「鉄と政治とアメリカと」

「投資だ」と語るトランプ大統領の真意は？

アメリカの鉄鋼業界を巡る大きな動きが、まるでドラマのような展開を見せている。

日本製鉄によるUSスチールの買収話は、バイデン大統領の禁止命令によって、一度はストップしかけた。アメリカの象徴ともいえるUSスチールが海外企業の手に渡ることを懸念したのだろう。鉄鋼業の労働者たちの声を意識した決断だったのかもしれない。

彼が退任した今となっては、真意も藪の中だ。

ところが、トランプ大統領が「これは投資だ」と発言したことで、流れが大きくかわった。まるで雲間から射す一条の光のようだった。

彼の支持層には鉄鋼業に携わる人々も多く、彼らに向けた発言としても受け取れる。

「アメリカ第一」を掲げながらも、外国資本の投資を歓迎するという、トランプ流の経済観がここに表れているのかもしれない。

それはまるで結婚のよう

この発言を受け、日本製鉄の反応も変化していくだろう。これまで慎重な姿勢を見せていたものの、トランプ大統領による、買収の実現に向けた動きが再加速するかもしれない。

ただし、油断は禁物だ。今のアメリカの政治は不確実な要素も多く、楽観視はできない。ちょっとしたすれ違いが、致命的なミスにつながることもあるのだ。M&Aが結婚にたとえられる所以である。

アメリカの鉄鋼業の未来、そして日本製鉄の戦略。この二つの交差点に、政治が大きく関わることは間違いない。

さて、次の一手はどうなるのか。鉄の行方が気になるのは、鉄鋼業に関わる人々だけではないのだ。

こんなに行く末が気になるM&Aも珍しい。