
仲介会社の課題解決に向けた、
前向きな姿勢を評価
株式会社パントーネ・システム
代表取締役社長 横山佳正

株式会社パントーネ・システム
菓子食品の問屋業として1902年創業。1986年にパンの移動販売業を開始した。自社工場を設立して営業拠点を全国に拡大。製造から販売まで一貫して行える体制を整えた。全国のパン店、レストラン、ホテル、病院などに独自の販売網を構築している。2018年には本社敷地内にかりんとう工場を新設。スナック感覚で食べられるかりんとうの販売に乗り出した。
代表取締役社長 横山佳正
大学卒業後、大阪府にあるスーパーにて勤務。3年の社会人経験を積んだ後、家業であった横山商事での仕事を始めた。問屋業は利益率が低く、将来性が感じられなかったために生産から販売まで手掛ける事業を行おうと、移動販売をゼロからスタートした。原材料の調達から製造、販売まで一貫して行えるようになり、社名をパントーネ・システムへと変更。2024年に製造部門を大手菓子メーカーに事業譲渡した。
M&Aをするきっかけは何だったのでしょうか?

新型コロナウイルス感染拡大によって事業活動が滞り、いわゆるコロナ融資を受けて運転資金を確保しました。難局を何とか乗り切り、コロナ禍が収束した後は売上高が回復基調にありました。しかし、キャッシュフローが悪化しており、運転資金を借入でカバーしようと試みたのですが、金融機関からは難色を示されたのです。
事業活動をこれまで通り継続させ、顧客や従業員、取引先を守るためには、別の会社の支援が必要だと感じるようになりました。
当初はイノベーションリーダーズ以外の仲介会社に相談していました。
キャッシュフローに問題があったため、私は出資をしてくれる会社を見つけようとしていたのです。仲介会社に内情を話したのですが、そこから進展せずにやがて連絡も途絶えるようになってしまいました。
切迫した状況下で、イノベーションリーダーズからの手紙を受け取りました。連絡したところ、担当コンサルタントだけでなく、社長自らが相談に乗ってくれました。トップが親身になって話を聞いてくれ、迅速に動いてくれる様子を見せてくれたため、信頼して全てをお願いしようと決意しました。

最終的には製造部門の事業譲渡となりました。

はい、交渉を重ねるうちに、3工場を譲渡するのがベストだということになりました。
譲渡後も安定して事業活動が行えるという視点から、交渉相手は大手菓子メーカーを選択しました。製造部門として保有していた工場の土地、建物、設備、そして勤務する人材を譲渡することになったのです。
製造部門の売却であれば、メーカーは増産、パントーネ・システムは譲渡金で運転資金を確保、借入の返済にも余裕ができるというお互いのメリットが際立ちます。 そこで、話し合いを重ね、最終的に事業譲渡を前提に話が進みました。
実際にM&Aを行った感想はいかがですか?
やはり、書類を揃えるのが大変だと感じました。工場を譲渡する場合は様々な契約書や検査の証明書、取扱説明書などが必要です。また、実際に安全な運用をしているのか相手に説明しなければなりません。工場は消防設備を設置し、定められた安全対策を行う必要がありますが、業務効率化のために現場ではそれがおざなりになるケースは少なくありません。
稼働方法に不備があって、後から指摘されれば譲渡先に迷惑がかかります。そのようなことがないよう、相手は細かくチェックをしてきますし、こちらもそれに応えなければなりません。

事業譲渡の場合は雇用契約が変更になるために手間がかかります。

そうですね。従業員の雇用主が変更になるので、一人ひとりの意思確認をしなければなりません。各製造拠点に出向いて、M&Aの話をしました。
従業員の説得には、M&Aのコンサルタントが同席してくれました。大変心強く、スムーズに話を通すことができたと思っています。
M&Aのコンサルタントはどのようなサポートを?
コンサルタントは私の悩みや相談事に対して熱心に耳を傾けてくれ、M&Aのプロジェクトも一緒に進めてくれました。とても感謝しています。
M&Aは売り手と買い手がどこかで折り合いをつけ、お互いが納得できる着地点を見出すことが最も重要だと感じました。コンサルタントはその交渉の間に入ってくれ、私が不安に感じることを払拭してくれました。
最初は出資や株式譲渡を検討していたため、交渉決裂もやむを得ないと考えていたのですが、コンサルタントが妥協点や納得できるポイントを丁寧に説明してくれたからこそ、話が進んだものと捉えています。

譲渡後の展望は?

私がパンの移動販売事業を立ち上げた当初は、製造拠点がない状態でした。初心に帰ったような気持ちで、事業活動に取り組んでいます。
全国に美味しいパンを届けるという思いは、今も変わっていません。しかし、不採算の拠点があれば、事業上の経営リスクになるということも今回よくわかりました。必要であれば、撤退するという意思決定もしたいと考えています。