九州の名門式場アルカディアの倒産 ～静かに続く再出発～

人生で最高の喜びを分かち合う場所だったはずの結婚式場が、カップルの悲嘆で溢れている。夢の舞台裏で何が起きたのか──静かに、けれど鋭く観察してみたい。

ガラス細工の経営

九州で結婚式場を運営していた「アルカディア」。2002年に欧米様式の結婚式場「ロイヤルパークアルカディア」を開業し、その後も小倉や佐賀、太宰府などに式場を展開していた名門企業だ。最盛期の売上高は46億円を超えていた。

その名のとおり、理想郷を演出するはずだったこの会社は、コロナ禍の嵐に耐えきれず、倒産したのだ。

相次ぐ延期と中止。売上は13億円程度にまでしぼんでしまう。最後の頼みの綱だった助成金も不正受給が発覚。12億円もの返還命令を受け、もはや立ち直る余地はなかった。

結婚式場とは夢を売る場所でありながら、夢を維持するために相当な現場対応力が必要だ。仕事をする指針を失った従業員たちはモチベーションをなくし、結婚式場の力は潮が引くように失われてしまう。

救済に向けて差し出された手

突然の破産。式場に通っていたカップルたちは、手にしていたはずの未来図を奪われた。50万円ほどの前金を支払い、突然の破産通知を受け取ったカップルもいた。

前金だけを支払い、式もできず、泣き寝入り。まるで、目の前にかけられたハシゴを、祝福の直前に引き抜かれるようなものだ。

ただし、世の中も捨てたものではない。新しい門出を支える動きもある。カップル向けの緊急窓口を用意する会社が現れたのだ。地元のホテルでも、持ち込み料の免除や一部費用の負担軽減など、支援策を打ち出した。

壊れた夢を拾い集める作業は、静かに、しかし確かに続いている。こうして、人はまた、夢を見る力を取り戻していくのだ。