国策半導体産業期待の星ラピダスが試作ライン稼働に向け本格調整

ほんの数年前まで、日本の半導体産業は“過去の栄光”と呼ばれていた。
だが、2025年の春。北海道の静かな町、千歳市で、一つの工場が動き出した。名前は「ラピダス」。
それは、未来のチップをつくる、まだ見ぬ旅の始まりだった。

試作品が生まれた日 ～千歳から、世界へ～

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この物語の始まりは、2022年。
日本の政府が「やっぱり半導体って必要だよね」と思い出し、企業たちを呼び寄せてつくった会社、それがラピダスだ。

「最先端をやろうじゃないか」と、ラピダスは宣言した。
目指すのは、2ナノメートルという、とてもとても細い線で作られた半導体チップ。
この“ナノメートル”という単位、ざっくり言うと髪の毛の太さの何万分の1。

 

2025年4月。千歳の工場に設けられた試作ラインで、試作品の製造が始まった。
これは、まだ量産ではない。けれど「できるかもしれない」が「ほんとうにやってみた」に変わる瞬間だった。

この成果の裏には、IBMとの協力、EUV（極端紫外線）という最新技術の導入、
そして、日本各地から集まった技術者たちの奮闘がある。

 

まるで、SF小説の研究所のようだが、実際に動いている。
千歳には、さらに後工程を担う拠点「RCS（ラピダス・チップレット・ソリューションズ）」もできた。
ここでは、たくさんのチップを“重ねて使う”ための技術――チップレットや3Dパッケージという、
次世代のしくみが研究されている。

ラピダスという希望と、乗り越えるべき現実

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だが、未来はいつも簡単には来ない。

 

ラピダスが目指す「量産」は、2027年。あと2年ある。
けれど、最先端チップの量産というのは、ものすごく難しい。

完成した試作品が、全部ちゃんと動くとは限らない。
むしろ、うまくいかないものも多くて、それをどう減らすか＝歩留まりを上げるかが課題になる。
これは、韓国のサムスンも、アメリカのインテルも、苦労している問題だ。

 

でも、ラピダスには希望がある。なぜなら、この国は過去に、世界をリードするチップを作った経験があるから。

政府も本気だ。すでに1兆8000億円以上の支援を表明し、まるで未来への投資のように背中を押している。

 

そして、もう一つ、忘れてはいけない視点がある。
この挑戦は、「経済安全保障」のためでもあるのだ。
つまり、「日本の中で最先端のチップが作れること」そのものが、国の安全を守る力になる。

もし、ラピダスが成功すれば、これは単なるビジネスの話ではなくなる。
それは、“つくれる国”としての日本を取り戻す物語になる。