られる「再編＝M&A」の流れについて、わかりやすく整理して解説します。

■ 業界全体の流れ：市場は縮小、ニーズは多様化

まず、大きな流れとしておさえておきたいのが「少子化による市場縮小」です。生徒数が減っている以上、どれだけ頑張っても市場全体のパイは広がりません。

しかし、ニーズは変わっています。昔のような「集団授業で偏差値アップ！」から、いまは個別指導・オンライン・プログラミング・探究学習など、子どもたちの学び方もどんどん多様化しています。

同時に、ICTツールやAI教材を取り入れる塾も増え、「どう教えるか」だけでなく「どう運営するか」も勝負の分かれ目になっています。

■ M&Aが増えている理由とは？

最近、塾業界ではM&A（企業の買収や統合）が活発に行われています。その背景には、こんな事情があります。

○人口減少による競争激化
○教室長・講師の人材不足
○ICT対応の投資負担
○経営者の高齢化・後継者不在

つまり、「このまま一人でやっていくのは厳しい」という経営者が増えてきているわけです。

その一方で、資本力のある大手や教育ベンチャー、投資ファンドなどが、成長スピードを上げるために買収を進めている。これが現在のM&Aの構図です。

■ 今後の再編はどう進むのか？

今後、業界の再編はさらに進むと見られています。特に次の3つのパターンが注目されます。

① 大手による中小塾の買収
地域密着型の個別指導塾などが、大手グループに取り込まれていく流れ。すでに多くの事例が出ています。

② EdTech企業との連携・統合
AIやICTツールをもつ企業が、塾にシステム提供しながら、運営にも踏み込んでくる可能性。“教える×テクノロジー”の融合です。

③ 異業種からの参入
学童、介護、不動産など、異業種が「地域インフラ」としての塾に注目し、買収や提携を進める動きも。

最近のM&A事例から見る、塾業界の動き

【やる気スイッチグループが寺子屋グループを買収】

実施時期：2024年12月

個別指導塾「スクールIE」などを運営する総合教育サービス企業のやる気スイッチグループが、愛媛県を中心に集団指導ブランド「TOP ONE」「TERAKOYA」などを展開する寺子屋グループを取得しました。

やる気スイッチグループの教育メソッドと、寺子屋グループの地域密着型の経営ノウハウを融合させることにより、四国エリアでの教育サービスの拡大を図るものです。

【教育DXプラットフォーム展開のスタートアップMoonJapanによる学習塾の買収】

実施時期：2024年12月

MoonJapanは教育系スタートアップ。小中学校、高校で義務化された「総合的な探求の時間」向けに提供されるソーシャルビジネス構築体験ができるプラットフォームなどを展開しています。

学習塾を事業買収し、2025年4月から総合型選抜特化の受験対策「MoonAcademy」の計画を進めています。EdTech企業が学習塾の運営に踏み込んだパターンの一つだと言えるでしょう。

これからの塾経営に求められる視点

塾業界は今、「自塾をどう続けるか」「どこかと組むか」という選択に直面しています。

大切なのは、環境の変化を正しく読み、自塾の価値を客観的に見直すこと。その上で、M&Aもひとつの選択肢として考えてみるタイミングが来ているのかもしれません。